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債権譲渡の対抗要件1

問題

 債権譲渡の対抗要件は、譲受人による債務者への通知または債務者の承諾である。



解答

誤り
 債権譲渡の(債務者)対抗要件は、①譲渡人による債務者への通知、②債務者の承諾のいずれかである。

解説

債権譲渡とは

 債権譲渡とは、債権の同一性を失わせることなく、債権の帰属を移転させることである。AがBに対して債権を有しているとき、AがCに債権を譲渡すれば、債権はCに移転し、Bに対する債権者はCとなる。
 移転させること自体を指して「債権譲渡」と言っているが、移転させる目的は、債権の売買であったり、債権による代物弁済であったりとさまざまである。

債務者対抗要件

 債権譲渡がされると債権者が入れ替わることになるが、債務者Bとしては、誰が新たな債権者になるのか教えてもらわなくては困る。これが「債務者」対抗要件の問題であり、債務者Bは、債権の譲受人Cに対して、Cが対抗要件を備えるまで支払いを拒むことができる(これに対して、債権が二重譲渡された場合の優劣は「第三者」対抗要件の問題である)。
 上の説明から分かるように、債務者対抗要件の主眼は、債務者が債権譲渡の事実を知っているかということである。債務者が債権譲渡の事実を知っていると言えるのは、債権譲渡の事実を知らされた場合(通知)と債務者自らが債権譲渡の事実を知っていると表明した場合(承諾)のいずれかである。そこで、民法は、債務者対抗要件を、債務者への通知または債務者の承諾と定めている。

債務者の承諾

 承諾とは、債権譲渡の事実を知っていることを表明することである。債務者対抗要件の主眼は債務者Bが債権譲渡の事実を知っているということだから、この表明は譲受人Cに対するものでも譲渡人Aに対するものでもよい(R1-20イ)。

債権譲渡の通知

 債権譲渡の通知は、債務者に債権譲渡の事実を知らせることである。
 債権譲渡の通知は譲渡人がしなければならない。譲受人Cができるとすると、本当は債権譲渡を受けていない者が、譲受人として、ウソの債権譲渡通知をしてしまうおそれがある。譲渡により債権を失う譲渡人Aならぱ、ウソの債権譲渡通知をするおそれは小さいだろう。
 ところで、債権の譲受人Cが、譲渡人Aの債権者でもあることがある。この場合、譲受人Cは、債権者代位権により、譲渡人Aの行うべき債権譲渡通知を代位して行うことはできないか。この点は、譲受人Cが譲渡人Aに代位して行った債権譲渡通知は無効とされている(R1-20エ)。これを許すと、譲受人Cは譲渡人Aの意思に基づかずに債権譲渡通知ができることになり(債権者代位権は債務者の意思に関わらず行使できる)、民法が債権譲渡の対抗要件を譲渡人による通知と定めた趣旨を没却してしまうからである。
 もっとも、面白いことに、「代位」はダメなのに、譲受人Cが譲渡人Aの「代理人」とした行った債権譲渡通知は有効とされている。「代理」だと譲渡人Aによる代理権授与が必要であり、譲受人Cが代理人として行った債権譲渡通知は譲渡人Aの意思に基づくものと評価できるからであろう。

 なお、債務者対抗要件の通知・承諾には、第三者対抗要件と異なり、確定日付を要しない。

ここを押さえよう

 債権譲渡の債務者対抗要件は、債権譲渡の通知または債務者の承諾
 債権譲渡通知は、譲渡人がしなければならない。


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