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次世代画像形式 JPEG XL が Chrome から削除された話のまとめ

以前の Chrome では『設定すれば』 JPEG XL が使えた

2021年7月にリリースされた Chrome 92 から2023年2月7日の Chrome 110 まで JPEG XL の実験的サポートが追加されていました。デフォルトでは無効化され、アドレスバーに『chrome://flags/#enable-jxl』と入力して設定を有効化することで表示可能でした。

実験的サポート中の、デフォルトで有効化されることを望むコメント

Chrome で実験的サポートが追加されてから、 Chromium の課題追跡システムの関連チケットへコメントする形で複数の団体からデフォルト有効化を望む声や、関連するアプリやサービスのサポート状況を報告する声がありました。(※ Chromium は Chrome の元になっているオープンソース版で、Googleが開発しています)

以下はその中で代表的なものです。

[2022年10月29日] Google が Chrome から JPEG XL 関連コードの削除を宣言

2022年10月29日に Chromium のパッチとして「画像形式が Chrome 110 で削除される」説明書きが突如追加され、2023年2月頃に安定版リリース予定だった Chrome 110 で JPEG XLの実験的サポートが削除されると判明しました。

その後、 Chromium の開発チームから以下の削除理由が説明されています。(原文)

  • 実験用のフラグやコードをいつまでも残すべきではない

  • JPEG XL の実験を継続するほどエコシステム全体からの関心が高くない

  • 新しい画像フォーマットは、デフォルトで有効にすることを正当化するほど、既存のフォーマットに対して十分な増分的な利点をもたらさない

  • M110 のフラグとコードを削除することで、メンテナンスの負担を軽減し、 Chrome の既存のフォーマットの改善に集中することができる

この説明の後、反対意見が大量に寄せられており、エコシステムが何を示すのか不明瞭であったり、画像形式の評価内容が不透明であったりする点を指摘する内容が目立ちました。

その後、反対意見を受け Google から追加の理由説明と検証データ公開の予告がありました。

『rANS』の特許問題?

JPEG XL に関連するアルゴリズムである rANS の特許をMicrosoftが取得していることから特許使用料への懸念が原因ではないかという見方もありましたが、 Google から「知的財産権(特許)への問題を感じていない」というコメントが出ています。

[2022年12月03日] AVIF チームによる検証結果の公開

画像形式の AVIF・JPEG・WebP・JPEG-XL を比較するデータが AVIF のエンジニアチームから公開され、それが Google の予告にあった検証データだと言及されました。しかし第三者的な立場ではなく、画像形式普及の面から対立関係になり得る AVIF 開発者によるデータ提供であることから、検証方法などに偏りがある可能性を疑われています。

これに対して JPEG XL の開発団体(Cloudinary)から検証結果への意見が公開され、 AVIF と JPEG XL の開発者同士による応酬となっています。

その後、 AVIF チームによるデコード速度の検証が一年半前の Chrome 92 で行われていることに対する指摘に対応するものとして、最新開発版による再検証結果が投稿されました。その他の指摘への対応は無いままです。

[2022年12月10日] Chromium から JPEG XL 関連コードを削除

上記の AVIF チームによる検証結果公開から一週間後に Chromium から JPEG XL のコードが削除されました。また、 Google は課題追跡システム上での扱いを『WontFix (Closed)』に変更し、今後はこの課題について対応しない姿勢を示しています。

[2023年02月07日] Chrome 110 のリリースで JPEG XL の実験的サポートが終了

最初に予告された通り、 Chrome 110 のリリースとともに JPEG XL のサポートが終了し、設定変更するだけでは使用できなくなりました。

[2023年04月12日] フリーソフトウェア財団(FSF)による懸念表明

フリーソフトウェア財団から懸念表明がありました。

要約すると以下のような内容かと思われます。

ウェブの標準を実質的に決めることができる Google による、Chrome から JPEG XL を廃止してAVIFを推進する決定はウェブにとっての最善より自社利益を優先している可能性があるため、 JPEG XL をサポートする別のウェブブラウザを支持することでコミュニティとして対抗しよう。

少し注意が必要ですが、フリーソフトウェア財団からの懸念表明ではあるものの、 Googleの推進する AVIF がフリーでないということではなく、ライセンスフリーです。

[2023年06月05日] Apple が Safari で JPEG XL をサポートすると発表

Google に次ぐウェブブラウザシェアを持つ  Apple から、macOS の Safari で画像形式として JPEG XL と HEIC のサポートが追加されると発表されました。

また、Apple のエバンジェリストによる話では iOS, iPadOS, watchOS でもサポートされていくようです。


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