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ハンシャカイジンサークル活動日誌

2010年12月5日発行 ロウドウジンVol.1 所収

 社会人たるもの社会的な振る舞いを要請されるのは、その文字面からみても当然であろう。しかし社会人は社会人として生まれるのではない。社会人は生まれたときには反社会人なのだ。どういうことか。……どうもこうもねぇよ!

 だらだらとくだらないお膳立てをする暇があったら本題に入ろう。社会人に無駄は必要ないのだ。生きていること自体に価値があるのが社会人なのだ。例えば一人月百万円の人材を想像しよう。一人月というのは一般的に二十日×八時間、すなわち百六十時間に相当する。あとはサルでも(計算機さえ使えれば)できる割り算だ。時給六二五〇円。……一秒たりとも無駄にはできまい。

 だから結論から述べたい。結論から話すことを要求されるのも、きわめて社会人らしいといえるだろう。だってこどもは「起承転結」を史上最高の語り口だと盲目的に信じているから。そうじゃないんだよ。タイム・イズ・マネーな社会人はいっとう最初でひきつけなければ、「結」まで待ってくれないのだよ。むむむ。世知辛しニッポン。

 ……だから無駄な序文はいらねいよ! と読者諸氏はおっしゃるだろう。そうだろう。そのくらい、さすがのわたしだって認識している。しかしこれはおもしろエッセイなのだ。「黙ってみてなさい」とYMOの武道館ライブでも細野晴臣だか誰かが言っていたではないか。わたしはそれに共感する

 閑話休題(あかほりさとる風)。さて本節について説明しよう。世界には星の数ほど社会人なる人種が存在するらしいが、社会人というのは群れる習性があるらしい。ここですべての人間は群れる習性があるじゃん、なぞという無粋なツッコミは必要ない。そうなのだ、かのアリストテレスも言っていたではないか。いったい何をだって? そういうことは自分でインターネットの力を借りていただきたい。当方では責任を負いかねます。そもそも「星の数」という比喩の意味がよくわからないというか、具体的には何個くらいなのか。そういうこともインターネットで各自お調べいただきたい。社会人には調べればわかる知識は不要なのだ。重要なことは調べるための術を知っているということで、具体的にはGoogleなのだ。つまり社会人であるということはGoogleで検索をすることだと換言できるだろう(本当か?)。

 とまあ文字面どおり一段落したわけだが、それにしても話が進まない。これはいわゆる反社会人ジョークだ。社会人といえば会議ばかりしていている印象があると思うのだが、ここまでではそのパロディをお見せしたのだ。何? 後付けの理由だろうって? それはどうやって証明するのだろうか。そういうことを言うからには物理的な証拠(エビデンス)は出せるのだろうね。そうでなければ迂闊なことは言わない方が良い。迂闊は悪である。なんとなく「迂闊」という漢字を見ていると悪魔的な要素がみてとれないだろうか。……みてとれないか。ならば仕方がない。さくさく先に進めよう。

 本稿の目的は世にはびこっていると噂の「社会人サークル」とやらに狙いを定めて、その活動の全貌について学んでいこうということである。具体的には現状調査ののち、その内容を我々なりに再解釈して実行してみることを目標としたい。どこまでできるかは現時点では不明だが、お付き合いいただければ幸いである。

□社会人サークルの実在性

 とはいえ「社会人サークル」なるものが本当に存在するのか、それすら個人的には不明である。たとえば知り合いに社会人サークル活動をしているとか、社会人サークルをクラッシュした(通称:社会人サークルクラッシャー)がいるなどという話は聞いたことがない。もし社会人サークルが実在するのなら、それはおそらく公開の場でではなく隠れて活動しているのであろう。いわば隠れ切支丹(キリシタン)みたいなもので、そのような意味ではわれわれは天草四郎のように振舞おうとしているのであって、すると本稿は島原の乱ということになる。さっぱりわけがわからないが、非実在社会人サークルを精神的にクラッシュして実在社会人サークルにしようというのだ。繰り返しになるが、さっぱりわけがわからない。どういうことだろうか? きっとそういうことである(何?)。

 さて、いきなりだがここで一度注意を喚起しておきたい。本稿はいわゆる社会人サークルおよび社会人サークル活動あるいはそれを推奨するビジネス書ブームのようなものに対する政治的な意図はいっさい存在しない。すなわち非実在である。われわれはわれわれとして、精一杯「反=社会人サークル活動」に対面しようとしている。そこになんらかの誤解を生じさせるような部分があったとしたら、それはすべてわれわれのリサーチ不足や筆力等に起因するものであり、悪意はいっさいないということをあらためて強調させていただきたい。ちなみに「われわれ」を連呼しているが、著者はひとりである。劇団ではない。そしてたったいまご覧に入れたように、いわゆるギャグ貧乏というやつである。落ちているものでも拾って食べる、そんな人類滅亡後の人間のような存在なのだ。……「人類滅亡後の人間」とはまた超越的な存在ですね。もういいや。

