チョウセンブナの飼育と繁殖方法について
チョウセンブナ、外来種なのに生息地含めて天然記念物に指定されていることがたまに話題に上がる微妙な立場の魚。
いわゆるアナバスの仲間で、本来の生息地は中国南部からアムール川周辺まで。
江戸時代末期には朝鮮通信使を通じて将軍家に献上されてた説もありますけど、正式に観賞魚として日本に移入されたのは大正初期。
その後関東大震災の後に大雨などで野外に逸出し、その後人為的に各位へ放流されたらしく一時は国内のかなりの場所に生息。
高度経済成長期に入ると農薬、水路のコンクリート化の影響か一転激減し今に至る。
そんな変な魚ですけど近年人気が上昇していて飼育する人も増えてるけどいかんせん情報が少ない。
そういう訳で今回は飼育法メインで書いていこうと思いますわ。
生息地と環境
現在国内では茨城、千葉、長野、新潟、岡山に分布するとされているけど実際は不明。
確実に生息しているのは茨城、千葉両県の水郷地帯か新潟県と長野県の閉鎖水系に点在。
茨城千葉周辺での生息環境はいわゆる田んぼの脇のドブ化した水路や、池や川に接続する湿地帯。
障害物周りに隠れていることが多く、オープンな場所よりは抽水植物や水辺の草が垂れ下がって影になっているようなところがポイント。
ラビリンス器官による空気呼吸が可能で、水が極端に汚れていて酸欠で他の魚類が居ない場所でも生息できるので意外なところ居ることも。
水温に関しても幅広く適応でき、真夏の高水温から真冬で薄氷のはるような水温でも生息が可能。
そんな強健種チョウセンブナですけど薬物にはめっぽう弱く、強めの農薬を使うとほぼ絶滅状態に。
また水たまりやどぶが好きというように流れにも弱く、特に繁殖期には浮巣が流されてしまうので水路改修で水の流れができても繁殖できずほぼ絶滅状態に。という訳でめっぽう近代化には弱いチョウセンブナ。
ただ最近は生息地が増加傾向。
見つかってなかった生息地を探し出した採集者の努力もあるようですけど、どうも飼育個体放流由来も多いらしく新たな外来種問題となりそうだから密放流はしてはいけない。
飼育方法
基本情報
飼育方法は生息地の環境に合わせて、水草や流木でディスプレイして隠れる場所を作りましょう。
多頭飼いの場合は、弱い個体が集中攻撃を受けないよう特に注意して隠れ場所を作ってください。
また浮草をいれて影を作ってあげると魚も落ち着くのでお勧め。
水質や水替え
pH関しては中性でもいいみたいですけど出来れば弱酸性環境にしてあげましょう。
水替えは上記の通り頑強な魚なので、状況次第では月一くらいでも行けるらしいんですけどわたくしは週1回1/3換水していますわ。
なので濾過器はなくてもほぼ問題ないんですが、その際は水流を壁に当てる等して水槽内はごくわずかに水が循環するようにするなどして対応しておくといいですわ。
水温
関東地方や北陸の平野で生息できるだけあって無加温の野外でもok。
流石に冬季の外気温が-5℃以下になり、水槽全体が凍る地域では室内で飼育した方が良いでしょう。
高温に関してもそれなり強めで極一時的であれば30℃ちょっとくらいまでは耐えるようなので、通常は20~28℃くらいになるようにしてあげましょう。
