8/31 vsセレッソ大阪(ホーム・明治安田生命J1リーグ)
ありがとう、イバ!
試合の感想
前節から1週間空き、選手たちも少しは疲労が取れたかな?と思いきや、前節負傷交代メンバーは全員いないという状況。特に深刻なのは右SBのマギーニョがいないこと。今節はとりあえず、左SBの志知にやむを得ずやってもらうことにしたらしい。熊川が戦力として計算できない以上、マギーニョには頑張ってもらうしかなかったのだが、ご覧のありさまだよ!
対するセレッソはJ2で散々苦しめられたロティーナ翁体制2年目。フロンターレにはボッコボコに叩きのめされたものの、安定した強さで前節終了時点では2位につけている。なんといっても目を引くのはアタッカー陣の顔ぶれ。控えにジーニアス柿谷と空中戦無敵の都倉がいるとかなんなんですかね。ロティーナ爺ちゃんの守備構築にこのアタッカーがいればそりゃ強いわ、と言ったところ。
3連勝中の勢いと、ホームの地の利、若手アタッカーの個の能力でセレッソの守備を突破できるかどうかがカギになりそうだ。
前半
こいつぁすげえや。カズ登場からの怒涛の3ゴール大逆転のころとは打って変わって、コンパクト且つ統率された4-4ラインを見せつけてくるセレッソ。相変わらずロティーナ爺ちゃんはやり手である。
ヴェルディを率いていたころと比べると、こちらに持たせてくれてはいるのだが、残り30mまで来ると全く中に入れてもらえない。特に、不慣れな右SBをやらされている志知は相手の守備陣内に全然ボールを運べなかった。松浦との連携も、お世辞にも上手くいっているとは言い難く、むしろ松浦のプレースペースの邪魔になってしまっているような印象だった。
手塚なんかは、志知に運ばせるのではなく、左で運んで逆サイドで上がってきた志知に放り込んで、相手の視線を揺さぶろうとしていたのだが、肝心なところで精度を欠く悪癖は今節も健在で、志知に思うようにボールを届けられていなかった。
横浜FCは、守備でもそこまでやられていたわけでもなかったが、技術のある相手から中々ボールを奪いきれず、一瞬の隙を突かれ、ゴール前で清武に持たせてしまい、志知があっさり躱されて先制を許してしまった。とは言え、このシーンの問題は、斜めに楔のパスを通されてて、それをさらにフリックまで許したことである。ブンデスリーガで魔法使いとまで謳われた男に躱されたことを責めるのは酷だろう。
その後も、ボールは持てるものの、チャンスを生み出すことはなく前半は終わってしまった。
後半
ハーフタイムで何か手を打ってくるかと思ったが、後半立ち上がりも前半とあまり変わり映えせず、「やらせてもらってるけど何もさせてくれない」状態。相手ボール時に寄せる意識は高くなったかな?と思ったが、それが攻撃時に有効な手立てに繋がるというほどでも無かった。
結局、後半の序盤に清武にエリア内への侵入を許し、数人がかりで食い止めようとしたところでボールを奪いきれず、逆サイドでフリーになっていたブルーノ・メンデスに流し込まれて2失点目。
状況が好転したのは清武が下がってから。柿谷も都倉も強力な駒ではあるが、清武ほど味方のために気の利いたことをやってくれるわけではない。それに、2点差ということもあってか攻守に動きが鈍くなり、こちらがやりたいことをやらせてくれるようになってきた。
志知が本職の左SBに入ったとたんに生き生きとし始め、それまで左足でプレーしようとして単調な動きになっていたのが、左に入って得意ではない右足でエリア内にクロスを入れたらゴールが生まれたのだから面白いものである。
1点差になってさらにギアを上げた横浜FCは、最前線に星を送り込むというキョーワァン大作戦を実行に移すサプライズを見せた。コロスケがセカンドボールを回収し続けることで波状攻撃を仕掛けることに成功したのだが、肝心の星にあまりボールを送らず、作戦が作戦として機能していない印象だった。星は必死に動いてフリーになったりもしていたのだが……俊輔の左足なら出せたんじゃないの?というシーンもあり、見てて少し困惑したというか、正直イラっとした。
結局、追いつくことなく1-2で試合は終了。連勝は3で止まってしまった。
全体的に
またロティーナに勝てなかったよ……はっきり言って、負けるべくして負けたというか、いたって妥当な結果だったろう。あの守備陣を打ち抜くだけの力が無かった。下手に繋いで崩すのを狙うよりは、光毅とレドミに単独突破してもらった方が可能性あったのでは?という感じだった。