 まずは社会人サークルについて調べていこう。わからないことはとにかくGoogleで検索するのが有能な社会人のファーストステップであることは前述したが、まずはそのとおりに行動してみる。検索キーワードは「“社会人サークル"」。縦組の都合上、ダブルクォーテーションが全角になっているが、正しくは半角である。全角で括っても亜米利加からのシ者もとい使者であるGoogle先生には何も理解出来ないであろう。端的にいうと無視される。多分。……いや、最近のGoogle先生はすごいからな、これくらいなら勝手に半角に置換して処理してしまうかもしれない。ただ、間違っても痴漢だけはしないで欲しい。せめて水上置換とか情報痴漢……。誤変換って面白いですね。『ゆかいな誤変換。』略して「ゆか誤」ですよ。ユカちゃんのオリジナル言葉じゃないですよ。マンモスうれぴー、みたいな。

 とまあ、半角のダブルクオーテーションでキーワード全体を括ることで、わたしたちは新しい翼を手に入れることができるのだ。つまりわれわれには翼なんかなかったのだ。そのような意味においては同じ飛べないでも、翼の名残を持っているだけペンギンの方が素晴らしいし、なによりかわいい。「かわいいは正義」である。英語でいうと「Kawaii wa Seigi」である(本当)。つまり翼を持たないわれわれはかわいくないのだ。正義じゃないのだ。アンチ・ソフトバンクなのだ。ゲームソフトのタイトルでたとえるならば『俺たちに翼はない』のだ。いや、われわれに足りないのは「明日」である。すなわち『俺たちに明日はない』のだ。……くどい駄洒落文章だなあ。

 とにかく、検索してみた。検索結果件数は……約六十万件! これは驚きである。すでに世の中はわれわれの知らないうちに、社会人サークルの侵攻を許していたのだ。いや、たとえるならば家族の一員が犯罪者だったのに近いかもしれない。すなわち内部統制の問題である。至急、公平な第三者機関の介入による監査を全部署で実行し、指摘された事項について速やかな改善実績あるいは改善のためのアクションプランをマイルストン込みで報告する必要があるかもしれない。これが社会人的に素早い反応というものだ。そこにおいては効率という考え方は必要ない(断言)。証跡が最大の目的になる。エクスキューズ。

 話を元に戻そう。Googleによる検索結果が六十万件という事実はどれほどの驚異なのか。たとえば「noir_k」で検索してみると……七千件強。その実に百倍ということである。noir_k百人分の浸透具合ということだ。もし「社会人サークル」がtwitterを始めたらフォロワが一五万人になるということだ。twitter有名人なんて目でもない。どちらかというと鼻である。……ますますわけがわからなくなってきたが。ともかく、それほどまでに一般化しつつあり、すなわち社会問題化しているといえる。別に問題がないところに問題をみつけてみるのが、反社会人活動の第一歩と言えるのかもしれない。ともかく、問題なのだ。

□秘密結社「社会人サークル」の目的

 では社会人サークルが実在するのは良いとしよう。本当の問題はその目的と活動内容である。たとえばGoogleの検索結果で上位にヒットする「社会人サークルナビ」(http://circle.hpfan.net/)という社会人サークルまとめサイトをみてみよう。このサイトは津々浦々の社会人サークルが登録されているサイトで、目的や活動場所、内容等の情報からユーザに適した社会人サークルをピックアップすることができる。その分類項目をみれば、ある程度の社会人サークルの目的・内容がみえてくると考えられる。まず、ざっくりとした大分類では「スポーツ」「アウトドア」「ライフスタイル」になるらしい。はじめの二項目はなんとなく推測が可能だが、最後の「ライフスタイル」とはどのようなものだろうか。さらに調べてみると中分類は「旅行」「ボランティア」「飲み会」「食事会・お茶会」になるようだ。なるほど。

 さらに調査を進めたところ、社会人サークルのポイントは「異業種交流」であり、そうであるからには異なるバックグラウンドを持つ個々人の知識の共有や横展開が重要視されるようだ。そこである種の精神的見返りを得ようとすると、そのような集まりは「勉強会」という言葉で括れるのではないかと思う。ただの飲み会サークルに堕さないのが、さすが社会人といったところであろう。でも「婚活」「恋活」なるバズワードに踊らされているひとも少なくないようでもある。この二面性も極めて社会人らしいとも言えるかもしれない。ほぼすべての現象は何らかの意味で社会人らしいのだ。すなわちそこに横たわっているのは解釈の問題だけなのだ。

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