温かみのあるひと
子供の頃、「男はつらいよ」とか山田太一作品を見て「家族ってこんな風に温かみのあるものだ。そうあるべきだ」と考えていた。実際の家庭がそれとはかけ離れていたから、私はその隙間を埋めるのに必死だった。私が頑張れば、喧嘩ばっかりしていても最後は、「とらや」のおいちゃんとおばちゃんのように両親がなってくれると信じていた。
いつそれを諦めたのだろう?と考えてみると、多分、どこかでまだ諦めていない自分がいる。シナリオの師匠が言ったように「子を捨てる親はいても、親を捨てる子はいない」のだ。
去年から、英語のレッスンをしている。先生は、子供たちの英語の先生でもあるLizだ。Lizは私を、Roseと呼ぶ。
フォニックス、という発音をもとに英語を音声でLINEで送ると、彼女がコーチしてくれる。その言葉がいつもとても温かい。birdの発音がなかなかできなくて、何度も何度もやり直しになっても、Lizは明るく、直してくれる。こんなに簡単な音が出ないなんて、と落ち込む私を励まして出せるまで付き合ってくれた。子供の頃、こんなふうに勉強を教えてもらっていたらなあ、と思う。
瀬戸内海に住む、友人がいる。大学が一緒だったのだけれど彼女はお父さんの病気を機に実家の四国に戻った。その地で結婚して、私の長男と同じ歳のお嬢さんがいる。
彼女は時々、ラインをくれる。瀬戸内海の海や、夕焼けの映像。すごく癒される。
実家からもらえない励ましや癒しを、期待していなかった人からもらえるとすごく嬉しい。
言葉や何気ないラインにも温かみのある人。
そんなふうになりたい。
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