反社会人サークル SENDAIへ行く
2012年11月18日発行 ロウドウジンVol.5 所収
「今度の反社会人アイドルは、SENDAIだ!」世界各国の反社会人アイドル情報を収集するわれわれのもとにひとつの情報が舞い降りた。どうやら、宮城県仙台市に素晴らしい反社会人アイドルがいるらしい。居ても立ってもいられなくなったわれわれは、自由とデジタル一眼レフを手に、仙台へ旅立った。
八月二十六日(日)
ロウドウジン新刊打ち合わせ@秋葉原ルノワール。そろそろ反社会人アイドルの選定を行わなければいけない。ということで、複数の候補から「ゥ」さんを選出(担当:2tar)。ただし課題がひとつ。今回の反社会人アイドルは仙台住民なのだ。第三号の「でろでろあびこ」さんのように、ちょうど良いタイミングで東京に出てきてくれるのならば取材が楽なのだが……。
九月九日(日)
今回の反社会人アイドルは諸事情により東京に出てくることができないらしい。協議の結果、反社会人サークルが仙台に取材旅行に行くことが決定。日程調整を開始するも、難航ムード……。どうなる?
九月下旬
なんとなくの合意で、取材日程が仮決定。一方、noir_kの京都旅行、2tarの沖縄旅行等により、打ち合わせは実施できず……。
十月八日(月)
音沙汰がないまま、時間だけが経過し、担当者の2tar以外のふたりは困惑気味の日々を過ごす。しびれを切らしたNerd_Arthurから「仙台に高校時代の同級生がすんでいることが発覚した。一緒に飲める」との情報が投下される。2tar、金曜日深夜に高速バスで行くことを考えていると返答。その時点では取材旅行が本当に行われるのか半信半疑だったが、だんだん現実的になっていく。しかし、往復の交通手段も予約していなければ、宿泊場所も決まっていない……。
十月十一日(木)
晴天。2tarからの追加情報はなく、取材旅行の実施が物理的に可能なのか、不安がよぎってくる。夜二十一時半頃、映画『アイアンスカイ』を観ようと某駅北口を降り立ったnoir_kの視界の中に、見覚えのある人影が。某シアトル系カフェのテラス席でTwitterに興じるNerd_Arthurの姿であった。いろいろあって近くの居酒屋に突入したふたりは、麦酒、モツ煮込み、串焼き、枝豆、竹輪の磯部揚げほか、五七〇〇円ほどの出費とともに、仙台遠征に対する意見をすり合わせる。その結果を2tarに電話。二十三時過ぎ、仙台行きが確定となる。また十月十二日の深夜バス予約に向けて2tarが動き出すことになったが、零時半、東京からの高速バスはすべて満席であることが発覚。社会人力(=財力)をいかして新幹線を使用することが確定となる。
十月十二日(金)
晴天。日々是社畜なり。
十月十三日(土)
快晴。朝八時。突き抜けるような青空のもと、復刻されたばかりの東京駅に集合する反社会人サークル一味。珍しく誰も遅刻することなく、予定通りの新幹線に乗り込む。ここまで無計画の極みを尽くしてきた反社会人サークルにとって、これがはじめての計画通りの行動であった。
車内で会話。2tarは今回の撮影のために新しいレンズを購入するなど、気合いは十分。一方のNerd_Arthurはいつものように「『震災弁当』? 寄り弁のこと?」と軽快にブラックジョークを繰り出す。旅の開放感から「まじ新型うつになりそう……」という不謹慎なつぶやきがこぼれたり、麦酒のせいか新幹線が右に傾いている錯覚がすることを「右傾化」と呼ぶ社会派のネタとともに約二時間が経過。無事、仙台に到着。「二時間で一万円って、キャバクラレベルじゃねぇか!」とはNerd_Arthurの弁。絶好調である。
仙台ということで、ここぞとばかりに牛タン&日本酒。なんとこのお店、反社会人アイドル直々のおすすめ店。どうやら話を聞くと、今回の宿の予約も、撮影ポイントおよび撮影交渉も、すべて反社会人アイドルが直々に実施してくれたそうだ。なんとすぐれた社会人力なのだろう。感服。そして美味なる牛タンののち、反社会人アイドルと合流。自己紹介しつつ、ホテルに向かう。やましい意味ではない。反社会人サークル一味はチェックインを行い、魅惑と興奮のグラビア撮影に向かう。
事前の根回しが完璧であったため、すぐに撮影許可証が発行された反社会人サークル一味。撮影は主に七階のフリースペースおよび階段室(五番チューブ)で実施された。フリースペースには机が並べられ、学生がぽろぽろと勉学に励んでいた。そんなものに目もくれず、もくもくと謎に満ち満ちた撮影を行う一味。その成果はグラビアをご参照いただきたい。学生諸君の冷たい視線が容易に想像できることだろう。
その後、本来であれば仙台城跡における撮影を予定していたが、疲労を訴える反社会人アイドルに連れられ甘味処へ。はじめて食べる「ずんだ」のえも言われぬ味(注:個人の感想です)とともに、インタビューを開始した。その成果はインタビューをご参照いただきたい。店員ほか他のお客さんからの冷たい視線が容易に想像できることだろう。
インタビューも終了し、颯爽とタクシーに乗り込み、暮れなずむ仙台の街に溶けていく反社会人アイドル。残された反社会人サークル一味は、Nerd_Arthurの旧友と合流し、なぜかジンギスカンを食べにいくことになる。それはそれは美味なるジンギスカンであり、アルコールもどんどん進む。二軒目は近くの煙草屋でしこたま買い込んだ葉巻とともにチェーン系居酒屋の個室へ。阿片窟かとみまごうかのような煙立ち上る空間で「ゲス」としか言いようのない話題を膨らませ、インターネット上のみならずリアルまで波及するといった様々なトラブルをまき散らしながら、仙台の夜は更けていった。ちなみに約一名、しつこいナンパに絡まれている見知らぬ女子に「いまのナンパ、チャラかったすね」と声をかけたり、八時間勤務の真最中の見知らぬカラオケ屋客引き女子と仲良くなっていたらしいが、それはまた別の話(どきどき)。
十月十四日(日)
狂乱の一夜が明け、我に返って青ざめる反社会人たち。ジンギスカンとアルコールと葉巻の残り香をまき散らしながら、ホテルを華麗にチェックアウト。朝食を求めてサンモール一番町を闊歩していく。前日からイベントが開催されていたが、ステージが点字ブロックを封鎖していることに視覚障害者が大激怒&大演説。「ルールを守れないならイベントなんかやるな!」芝居がかったその光景に惚れ惚れする一味。さらには客ゼロのステージ上で掛け合いの司会進行をする男女をみつめたり。
仙台唯一の観光スポットである仙台城跡にて、今日も今日とて牛タンをぺろり。付近のサブカルちっくな畔道で写真を撮ってはしゃぎながら、長閑なひとときを堪能するも、することがないことに気づき、騒然とする。せっかくなのでインターネットを駆使した調査の結果、市内から一時間程度のところにある作並温泉に行くことにする。
作並温泉に到着。作並は「回文の里」らしい。またそこにはニッカウヰスキーの蒸留所があるらしい……が時間もないので、すたこらさっさと日帰り温泉へ。至福のときを過ごす。風呂あがり、三五〇ミリ缶ビールを三等分して飲酒する反社会人サークル一味は、庶民感覚とともに、終わりゆく仙台旅行の思い出を噛み締める。
その後、仙台駅へ戻り、三人は三人の道を歩み出す。しかし、忘れるな。取材は原稿にするまでが取材です!