高温に耐えるからと言って、何も対策をしないまま日向に放置してお湯にするのは申し訳ないがNG。
餌
これは各種ベタや小型魚用のフレークタイプ、ペレットタイプの人工飼料でほぼ餌付くはず。
ただし餌付かない個体やえり好みする個体も当然いるので、よく観察しながら与えてくださいまし。
人工飼料以外では定番の冷凍/乾燥赤虫や小型の昆虫なんかを好んで食べますわね。
病気
そもそも普通に飼ってればならないくらい頑丈ですけどなった時はすごく厄介。
薬品に弱いという特性上、使用量は規定容量の1/3くらいから使用してください。
使用してからもよく観察して異常があった時は、すぐ換水して薬品を止めた方が良いでしょう。
このような点があるので、そもそも病気にならないように気を付けましょう。
水槽
単体飼育ならそれこそベタ用の200×200×200(mm)のキューブ水槽でも買えますけどもう少し大きいサイズの水槽が良いですわね。
複数飼育であれば450水槽サイズで3~4匹が限界。
なおそれ以上の数を買いたいのであれば600水槽や場合によってはトロ船等にした方が良いですわね。
また忘れていけないのは飛び出し防止の蓋。
チョウセンブナは増水した際に、飛び跳ねたりして生息域を広げる習性があるらしく水槽でもよく跳ねます。
特にエアーレーションや濾過器などを新設して水に動きができたばかりや、水替え時に激しく動く場合があるので蓋は必須。
意外と強く跳ねるのである程度重量のあるものか重しを乗せましょう。
繁殖
増える時は勝手に増える事が多い(特に屋外でビオトープのような環境で飼うと)ので「簡単に増えます」、という風にまとめられてしまい実は詳しい繁殖方法がネット上には少ないチョウセンブナ。
しかし稚魚は親よりは圧倒的に弱く、全滅するときは全滅する。
なので繁殖環境含めて書いていこうと思いますわ。
繁殖用水槽の準備
基本的に産卵後はすぐにメス親を隔離する必要があるので繁殖用の水槽を準備しましょう。
稚魚がふ化した後も親だけ隔離して稚魚はそのままある程度まで育てることになる場合を考えると、水質悪化に備えて8~10ℓ前後の水量が確保したいので条件を満たす容器を準備してください。
なおふ化後に稚魚を別水槽への移動を考えている場合はこの限りではありません。
レイアウトは浮巣を作る習性上、土台となるものが必要になるので浮草などを入れてあげましょう。
浮草以外にも流木やプラ片等色々適したものがあるようですけど、個体に合わせて必要であればという感じになります。
浮草以外にはマツモやアナカリスと言った水草も多めに入れておくと、隔離前のメスの避難場所や水質の維持などにも役立つので入れましょう。
底砂に関しては有っても無くても良いと思いますが、メンテナンスの簡易さを考えると個人的には要らない様に思います。
水に関しては飼育水と新しい水を合わせたものを準備してあげれば問題ないと思います。
繁殖に適した時期
これは地域にもよりますがおおむね最高水温が25℃以上になる場合。
最高水温がこれ以下だと婚姻色が出ていてもペアリングに至らないこと多し。
お嬢様エリアだと稚魚の育成を考えると7月中盤から8月末までが繁殖シーズンですけど、暖かい地方なら5月末くらいから9月末くらいまで繁殖できるんではないかしら?