攻撃時に圧倒的な存在感を見せた清武だったが、清武が力を発揮できるようにしっかりサポートしていた奥埜や藤田あってこそだった。攻撃から守備まで、清武をいかに活かすかしっかり考えられている戦い方だったと思う。途中交代前提で攻守にサポートされた清武がエンジン全開で襲い掛かってくるのだから堪ったものではない。
それで先制できればあとはしっかり守って逃げ切ればよいし、清武がいる間に勝ち越せずとも、都倉と柿谷なら放り込むだけでなんとかできる強さとテクニックがあるわけで。
セレッソの守備陣は、陣としては堅固だが、個々の守備力はJ1屈指のメンツというわけではない。なので、圧倒的な個で叩き潰すか、守備陣を上回る組織的な攻撃力でズタズタにするか、ロティーナの修正が入る前に奇策で混乱させてゴールを奪うかできれば良かったのだが、残念ながら今のフリエにそれはできなかった。
一美も皆川も、相手の守備陣の中で圧殺されているような状況でほぼ何もできず、サイド攻撃も終盤まで有効な攻撃を仕掛けられなかった。ただ、セレッソは序盤から、CBSB間に隙間が空くことがあったので、そこにスルーパスを通せれば違ったろうな、とは思ったが。いずれにせよ、「どう繋いでいけばシュートに持ち込めるのか?」という詰め方がまだまだ足りていないのが現状だろう。
守備に関しても、それなりに良く守ってはいたと思うが、やはりセレッソの4-4と比べれば完成度は見劣りする。攻守に渡って、組織力の差を見せつけられた試合だった。
最後のキョーワァン大作戦は、何度か練習では試したりしてるのだろうか?あまりそうは思えなかったが。オプションとして悪くないとは思う。ただ、肝心の周りがそれに合わせてプレーを切り替えていたようには見えなかった。ここまでのシーズン全体を通して、繋ぐことを意識しすぎて割り切って戦い方を切り替える判断ができていない印象を更に強くした時間帯だった。
選手への雑感
GK:六反勇治
攻守両面でプレーは安定していた失点シーンはどちらもキーパーに責任は問えないだろう。
DF:志知孝明
ただでさえ不慣れな右サイドで、清武相手は流石に荷が重かったか。攻撃時にも単調になりがちで、松浦との連携も今一つだった。左に移ってからは本領を発揮し、右サイドでもあまり使えてなかった右足でゴールに繋がるクロスを入れてみせた。やっぱ左の人だねぇ……
DF:伊野波雅彦
最終ラインで攻守に奮闘していた。特に攻撃面では一番縦パス出してたんじゃないの?というくらいに最後尾でタクトを振るっていた。失点シーンではしてやられた感はあったけれど。終盤の「早く前に運べよ!」という檄には頷かざるを得なかったなぁ。
DF:小林友希
キャラの代わりにスタメン出場。前にボールを運んだり、カバーリングもしっかり入っていたりと、プレーは悪くなかった。
DF:袴田裕太郎
今節も左SBでスタメン出場。悪かったわけではないのだが、SBCB間で松尾にスルーパス出せば、というシーンが何度かあった。あそこを通せるようになれば選手として飛躍的に格が上がるんだけどなぁ。松尾とのやり取りは思わず笑ってしまった。
MF:松浦拓弥
相手ライン間のいやらしい場所でボールを受けて、それなりに相手に圧を与えていた。なんだかんだでフリエが高い位置でプレーできていたのは松浦のおかげだったと思う。ただ、エリア内で誰もいないところにボールを落としたシーンで、シュートは撃てなかったのかな?とは思った。
MF:佐藤謙介
前は手塚に任せて、少し引いた位置でのプレーが多かった。まぁ、あの守備陣の中に謙介まで入っていったら狭すぎてどうにもならないし、妥当な判断だったろう。ただ、低い位置から有効なパスを出させてくれるほどセレッソの守備は甘くなかったため、あまりインパクトは残せなかった。連戦の疲れを考慮したのか、早めの交代になった。
MF:手塚康平
上下動を繰り返しながら高い位置で攻撃面でのタクトを振るっていた。左の三角形で引き付けてから謙介や松浦に渡したり、相手の目線を断ち切るようにサイドチェンジをしてみたりと、セレッソの守備を崩そうとあれやこれやとやっていた。ただ、相変わらずここ一番で左足の精度が揮わない。セットプレーのキッカーとしても、正直期待を裏切る精度だった。守備も、全くさぼったりはしていないのだが、寄せが甘くて今一つ相手にプレッシャーを与えられていない。
全体的にみると悪くないだけに、肝心なところの物足りなさが目立つ印象。とりあえず、もうちょい味方とコミュニケーション取ろう?
