マガジンのカバー画像

映画の話

22
見た映画の感想など。
運営しているクリエイター

2020年2月の記事一覧

共感と共有の行方(ネタバレ含む感想)

共感と共有の行方(ネタバレ含む感想)

 雲一つない快晴の日にミッドサマーを観た。正直ヘレディタリーの監督が撮った映画で、あの予告編で、しかも不穏な感想が溢れていたので戦々恐々と観に行ったのだが、監督の言う通りホラーでは無かった。割とハッピーエンドだし、セラピー映画だった。

 妹が両親と無理心中をし、家族を一気に失ったことで精神疾患とトラウマを抱えるダニー。そんなダニーのことを面倒に思いながらも、流石に現在のダニーの状態では別れられな

もっとみる
かつてそこに国があった(ネタバレ含む感想)

かつてそこに国があった(ネタバレ含む感想)

 かつてユーゴラスラビアという国があった。南東ヨーロッパのバルカン半島付近に存在し、「7つの国境、6つの共和国、5つの民族、4つの言語、3つの宗教、2つの文字、1つの国家」と形容された国だ。

 そんな国がWW2から内戦で崩壊するまでを描いた映画が『アンダーグラウンド』である。描いている時代で分かる通り、戦争映画に分類される映画なのだが、大多数が想像する戦争映画とは異なる。雰囲気でいうなら現在公開

もっとみる
私に出来ること(ネタバレ含む感想)

私に出来ること(ネタバレ含む感想)

 かつてチャップリンは映画『独裁者』を撮ったとき、ヒトラーについてこんなことを言った。「奴のことを世界中の笑い者にしなくてはならない」そしてそんな『独裁者』から80年ほど経って公開された今回のジョジョラビットにもそれは受け継がれているのだろう。ちなみにヒトラーを演じた今作の監督であるタイカワイティティはポリネシア系ユダヤ人で、監督自身は「それをヒトラーが知ったら憤死するかもね(笑)」みたいに言って

もっとみる
「パラサイト」なんて言えない(ネタバレ含む感想)

「パラサイト」なんて言えない(ネタバレ含む感想)

  ポンジュノ監督の映画はジャンルをどう言って良いか迷う。今回のパラサイトだって最初はコメディに近いが、その間もヒリヒリとした緊張感があり、最終的にコメディではなくなってしまう。どう着地するのか分からない、それがポンジュノ監督の映画の魅力だ。それはパラサイトでも存分に発揮されている。

  低所得者向けの半地下住宅に住む全員失業中のキム家の長男ギウは、高台の高級住宅に住むパク家の娘の家庭教師アルバ

もっとみる