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韓国ミュージカル版ベルサイユのばら②
宿題は夏休み最終日までため込むタイプだった。8月に観た記録をなぜ今頃あわてて出しているかというと、本日宝塚雪組さん版を観る前までに書き上げたかったからです。
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ありがとうございます!
内容について覚え書き(2幕)
M15 번쩍이는 돈을 보기만 하면 光り輝くお金を見るだけで
フィガロの結婚が上演されている劇場の場面。お芝居の一座が歌う。王妃、ドゲメネ公爵、ポリニャック夫人、ポリニャック夫人の娘シャルロット他貴族たちが観劇している。原作だとセビリアの理髪師ですが、初演が1800年代で時代が合わないから変えたのかな?ポリニャック夫人は娘シャルロットをドゲメネ公爵と結婚させようとしている。シャルロットは別席で観劇していて、ドゲメネ公爵とポリニャック夫人がその様子をみてこそこそ話している。ドゲメネ公爵は年端もいかないシャルロットを気に入った様子。シャルロットは子役さんが演じるのでドゲメネ公爵気持ち悪メーターが振り切れる。
M16 번쩍이는 돈을 보기만 하면光り輝くお金を見るだけで Underscore
歌なし。どの辺りからこの場面か忘れてしまった。
M17 무대 사고 舞台事故 Underscore
歌なし。マルティーヌガブリエルは見つかったか?みたいなオスカルとアンドレの会話。ポリニャック夫人がオスカルとアンドレのうえにシャンデリアを落とす。危機一髪のところで難を逃れるも、どうした?とアンドレが全く気づいていないことでアンドレの視力低下が明らかになる。目の前で手を振っても反応がない。オスカルに目のことがバレたと分かり、「おばあちゃんには言わないで」と言って去るアンドレ。この辺りからアンドレはまわりの舞台装置などに捕まりながら移動するようになる。
M18 비밀 결사 秘密結社
ベルナールと民衆の隠れ家。ベルナールメインボーカル+民衆。「彼らは権力で抑圧するが本当は私たちを恐れている 私たちが力を集めて一つになれば彼らよりもっと強力な存在となる」
間奏?で場所が変わって王宮。オスカルがマリーアントワネットとフェルゼンの密会に居合わせる。民衆の声を届けたいのに自分の幸せのことで頭がいっぱいの王妃に失望したようなオスカル。
またベルナール、民衆の歌のターンに戻る。ラストはベルナールの歌い上げというか雄叫び。ベルナールはオスカルアンドレに次ぐ3番手ポジションだが、民衆代表にして革命家代表で力強い曲をたくさん持っているので大変おいしい。1789の革命家たちをぎゅっと集めたようなキャラクターになっている。
曲終わり場面転換、ジャルジェ家。ロザリーが銃撃の練習をしていて、的に当たってやったー!とアンドレに抱きつく。黒い騎士の話をしていたら本当に黒い騎士が現れる。偽物め!みたいなかんじ?たぶん。オスカルに剣を突きつける黒い騎士をロザリーが撃つ。倒れた黒い騎士を押さえつけ、仮面を剥ぐとロザリーを助けてくれた/オスカルが酒場と1幕ラストで出会った新聞記者。正体がベルナールと分かる。「お前はアンドレの片目をつぶした!」オスカルは怒りに任せて斬りつけようとするが「武官は感情で行動するべきじゃない!」とアンドレに止められる。
M19 넌 내게 주기만 お前は私にくれるだけ
前奏の鳴るなかで告げる「お前のためなら片目くらいいくらでもくれてやるさ」アンドレ、下手に去っていく。名台詞を最高曲で彩るのやめて~~~うそ~~~もっとやって~~!!M6の効果が絶大すぎて2幕になっても記憶が全く薄れないため、観客的にはオスカルさまったら今更何を仰る状態なのだが、ここでオスカルがようやくアンドレから与えられている"なにか"の大きさに気付く。戸惑いとともに歌い始めるオスカルソロ。"なにか"というのがミソで、原作の無理矢理アレ未遂や毒ワイン無理心中未遂などのコンプライアンス的に問題がありすぎる行動がアンドレから取り除かれた結果、韓ミュ版のオスカルとアンドレはドドドドド純愛両片想いに仕上がっているのだ。歌詞をぜひ見てほしい。何ものにも代えがたく大切に想う相手に対する感情を、目を閉じて輪郭だけをなぞって描写していくような、あらゆるもどかしさが込められた歌詞を。
お前はどうして私にすべてをくれる?
