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セントーリー物語
セントーリーはずっと前から欲しかったトゥーシューズを、自分の誕生日に購入しました
週に1度のバレエのレッスンを楽しみに、毎日自主練に励んでいます
自主練で初めて履くトゥーシューズ、慣れなくて、馴染むまでには足首やアキレス腱のストレッチを念入りに、そんな小さな努力も惜しみません
そんなセントーリーには、夢があります
誰しも夢みる事、それはいつかバレエの舞台で主役を演じる事
レッスン日、最近バレエ教室に入会した同世代の子
まだ入会したばかりなので、右も左も解らず、教室の雰囲気や、人との関わりに、少しの戸惑いもあるようです
そんな新入生にラフ達は声をかけてあげて、セントーリーも率先してアドバイスをしてあげます
その甲斐あって、新入生は次の発表会に出演できるくらい、上達しました
レギュラーで出演しているセントーリーも、一緒に頑張ろうね。と声かけあって、発表会を楽しみにしながら、レッスンに励んでいます。
あるレッスンで、仮の立ち位置を決める事になり、レギュラー陣はみんなセンターを狙いたがっています
立ち位置は仮という事なので、じゃんけんで決め、なんとセントーリーはセンターの立ち位置になりました。
新入生はセントーリーの後ろになり
心優しいセントーリーは、自分はさておき、新入生をセンターに立たせてあげたくて、一度自分がセンターで踊った後に、新入生に場所を交代してあげました。
レッスン後
新入生
セントーリーさん、今日は場所を交代して頂いて、ありがとうございました。
とっても緊張したけど、いい経験になりました。
セントーリー
いいのいいの、一度でもセンターを経験しておくと、度胸もつくし、また頑張ろうと思えるでしょ
新入生
はい、私、センターでもどこでも、堂々と踊れるように、頑張ります!
それを聞いていた、他のメンバーさん達
いいな~、私もセンターで踊ってみたい。と口々に言いました。
そして、次のレッスンで、セントーリーに一度でいいから、場所変わってくれない?と、言い寄ります
セントーリー
いいわよ、私はどこでもいいから変わってあげるわ
セントーリーは快く、変わってあげました
気が付けば、そういう事が毎回続き、ラフは言います
ラフ
セントーリー、なんでそんなお人よしなの?
セントーリー
私はどこでもいいのよ
他の人がセンターで踊りたいなら、いつでも変わってあげるわ
ラフ
セントーリーも本当はセンターで踊りたいんじゃない?
セントーリー
うん。
でもね、できるだけ争いは避けたいの
みんな喜んでるし
それに、本番では立ち位置変わるでしょ
ラフ
そうだけどね
あまり他人を優先してると、せっかくセントーリー頑張ってるのに、努力もしてるのに、陰に押しやられちゃうよ
セントーリー
ありがとう、でも私はいいの
みんなが楽しければ、それでいいのよ
ラフ
そのセントーリー優しさ、良いところでもあるけど、良くないところでもあると思うよ
それを傍で聞いてた新入生
ほんと、セントーリーさんの優しさにはいつも感謝してるけど、あの人達まるで今日は私が主役よ!みたいになってきてますね
我先きにって感じで、レッスン前にはいつもセントーリーに言い寄ってきてません?
セントーリーさんなら、何でも言う事聞いてくれる。みたいに。
それを聞いたセントーリーは、ハッとしました
自分が、強い人を作り出して、その人達をあまり良くない印象にさせてしまってると・・
その様子を陰ながら見ている先生
先生
次回のレッスンで本番の立ち位置を決めたいと思います
希望の場所があれば、事前に申し出て下さいね
一週間後••
先生
数人の方から立ち位置の希望を聞きましたが、希望を出していない方は私の方で決めますね
後で立ち位置をお知らせしますので、各自、ストレッチして自主練をしていて下さい
自主練中、先生はセントーリーの側に来て言いました。
ところでセントーリーさんは仮の立ち位置ではセンターに当たってたけど、センターじゃなくていいの?
あなたなら、充分に務められるはずよ。
セントーリー
ありがとうございます。
でも、私はいいんです、後ろの端っこで
センターは行きたい人に行かせてあげて下さい
ラフもあきれて側で聞いてます
本番の立ち位置は、センターは希望を出した人、セントーリーは言った通りの後ろの端っこ、新入生はセントーリーの隣、そしてラフはセントーリーとは反対側の後ろの端っこでした
ラフは事前に先生からある提案をされて、この位置になりました
先生
それから、普段のレッスンとは別に、皆さんで練習して頂く日を設けます。
これは自由参加ですが、この練習のリーダーさんを
セントーリーさん、お願いできますか?
セントーリーはびっくりして
え!私ですか?・・・
私なんかでいいんですか?
私、ちょっと難しいかも・・・
先生
ラフさん、サポートお願いしますね~
ラフ
解りました~
と手を上げて答えます
先生
セントーリーさんとラフさんは、発表会には慣れて下さってるし、面倒見もいいから敢えて立ち位置を全体が見れる、後ろの端にさせて頂きました。
セントーリーさん、ラフさん、よろしくお願いしますね。
セントーリーは戸惑いながらも、先生の配慮が嬉しく、発表会をいいものにしようと、心から思いました。
発表会はみんないいものにしたいと思っています。
練習会を先生に任されている、遠慮がちなセントーリーに、センターの人も周りの人も、アドバイスを求めます。
ラフと一緒に、今までの経験を生かしてアドバイスをし、そのアドバイスをみんなが素直に聞き入れました。
セントーリーはセンターではなくても、ここが自分の居場所と感じられるようになり、自分の弱さを克服して、静かでハッキリとした強さで、自分らしく、且つみんなと対等な立場に立つ意識をしながら練習を重ねるようになりました。
その甲斐あって、発表会ではチームワーク抜群のとっても良い作品になり、観客の中には、何か伝わるものがあると、涙する人も。
先生
次回の発表会では、是非セントーリーさんにセンターをお願いしたいわね。
と言うと、みんなから拍手があがりました。
買ったトゥーシューズも、いい感じに足になじみ、今回リーダーを務めた事で、セントーリーもラフもますます上達し、教室を引っ張っていく存在になりました。
新入生も、私、セントーリーさんについていきます!
と、より向上心をもってレッスンに励むようになりました。
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