お父さんの失踪
お父さん、高校の時に失踪ちゃいました。その頃、私はめちゃくちゃグレていてあまり家にいなかったのだけど。いつ帰ってきてもお父さんの痕跡がない。お母さんに「お父さん最近見かけないね」と言ったら「あー、なんか失踪したよ。縁切るって」まるでパン焼いておいたから後で食べてねぐらいのテンションで言われた。
うちのお父さんは派手な人で昔からお金使いが荒く、女性の方にモテた。金銭トラブルも多かった。小学校の頃よく家の前に知らない車が停まっていて、知らない車がある時は借金取りの合図だから近くの公園で暗くなるまでいた。公園の街頭の下でよく宿題をしたりしていた。小学校の頃、ある日よくわからない箱の中をふいに開けてしまい、そこのにはお父さんと知らない女性の裸の写真があったり。中学校の頃、バイトして溜めていた貯金をお父さんに全部盗まれてしまったこともあったり。写真を見つけた時やお金を盗まれてしまったのショックはいまだに忘れられない。けど、当時お母さんに言わずにずっと内緒にしていた。とにかく、全てしんどかった。
私、お母さんと妹二人はお父さんとの思い出はかなり苦痛なものばかりで。決めてはいないけど家族内ではお父さんの話は一切しなくなり、まるで最初から「なかった存在」になってしまった。
21歳の頃、私がお母さんに日本で音楽活動したいと言った時も「行ってもいいけど、お父さんに見つからないように絶対名前を変えて活動しなさい」と本名で活動しないことを条件に許しくれた。(極力本名を言わないのはお母さんとの約束があるからなんだぞ!本名知っている人たまにネットに書いちゃうと本当に青ざめるからやめてくれ!)
お酒の席など話の流れで「お父さんってどんな人?」と聞かれ、「高校の時から会ってない」と言うと「え?!会いたいとか思わないの?!」と驚かれる。けど、いろんな複雑な気持ちが交差して「会いたいとは思えないかな。」と笑顔で言ってできるだけ、話をそらしたりする。
先日ふと気になって、お父さんをグーグル検索したらヒットしてしまった。「いやいや、いかんいかん。これ以上見るのは止めよう」と思ったけど。なんだか更に気になってしまい、SNSなどの投稿を見てしまった。そこには記憶より老けたお父さんの写真があり、改めて会っていない年月を感じた。気がついたら彼の投稿をスクロールしてみてしまい、食事の写真には必ず二人前の料理が写っていた。「きっと今頃幸せに誰かと一緒に暮らしているんだろうな。」と思ったら急に涙が止まらなくなってしまった。
お父さんには会いたいと思わないし、どうしたいと言う気持ちも全くない。彼の今の幸せを壊すつもりはない。沢山泣いて気づいたこと。私は頑張って音楽や絵を通して有名になって、いつかお父さんに気づいてもらい活動を通して見守ってもらえたらいいなと心の底から思った。