なお日照時間も関係するので、室内の場合はライトの点灯時間を長くしてやりましょう。
ペアリング
水槽や条件が整ったらペアリングをさせるんですが、これは様子を見ながら慎重に。
同一水槽で複数のオスメスを飼っている場合は水槽の中でもあまり喧嘩してないペア。
もしくはオスが一生懸命アピールしてるメスとかだとすんなり行きます。
逆に追いかけたり攻撃したりし合うペアは、繁殖に至らない可能性もあるので避けた方が良いでしょう。
単独飼育してる場合は一旦水槽同士を近づけてお互い認識させ、争ったりしそうになかったら繁殖水槽に入れて様子を見ましょう。
繁殖水槽に入れて争ったりするようだったらすぐ戻してください。
産卵
ペアリングが上手くいったら産卵を待つだけなんですがここからは魚の個性次第。
しっかりした泡巣を作る奴もいれば適当に作ったりする奴など千差万別。
あとは産卵後に卵が確認出来たら速やかにメスは取り出してあげましょう。
産卵で消耗しているうえに、オスは産卵後メスを攻撃しまくり狂いまくりで最悪メスを殺すときまであるので同居はNG。
産卵後の世話
産卵した卵はオスが卵を世話をして翌日くらいにはふ化するんですが、ここで死卵や無精卵があると周りの卵も巻き込んで一気にカビるので見つけたらそっと取り除きましょう。
死卵や無精卵は白っぽく濁っているのでわかりやすいはずですわよ。
ちなみにここで1/3くらいの卵はダメになる事が多いです。
孵化後の世話と餌
ふ化した仔魚はオスが世話をし、腹部の卵嚢で生活するので生後2日くらいはほっといてok。
3日目になり仔魚が泳ぎ始めると一転仔魚を餌と認識しだすのでその前にオスを取り出して初期飼料をあげるようにしましょう。
この段階では個体によっては胃が発達せず食べない個体もいるので、大目にあげてもしばらくは水質が悪化しない生餌がベスト。
具体的にはゾウリムシ等のインフゾリアやグリーンウォーター、PSBなどの微生物系。
どれも購入できるしモノによっては増殖させることも簡単なので、繁殖させる場合は事前に準備しておきましょう。
初期飼料を与えて初めて1週間くらいは同じ餌で良いんですが、段々目や体つきがはっきりしてきたらブラインシュリンプなどに切り替えましょう。
ブラインは微生物系と比べると大きいので、最初は少しづつ与えて様子を見てください。
ここでまたしばらくは微生物とブラインを合わせて給餌して、ほぼすべての個体がブラインを食べるようになったら微生物はストップします。
この時点でヒレや体つきも発達してきていわゆる稚魚になって来るんですが段々と成長差が現れてきます。
体長に3倍以上の差がついて空腹だと共食いも発生するので餌は1日3~4食を細かく少量与えましょう。
この時ブラインと一緒に稚魚用の粉餌など配合飼料も少しづつ与えるようにします。
ブラインは栄養価が高く稚魚の餌にはベストのようですが、やはり単食は栄養が偏るらしく色々と病気などのトラブルが発生しやすくなるので早めに配合飼料に慣れさせましょう。
また配合飼料以外にも、ミジンコやマイクロワームと言った少し大きめの微生物も併せて与えても良いと思いますわ。
ここまで餌の与え方を書いてきましたが、これだけ餌を与えていると水質も悪化してきます。
ただ仔魚期は水質変化に弱くあまり水替えをしない方がベター。
餌の残りをスポイトで取る程度にしておきましょう。
少し育って稚魚になると少しは頑丈になるので、週1回くらいはエアーのチューブ等で少しづつ水を替える様にしましょう。
ふ化後1か月もすると完全に魚の形になり、ほぼ親と同じ飼い方ができるようになります。
ただ親と比べたらあまりに小さいので3~4㎝くらいになるまでは親とは別水槽で飼育してください。
親と一緒に飼育を始めても追い掛け回されたりつつかれるようなら別水槽にした方が良いです。
ここまで繁殖や稚魚の育成を書いてきました。
水槽で繁殖を進めるとこのような色々とややこしいことが必要ですが、ある程度環境が整って微生物や小型昆虫が繁殖してるビオトープやそれに準ずるものがあればそこにペアを入れて勝手に繁殖から成長までさせるのもありです。
気付いたときに餌やるくらいでもそれなりで育っていきます。
もしくはふ化後の仔魚をビオトープに移す方法もありです(この場合は水合せをよくするか最初からビオトープの水で産卵させましょう)。
最後に
こんな感じで書いてきたけど最後に一番重要なこと。
繁殖させた稚魚などは絶対放流してはいけない(2度目)
最後まで飼うか信頼できる人にあげるなりしてちゃんと飼育しましょう。
それもできない時は繁殖させない方がいいでしょう…
以上のことを守ってチョウセンブナ飼育を楽しんでくださいまし。