そうして全てを私に与えたらお前には何が残るんだ
お前がそばにいない時間は想像もできない
力いっぱい戦っても結局負けてしまった時
世の中のみんなが背を向けてしまう時
お前がいなければ私は誰の背中にもたれればいい
たまにお前のまなざしをながめると
何と答えたらいいか分からなくなる
お前がそばにいないと一日一日が耐え難いし、人生の重さがもっと大きく感じられる
もしかしたらそれは恐れなのか
もしかしたらそれは私のまた別の心
曲途中でイマジナリーアンドレ(本物)が現れるが、オスカルの戸惑いを示すように、逆光になるような照明効果が付与されている。そのためアンドレの表情がほぼ見えず、2人の関係性を考えさせる演出となっている。恋ではなく愛よりもっと深くて熱いその感情に名前はつけられないことをオスカル自身が分からないことで分かっているのだ。日本で上演されるときは高橋亜子さんの訳詞で聴きたい曲No. 1です。
M20 귀족은뭐냐 貴族とは何か
怪我をしたベルナール(上裸)とロザリーの会話。「お前を人質にとって逃げることもできる」「あなたはそんなことはしないわ」「なぜそう思う?」「オスカル様がそう仰ったわ」(のやりとり?たぶん)
からのベルナールとオスカルのデュエット。というか歌唱バトル。貴族とは何だ?の歌。最終的にオスカルはベルナールの主張に納得したのか、「黒い騎士など知らん、盗んだ銃200丁の代金は支払え」の台詞につながる。オスカルの悪口を言ったのか、ロザリーが怪我人ベルナールを思いっきりひっぱたいて退場。ロザリー、おそるべし。
M21 너라면 お前なら
オスカルのベルナールへの対応をみて感動したアンドレ。自分が守るべき相手だと思っていた幼馴染が、いつの間にか自分の想像をはるかに越える大きな器を備えた人間へ成長していた姿に感銘を受けて歌い出す。改めて聞いてくれ!俺のオスカルが最高な件について!の歌。退室するオスカルの後ろ姿をみて歌い始め、はじめはブロンドの髪や隊服、ペガサスやオリンポスにも比肩しうる外見を褒め称えながら展開する。しかし重要なのは後半の、人々はお前の外見だけを見てお前を簡単に判断しようとするが俺だけはお前のこころを理解して、そのすべてを尊いものだと思っているし、お前なら今まで誰もやろうとしなかった誰も掴めなかった星だってつかめるよの部分と思われる。
따뜻한 난로가 필요한 것처럼 왜
暖かい暖炉が必要なようになぜ
너만의 고통과 슬픔 그속에 눈물들이 얼마나 값진 것인지 모르면서 왜
お前だけの苦痛と悲しみ その中の涙がどれほど貴重なものか知らないくせになぜ
の意図は掴みかねているところがあるのだが、オスカルにはもちろん暖かい暖炉だって必要だけれど、苦痛と悲しみ、その中の涙もすべて大切で貴重で得難く尊いものだと言いたいのかなと解釈している。後述するM28の暖炉はアンドレの象徴なのでは?と思っているので。韓国語初学者的には"あたたかい"の使い方も印象的だった。M6でおばあちゃんに따스한(あたたかい)場所があると言われてジャルジェ家に来た子アンドレが따뜻한(あたたかい)暖炉としてオスカルのそばにいる。따뜻하다の方が温度高めのぬくもりを意味するのだろうか?そしてM6に続き登場する"星"という単語は、俺たちの"星"もあるだろうかと歌っていたその答えのようにも聞こえる。韓ミュ版アンドレ、コンプラ問題もクリアしているしオスカルへの思いの言語化もうますぎてオタクの仕事がひとつもないよ~~~こんなにオタクを幸せにしてくださっていいんですか~~~~ありがとうございます。
M22 미뉴에트 ミニュエット
歌なし、ダンスのみ。ロザリーの本当の母、マルティーヌガブリエルを探しに王宮にロザリーを連れていくオスカル。ロザリーを親戚と紹介するオスカル。アンドレがマルティーヌガブリエル見つけられそう、みたいな話をする。王妃とオスカルがダンス。オスカルが王妃に何か耳打ちすると王妃が怒って出ていってしまう。この間の逢瀬について何かたしなめるようなことを言ったのかな?
