春遠からず
先々週日曜日、泊まりに来ていた甥っ子（4）の吐瀉物シャワーで目が覚める午前5時。おはようございます。結局後始末などで、彼との予定を疲れてキャンセルしてしまった。
小さな身体を震わせ嘔吐を繰り返していたので、電話で叩き起こした愚妹に迎えにこさせとっくに引き渡していたが。
「また予定が合った日に（今日行く予定だった場所）に行きましょう」
「いつ空いてますか？」
返信するのにどっと疲れが押し寄せた。そうまでして行きたいのか。いや、待て。遅刻男にドタキャン女、ある意味お似合いなのか？
担当の美容師（晩婚）に相談すると、「妥協しなきゃ結婚なんてできないよ」「完璧な人間なんていない」「たらみさんはその人に言えるほど完璧な自信ある？非の打ち所、ない？」と言われた。なるほど。私の友人たちにも相談したが「大事な時に遅刻されたらどうするの」「人間として最低」と散々な評価だった。そうか。そこが妥協できないから、友人たちは皆一人なのだ。（ちなみに美容師的には遅刻云々というより、手料理をやたら食べたがるところやABCクッキングに通っているくせに家庭料理を簡単だと思っているところのほうがモラ気質を感じるらしい。）
ショートになったおかげで晒されたうなじを撫で、そんなことをぼんやりと考えながら彼からのメッセージを待つ。
が、こない。
毎日毎日きていたのに、夕飯報告も3日も空くとなんだか淋しい。私は他人に返信を待たせるが、待たされるのは大嫌いなのだ（最低）マチアプで他の女といい仲になって、私への返信がおざなりになっているんだろうか。もう知らない！（頬を膨らませるかわいい絵文字）
その後、しれっときたメッセージに意気揚々と即返信してしまった。遅刻で怒っていた気持ちはあの時に髪と一緒に切り落としたのかもしれない。しかしながらオタ活に、友人らとの集会、マチアプアポや北海道旅行などで彼と会うのは先になりそうだ。
先週の金曜日は朝一番で、職場の歳の近い未婚男性に「ショートも似合いますね、長いのも可愛かったですけど」と笑顔でお世辞を言われて素直にときめいてしまった。切羽詰まる発情期おばさん、もう見境がない。
褒められた嬉しさと散髪でなんとかモチベーションを保ち、本日連休最終日マチアプ休止前の最後の初アポ。最近は正直メッセージも怠かったので、三日前の返信なども当たり前になっていた。実に失礼な話だ。
ヘアメイクも洋服も全力ではない。見れる程度で待ち合わせ。案の定、私が先に着き友人からかかってきた電話に対応しながら待っていた。
「今日は例の遅刻男？」
「いや、違うけど…どうだろうね。」
遅刻かもしれない、といいかけたのを飲み込んで良かった。約束の5分前に現れた彼は、とても小柄だった。私も小柄だが、私よりも少し大きいくらい。
眼鏡をかけ、小柄なので仮に虫眼鏡（東海オンエア）とする。「すみません、お電話されていたので声かけるタイミングを失いました」穏やかで優しい感じの人だった。
「たらみさん、お写真のイメージだともっと物静かな方かと思いました」
「ｱｯ写真詐欺ごめんなさい…撮り慣れてなくて」
「いえ、明るい方で安心しました」
カフェのチョイスが自分のツボでとても良かった。聞くのも話すのも上手で、要所要所で褒めてくれるのがとても嬉しい。がつがつはしないがきちんと自分を恋愛対象として見ている、と安心させてくれる。
私が乗り気じゃなかった遅延しがちなメッセージも内容をきちんと一つ一つ覚えてくれていて、むしろなぜ自分はこんなに相手に興味を持っていなかったのかと反省した。
見目が麗しいわけではないが、清潔感もある。穏やかに、にこやかに聞いてレスポンスをくれる。5年くらい婚活をしているらしい。マチアプに蔓延るモンスターを相手に我慢強い人だ。
「雰囲気が柔らかいので、甘えたくなっちゃうのかもしれないですね」
「あまり怒らないです。怒るのにエネルギー使うじゃないですか。たらみさんは怒りますか」
「喜怒哀楽はわかりやすいって言われます。気が強いのは間違いないです…」
「本当に気が強い人は喋り方でわかるので、そんなに気にしなくて大丈夫ですよ」
さすが、マッチングアプリ5年目。
悟り系男子だ。
持ち物もなんとなく品が良さそうに見える。気遣いも細やかで、自分からきっちり2時間でアポを締めてくれた（今までで初めて）。名残惜しかったのか、彼からの提案でそのあと2人で近くのお寺にお参りして帰宅。
連絡先は交換したので、マチアプは近々削除しようと思う。
浜口京子も虫眼鏡も、自分の中で100点満点の相手ではない。当初のゴール値であった結婚は愚か、お付き合いするかもわからない。けれど、2人とじっくり向き合いこの先の人生を考えてみたいと思う。
会食恐怖症も和らいで、マチアプはいい恋愛リハビリになった。2人とも違うなと思ったら、また再会するかもしれないし、結論によってはしないかも。
来週は暖かくなるらしい。