弱オピオイドについて
弱オピオイドはコデイン、トラマドールなど。
(少量のオキシコドンも弱オピオイドに分類される)
どちらも有効限界があるため、300mg/日程度で鎮痛効果が頭打ちになる。それでも鎮痛が不十分な場合はそれ以上増量せずに強オピオイドに変更する。
また最近ではオピオイドが必要な場合には弱オピオイドをスキップして、強オピオイドから開始する事も多い。
コデイン、トラマドールはCYP2D6で代謝されて効果を発揮するが、日本人では20-40%ほど生まれつきCYP2D6の働きが弱い人がいる。
増量しても一向に効果が得られない場合には強オピオイドへの変更が必要であるが、強オピオイドに変更した途端によく効くようになったり、過量投与による副作用出現の可能性もあるため要注意。
CYP2D6阻害作用をもつ薬剤と併用時も注意が必要。併用薬を中止できない場合には、これらの薬と相互作用の無いモルヒネやヒドロモルフォン等に変更するのが良い。
<トラマドール>
麻薬という言葉に抵抗がある患者
医療用麻薬に指定されていないので、患者の心理的な抵抗が小さく
医療者側にとっても取り扱いがしやすい。
NSAIDsやアセトアミノフェンを使用していた患者にも
「異なる痛み止めを試してみましょう」と説明すれば十分かと思います。
神経障害性疼痛も有する患者
痛みが中枢神経へ伝えられると脊髄を下行して痛みの伝達を抑える
下行性疼痛抑制系という自然の鎮痛機構が働く。
SNRIはこの抑制系を活発にする働きにより鎮痛効果が期待できる。
他にも抗不整脈薬の鎮痛作用でもあるNa+チャネル阻害作用も持ち合わせていることが確かめられている。
少しでも薬価を抑えたい患者
トラマドールは他のオピオイド製剤と比較すると安価である。
・トラマドールOD25mg「KO」:10.3円/錠
・モルヒネ塩酸塩錠10mg「DSP」:128.1円/錠
・オキシコドン徐放錠10mg「第一三共」:179.8円/錠
切り替え時の換算量を目安に計算すると
・トラマドール:25mg×4錠=41.2円/日
・モルヒネ:10mg×2錠=256.2円/日
・オキシコドン:10mg+5mg=276.8円/日
使用について
トラマールやワントラムの場合は初期用量が100mg/日となり、
・経口モルヒネ20mg/日
・経口ヒドロモルフォン4mg/日
・経口オキシコドン13.3mg/日
に相当するので若干多めになってしまう。
ツートラムの場合は50mg/日で開始することが出来、
・経口モルヒネ10mg/日
・経口ヒドロモルフォン2mg/日
・経口オキシコドン6.6mg/日
に相当するので少量から導入可能。
腎機能低下患者に使用する場合はトラマール25mg/眠前から開始し、
翌日より1日2回とし必要に応じて3-4回/日へ増量するなど慎重におこなう。
200-300mg/日で十分な効果が得られない場合は有効限界と考え、
強オピオイドに移行してください。
副作用
オピオイドと同様に便秘、悪心・嘔吐、眠気である。
便秘を予防するためにナルデメジンを使用してもよい。
またトラマドールによる悪心はオピオイド作用だけではなくSNRI作用も関連していると考えられるので、頓用の制吐剤を使用しても改善しない場合は他のオピオイドへ変更しても良い。
相互作用
トラマドールと抗うつ薬を併用するとけいれんやセロトニン症候群のリスクがあがるので要注意。
セロトニン症候群は脳内のセロトニンが過剰になって発症する病態であり、開始直後や増量時に急に落ち着きがなくなったり、振戦、発汗等を発症したら疑うべし。
基本的には原因薬物を中止すれば24時間以内に症状は消える。
余談
トラムセット配合錠は癌性疼痛には使用しない。
がん患者に使用できるのはがん自体が原因でない痛み(術後痛など)に限られており、基本的にはあまり使用しない。
トラムセット配合錠にはアセトアミノフェン325mg+トラマール37.5mgが含有されており、トラマドール37.5mgは経口モルヒネ7.5mg相当でありオピオイド作用が弱いわけではない事に注意。
またアセトアミノフェンを含んでいるので服用間隔は4時間以上あける必要もあります。
参考:がん疼痛緩和の薬がわかる本
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