M22a 원수 怨讐 Underscore
歌なし。母を探して探索するロザリー。そこへ幼い泣き声が聞こえる。「誰かいるの?」シャルロットを見つけたロザリー。「どうしてこんなところで泣いているの?」「結婚がいやなの…」「こんなに小さいのに結婚ですって!?」
そこへシャルロットを探してポリニャック夫人がやってくる。育ての母の仇!とロザリーが隠し持っていた銃でポリニャック夫人を撃ち殺そうと構えたところへ慌てた様子のオスカルとアンドレが駆けつける。「待て、その女性がマルティーヌガブリエルだ!」
M23 내가 사는 세상 私の生きる世界
そうこうしているうちに悲鳴が聞こえ、シャルロットが投身自殺をするシルエットと鈍いSE。幼い我が子の死を前に、ポリニャック夫人が過去と野望を交えたこのソロ曲を歌いながら心を病んでいく。曲途中でシャルロットの着けていたネックレスをロザリーに渡して「私と一緒に来ない?」「あなたは人殺し!私の母ではないわ!」ポリニャック夫人のその後は描かれないが、もうこの時点で失脚してしまうのだろうなという印象。ポリニャック夫人、出番自体は少ないがソロが強烈で印象が強い。ここまでオリジナル要素が強いのなら、せっかくだしやっぱり誰からも見向きもされなくなり孤独なポリニャック夫人へのマリーからのリプライズが欲しくないですか?(結構です)
M24 이별 別離
ベルナールがロザリーを連れてジャルジェ家を出ていく。オスカルがロザリーは私の妹のようなものだからよろしく、と言う。約束するよと答えるベルナール。ロザリーとベルナールの間にはいつ愛が芽生えたのか、原作とは違って特にその感情は生まれていないがただ託されたのか、台詞を聞き取れていない部分が多すぎてこのあたりは謎のままです。ロザリー、M2と同じメロディで別れを歌う。
オスカルが衛兵隊へ転属願いを出したのかな。オスカル父がオスカルに怒る。オスカル父がアンドレに衛兵隊へ一緒に行け、と命令。退室時、アンドレはおばあちゃんがアンドレのそばにいるのに気づかず、おばあちゃんがとうとうアンドレの失明に気づく。こんなによくしてもらってるんだからこれ以上迷惑をかけちゃだめだとおばあちゃんが泣きながら歌う。「大丈夫だよ、心配しないで」とおばあちゃんの手をにぎるアンドレ。はけ際も壁にぶつかりそうになるアンドレをみて、おばあちゃんは悲しみの表情を浮かべるも、身分をわきまえなければ、というようなことを歌っている。
M24a 위병대 衛兵隊
オスカルが転属先の衛兵隊で"近衛隊から来た貴族"と隊員に反発され、椅子に縛り付けられている。アランと衛兵隊初登場。オスカル「アランドソワソン、質問がある」と衛兵隊の紛失物が多すぎることを聞いている?
