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果て

荒木経惟がとても好きだった.
池袋のジュンク堂で写真の棚を見て,荒木経惟の取り扱いの少なさにもうそんな時代ではないのだと思った.

学生のとき,写真全集を少しずつ買っていた.お金のない生活で,写真集を買うとしばらくろくに食べられなかった.でも買っていた.
そのくらい彼の撮る世界が好きだったし,憧れだった.
全集の中で特に好きだったのは『陽子』と『Aの愛人』で,本当に繰り返し読んだ.

数年前に彼が告発されたとき,作品を享受してきた側の責任も問われた(ように感じた).
私性の非常に高い彼の作品とその私性の高さに惹かれていた自分.
あんなに好きだったのに,だんだん見られなくなっていった.

さっき思い切って『Aの愛人』をひらいた.数年ぶりに.
かつて惹かれていた写真たちは,やっぱりとても魅力的だった.でもどこか悲しく見えた.そして,それはとてもさびしい感覚だった.

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