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整えるということ
練習用のシューズもだいぶ傷んできた。 一昨年の冬に修理に出したのだが、またメンテナンスに出さないとならない。
道具を整えるとか、自分自身のメンテナンスをする大切さを思うとき、必ず一つの出来事が思い出される。
以前、ある本番を迎えようとしていたとき、季節は冬だった。それもあって、私の唇はカサカサだった。そして、先輩から小声で耳打ちをするように「ちゃんとお手入れしなきゃダメでしょ。」と言われた。
当時の私は、なりふり構わずに練習に打ち込むことこそが、正しいと解釈していて、カサカサの唇も一つの成果ぐらいに思っていた。ただ、そのくせして先輩から言われたときはとても恥ずかしい気分になった。
あれから数年経って、やっと先輩の言葉を本当に理解できるときが来た。踊りを習っている以上は、発表会などの舞台が想定される。それに備えて日頃から自分の手入れを怠っていない人と、その日だけ頑張ってくる人の差が、はっきりわかるようになった。
アイラインなどがよい例だが、その日だけ一生懸命引こうと思ってもダメで、とって付けたような印象になってしまう。衣装も同じことで、普段着がカッコよく着れない人が、衣装だけ格好良く着られるはずがない。
子供の頃に、「馬子にも衣裳ね~」なんて言われたのは、当然褒め言葉ではないのだ。
以前、レッスンの際にみんなに訊ねた。「今日、踊るために何をしてきましたか?」 それを持っているか持っていないかだけで、とても変わるのだ。
「部屋を片付けてからレッスンに来ました」でもいいし、「ウエストが太り過ぎないように気を付けてきました」でもいい。そこに来るために、何かを整えて来る必要がある。 こういうことを言うと、うるさいオバサンと思われたり、年上の生徒さんからは小生意気なことを言うな、と思われるかもしれないが、本当に大切なこと。
そして、後になってわかるのは、自分にとって不都合な事実を教えてくれることが、本当に大切なことなのだ。