オスカルが「アンドレ、準備できた?」と声がけするとアンドレが駆けつけはする、が、オスカルは1人でロープを千切り、1人で椅子をバキバキに破壊し、1人で衛兵隊10人くらいをこてんぱんにする。多勢に無勢だが例によって例の如くアンドレはただ満足そうに眺めているだけで、手を出さない。韓ミュ版オスカル様、歌声も強いが物理的にもはちゃめちゃに強い。アンドレはオスカルにとっちめられた衛兵隊をただ並ばせる係。……天才の采配?最終的にオスカルの真っ直ぐな言葉が衛兵隊に届き、以後衛兵隊はオスカルの言うことに真摯に耳を傾けるようになる。
M25 오스칼님과 춤을オスカル様とダンスを
オスカル父により、オスカルの結婚相手を探す舞踏会が開かれる。ジェローデルもやってくる。冒頭に持っていたドレスと同じかな?オスカルに着せたいと思っているピンクドレスを持ってオスカルを探すアンドレのおばあちゃん。オスカルは水色の軍服で現れ「マドモアゼル、踊っていただけますか?」と来賓の貴婦人たちにウインクしてギャーギャー言われる。宝塚版でいうところのモンゼット夫人枠の方々が歌う曲はM11ロザリーソロのリプライズ。オスカル親衛隊の隊歌ということらしい。ならば私も声を重ねたい。上手側で、その様子を見守っていたアンドレにいたずらっぽくダンスを申し込むオスカル。そこへ舞踏会台無し要員として呼ばれていた衛兵隊が乱入。「食べたいものをたべて飲みたいものを飲め!突撃ー!」する。
その後、おばあちゃんに「オスカルさまにワインを持っていけ」と渡されたアンドレが、ジェローデルに話しかけられる。ジェローデルはオスカルが近衛隊に入隊したころからずっと思いを寄せていた話をする(たぶん)。ジェローデル「ジャン·ジャック·ルソーのヌーベルエロイーズを読んだことがありますか?くだらないロマンスですがね。ぼくはね、ぼくの妻を慕う使用人一人くらいいくらでも目をつぶってあげられる 。君さえよければ」ここまで煽られてもコンプラがしっかりしている韓ミュ界のアンドレはショコラはぶっかけない。偉い
M26 독잔 毒杯
が、思い詰めはする。「…それはどういう」
オスカルとジェローデルとの縁談、自分とオスカルとの身分差、決して結ばれることのない相手を思う気持ちで全身が引き裂かれんばかりのアンドレソロ。歌詞がすべてを語ってくださるので歌詞を貼り付けます。
遠くから眺めるだけでも大丈夫か分からない
愛しながらも決して愛さないように
周りをうろついて結局窒息してしまうだろうが
それでもそばにいるなら
甘い夢を見られるよ
その夢の主人公になりたい
しかし俺は登場しないだろう
幕が降りてくる時 照明を浴びずに
終わる夢
俺の苦痛も慣れるだろうか
毎日地獄を歩いても
俺の罪ならお前を愛した罪
容赦なんか望まない
罪を犯す間に耐えれば
それが救いだけど
神はそんなに慈悲深くない
いっそ愛に代価があれば嬉しいのに
これ以上俺に希望を許さないで
M5~6で出てきた、元はオスカルの持ち物で、酔っ払いオスカルのかわりにアンドレが預かった”捕虜になったとき自害するための毒入りネックレス”。個人的に毒入りネックレスの後日談については2パターン考えている。次の日、毒入りネックレスが無いことに気づいたオスカルがアンドレに尋ねるも、酔っ払って落としたんじゃないか?と言われ、そのままになっていた説。もうひとつは、無いことに気づいたあと、オスカルがアンドレの胸元に覗く鎖をみて、ああ、持っているな、とそのままお互い何も言わずにアンドレが持っている説。オスカルのいる場所にはアンドレがいるし、アンドレのいる場所にはオスカルがいるから、どちらが持っていても同じこと。この毒を、オスカルに持っていけと言われた杯に入れ、アンドレは自ら飲み干そうとするのだ。誰に強制されるでもなく。
