社会人アートの世界「請求書」
2011年6月12日発行 ロウドウジンVol.2 所収
企業の経済活動において、日々生み出されつつ消えてゆく、匿名のアート作品――「社会人アート」
作家性からは程遠いところにある作品群から、一見芸術とは無縁に見える社会人たちが残した芸術の痕跡を鑑賞してみよう。
請求書とは何らかの行為(主に金銭の支払い)を求めていることを相手に通知するために発行する文書である。代金の支払いより先に商品・サービスを提供した場合に用いられることが多い。
作品解説
「金払え」――ただそれだけを言うために、これほどまでに内容を盛り込まなければならないのが社会人。請求書一枚に込められた、多くの配慮。ところが、様式美さえ保っていれば、不躾であっても構わない。もはや合理性を失っている。そこで人が行うことは何か。むろん、芸術活動である。
例えば日本の政治はもはや合理性を失っている。日本人はそれを、エンターテイメントとして享受している。それも広義の芸術だろう。同様に、日本企業の現場で行われていることは、無駄な宴会、無駄なゴルフ、無駄なパワハラセクハラ。人によってはエンターテイメントだったり芸術だったりするだろう。しかしそれらは嗜好品である。それにコミットし辛い社会人もいる。彼等は趣味として芸術活動を行うなどして、欲求を発散させている。では、それもできない者達は……?
上の請求書は、会社のメインストリートから追いやられ、趣味にも没頭できない者による、芸術的欲求の受け皿でもあったのだろう。