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みにくいアヒルの子

「みにくいアヒルの子」(みにくいアヒルのこ、丁: Den grimme Ælling)は、デンマークの代表的な童話作家・詩人であるハンス・クリスチャン・アンデルセン原作の童話。1843年発表。
ドラマで岸谷五朗が出てて再放送で見ていた遠い記憶。辛目なドラマだった気がする。

アヒルは見た目が違うというだけで仲間はずれになっていた。本当は美しい白鳥だったのに。

わたしは心が半ば白鳥になれないアヒルの子状態だった。
彼と約束をしていないことをいいことに、イブには男友達と飲みに行き、何気ないことで笑い、飲み、気のあるような態度もとっていた。
彼との記憶はめまぐるしく居酒屋で思い出すのに涙は出ない。罪悪感もない。
こんなわたしは白鳥になれない、みにくいアヒルの子。
まわりと違うことにほとほと反吐が出て、同世代の異性と世代間の話題で盛り上がり、年相応の老いを労いながら、そろそろの四文字に駆け上ろうとしていた。白鳥でなくても、せめて大人のアヒルになりたかった。
彼は根っからの白鳥気質だ。成長が少し遅いだけで、他の白鳥に劣らない立派な白鳥になるだろう。
彼が立派な白鳥になった頃、わたしは鴨鍋にでもなっている。それが許せなかった。一人鴨鍋になるのが怖かった。
抑えていた自我が一気に放出していた。

電子タバコを仕事帰りに吸うのが日課だったわたしは鞄の中のポーチに電子タバコが無いのに気付くと、今日は吸いたい気分だと思い、男友達と駅前のコンビニで暖かい紅茶と小さなケーキといつもの電子タバコの番号を小さな声で放って電子マネーで買った。
やけに安かった。
電子タバコが入力されていないことに気付かない店員。すぐに気付くわたし。
そのまま男友達とコンビニを出て、タバコの値段入ってないんだよねといつもは取らないレシートを見せて呟いた。
ラッキーじゃん。ついてるね。男友達は言った。このまま飲みなおそうよと男友達は言うとわたしの腰に手を回してきた。

彼なら、彼なら今なんて言うだろう。

鴨鍋に一人でなるのも二人でなるのも一緒な気がして一気に酔いが覚めた。終電はもう無かった。
(続く)

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