オスカルに触れることを許されるのは彼女が酔っ払って寝てしまったときだけ。けなげにひたすらオスカルを思うも身分差の壁の前になすすべもなく立ちすくみ、愛に追い詰められれば本来ならばオスカルが使うはずだった毒を自分に使い、死さえ考える男、アンドレ。君は心の白薔薇か。そこへオスカルがやってきて台詞を交わす。"希望を許さないで"でアンドレが相当叫ぶので、その声を聞いてやってきたのだろうか。
オスカル「どうした?」
アンドレ「あ…衛兵たちと一緒にいると思ったのに」
オスカル「(自分の肖像画を指して)私はあの姿が私の人生の理由で最後の姿になると思った。でもよかった」
アンドレ「何が」
オスカル「私を支えてくれる暖かな視線を知るのが遅すぎなくて。私は誰とも結婚しないぞ、一生。アンドレ、準備できた?久しぶりにダンスの腕前を見ようか。まだ舞踏会は終わっていないぞ」
この曲が先行公開されたとき、誰もが、ああ、韓ミュ版にも毒ワインの場面があるんですね。と思ったはず。私も思いました。しかし実際に展開されたのは無理心中未遂ではなくアンドレひとりの自殺未遂、改変毒ワイン令和版。この場面、性根は変わらないままに形だけを変えた「今夜ひと晩をおまえと…」こと"今宵一夜"だ!?ドドドドド純愛両片想いが両想いになると「私は誰とも結婚しないぞ。一生」は「一生お前と一緒にいるよ」の意味を持ち、肉体ではなく魂が結ばれ心を通わせたオスカルとアンドレはこの瞬間、神話になった。
俺を彼女のそばにだけいさせてくれ
死ぬその瞬間まで
愛させてください
俺のすべてを捧げて彼女を守ることができる
俺の魂をすべて捧げるから
愛に代償があるなら
全部甘んじて受けるから
俺を罰してくれ
飲もうとしていた毒杯を3人のアンドレは三者三様に打ち捨てる。
M27 혁명 革命
三部会?背景のLEDパネルに影絵のように貴族が映し出される。怒りの声をあげるベルナールメインボーカル+民衆の歌。
暴動発生。市民を攻撃しろという命令に、市民に銃を向けることはできないと反発するオスカル。代々王室に仕えるこの家から反逆者を出すわけにはいかないとオスカル父自らオスカルを成敗しようとするが、オスカルの覚悟に最後は「お前の選んだ道をゆけ」と和解。そのあとも衛兵隊は市民への攻撃を命じられるが拒否するオスカル。「たった今から私はすべての称号と地位を捨てる!諸君、選びたまえ!市民に銃を向けるか、共に戦うか!」衛兵隊に問いかけると「我々は隊長についていきます!」
ジェローデルが近衛隊を率いてやってくる。オスカルはこれを止めようとして「私の胸を砲弾で貫く勇気があるか?」の台詞。ジェローデル、しばしオスカルと対峙して命令に逆らい退却することをを決める。「これが私の覚悟だ」
オスカルと衛兵隊がベルナール、市民と合流。「歴史を作るのは我々国民だ!」市民を前に出すな!と先陣を切って戦うオスカル。アンドレも衛兵隊と共に戦い、銃に弾丸をこめたり照準を定めたりするが全ての動作で"見えていない"ことが分かる。と、見えていないはずのアンドレがオスカルを狙う弾丸に気づき、オスカルを庇って撃たれる。倒れるアンドレをオスカルが受け止める。オスカルは橋の下ではなくすぐ目の前にいるのに、分からず手をさまよわせるアンドレ。
「オスカル…前にいるのか?」
「アンドレ、お前、見えていないのか。なぜついてきた!」
「オスカル…怪我はないな」
アンドレ、絶命。M19ピアノアレンジが静かに流れる。取り乱すオスカル。
「私を撃て!お願いだ!撃ってくれ!!!」
からのM19のメロディでリプライズ
私の心臓を抉り出して
さもなくば石にして
狂わせてくれ!!