MF:松尾佑介
中々スペースを与えてくれないセレッソ相手ではあったが、それなりに相手に恐怖を与えていた。最終的には1点返して見せたので大したものである。袴田から志知に組む相手が変わっても、本人の狙いが一定していたおかげで、後ろはやりやすかったのではなかろうか。
FW:一美和成
なんとか前線で基点になろうとしていたものの、そもそも、ボールがあまり来なかった。本人的にも不完全燃焼の試合だったのでは。皆川と一緒に良くプレッシャーをかけてくれてはいた。
FW:皆川佑介
連続ゴール中だったものの、この日は沈黙。フリーになるスペースも隙も与えてくれない相手に、攻撃時はほぼ何もできなかった。数多くのコーナーキックでボールが来れば違ったかも知れないが……
MF:瀬古樹
謙介と交代で登場。終盤はまたもや右SBをやらされていた。清武が下がったこともあり、落ち着いてプレーできていた。なまじ器用にこなせるだけに、スタメンじゃなくてベンチに入れておきたい扱いされているのでは?と勘繰りたくなってしまう。
MF:中村俊輔
ピッチ練習中からパスの距離が合っていなかったり、やたら足首を気にして何度も捻っていたりと不安に思っていたのだが、残り15分ほどのところで、反撃の狼煙を上げるべく登場。随所に流石は中村俊輔だぜ、というボールタッチは見せていた。が、どうにも本調子とは言えない出来で、決定的な仕事はできなかった。星にクロス入れて欲しかったなぁ。
MF:齋藤功佑
俊輔と共に松浦に代わって登場。松浦以上に広い範囲を動き回り、セカンドボールを何度も回収しては左右幅広く展開したりと、出来は良かった。いつの間にそんな逆サイドまで展開できるようになったんだお前……って思った。
一度スタメン落ちするとベンチにも入らなくなり、急に現れるといきなりレベルアップした姿を見せてくれるので、多分ジャンプ漫画のキャラなんだ。
FW:斉藤光毅
皆川と交代で出場し、皆川とは異なるアジリティで違いを生み出そうとしていた。その努力が実ってエリア内で見事な胸での落としを見せて、松尾へのアシストに成功した。ボディバランスの良さとテクニックがあるから、ポストプレー向いてると思うのよね。今後もプレーの幅を広げていってほしい。
FW:星キョーワァン
一美と交代だったのでもしやと思いきや、マジでキョーワァン大作戦だった。空中戦強いし、そこまで悪い作戦でもないと思った。案外マーク外すの上手かったし。ただ、肝心のボールが飛んで来なかったせいで大作戦の意味があまりなかった。
「キョーワァン戻れ!」と言われて守備に戻ろうとしたら「前!!」と怒られてたのはちょっと笑った。いや、そりゃ混乱するでしょ。本職CBに「戻れ」って言ったら。
終わりに
やはりロティーナ爺は名将だなぁ、と思わされた。組織力、ってのはこういうもんだよな。それに対して、要所要所での甘さが表出してしまうあたり、横浜FCはまだまだJ1のレベルになり切れていないのだろう。攻守に課題は多い。
そして、それ以上に問題なのは改めて右SB不在を実感させられたことだろう。マギーニョがすぐ戻ってきたとしても、試合中に何があるかわからないし、当分戻ってこれないならなおのこと深刻な状況である。器用な瀬古で凌ぐのか、守備に多少目を瞑ってでも走れる瀬沼に託すのか……伊野波は、5年前ならいざ知らず、今となっては90分SBは無理だろう。
色々悩みは尽きないけれど、とにかくまずは次節サガン鳥栖戦の勝利を信じて応援しよう。