オスカルの絶叫、暗転。
M28 나를 감싼 바람은 내게만 불었나 私を包んだ風は私にだけ吹いたのか
ベルナールがオスカルの元へやってくる。バスティーユ陥落を指示するオスカル。照明は暗く、オスカルは舞台下手で暖炉の炎を見つめながら客席にほぼ背を向けて座っている。暖炉のように暖かい視線で自分を見守ってくれた魂の片割れをなくした夜。オスカルが呟くように歌い始め、立ち上がる。
私を包んだ風は私にだけ吹いたのか
私が歩んできた道は私にだけ平坦だったのか
今なら少しは分かる気がする
私が享受してきたこの人生は当然ではないことを
もうわかった
神の愛に逆らえない存在
どうしようもなく小さな存在だけど
自己の真実に従って後悔なく
私に与えられた人生を生きてきた
人間でこれ以上喜びがまたあるだろうか
愛して憎しみ悲しんで
人間が長い間繰り返してきた
その崇高な人生の絆を生きた
一人一人どんな人間でも心の自由がある
これが私の生まれた理由
私の一つの体が旗印となって
この世界に生まれ変わる機会をもたらすだろう
舞台奥から光線のような白く強い光が当たり、オスカルを照らす。7月14日の朝がきた。
強い覚悟を持って歌うオスカルの表情がふと和らぎ「春風に似た少女がもう一度笑えるように」と歌うと、オスカルの隣にロザリーが現れる。
「私も来ました。オスカル様、一緒に行きます!」
「ああ、一緒に行こう。アンドレ、準備できた?」
いつものように、隣にいるはずのアンドレに声をかけるオスカル。不在を知りながら、そこにいると信じて声をかけるようなオスカルもいれば、ふと口をついて出た言葉に改めて打ちのめされるようなオスカルもいて、どの解釈もみんな違ってみんないい。役者さんによってというよりその回によっても違うようだ。
行こう
生まれ変わる機会
生きたい世界のために
みんなで一緒に行こう
民衆の声が加わり、曲終わりで銃声。オスカルが撃たれ、倒れかけたところをベルナールが受け止める。目の前にはロザリー。痛みをこらえながら「攻撃を続けろ」と言うオスカル。バスティーユが陥落したぞ!の声があがる。
「オスカルさま…嫌…」
「泣かないで。私は悔いなく生きた」
ロザリーに優しく声をかけ、オスカルが息を引き取る。
M29 나를 감싼 바람은 내게만 불었나 私を包んだ風は私にだけ吹いたのか Rep
民衆が歌う。アランではなく、ベルナールがオスカルの遺体を抱いて舞台の奥の方へ歩いていく。左隣にはロザリー。その途中でアンドレが舞台上手から出てきて、オスカルの肩に手を当て、よくがんばったなとでも言いたげに頷きながら共に舞台奥へ歩いていく。
終幕。
天国の馬車やペガサス(いずれも宝塚版でオスカルとアンドレが昇天する際に登場する大型騎乗装置)は出てこなくても、どの世界線でもアンドレはオスカルを迎えにくるし、そこにいるのだ。これほどの幸せがあるだろうか。カーテンコールではオスカルとアンドレの仲睦まじい様子もみられる。ありがたい。
10月13日、奇しくも宝塚雪組版ベルサイユのばら大千穐楽と同じ日に韓国ミュージカル版も千穐楽を迎える。海を越えるハードルは高そうで意外と低いので、興味のある方はぜひご覧ください。