文字と言うものを発明しました。

 私は発明家であります。
 この度、「文字」と言うものを発明いたしました。

 日頃、私たちは「言葉」にて、考えを交わしたり、会話と言うものを楽しんでおります。
 しかし、それらは保存がきかず、口から放たれたなら、瞬く間に消滅するか、もしくは聞き手の脳内に一定期間保管されるのみです。

 この度発明した「文字」にあたりましては、「言葉」を保存できる機能がございます。
 一度書いてしまえば、言葉の長期保管が可能となります。
 そのため、覚えることが苦手な私のような人でも、文字にすることで言ったことや聞いたことを忘れても、大丈夫なようにできます。

 また、自分が体験した出来事を保管することも可能です。
 出来事を追体験できるように、事細かに文字に起こしましょう。すると、読み返したときに、その時のことが鮮明に思い出せるようになるのです。
 一度楽しいことをしたのなら、その瞬間をいつでも思い出して、楽しい気持ちを味わうことができることでしょう。

 しかしながら、お気を付けいただきたいことがございます。
 文字には長期保管機能がありますゆえに、しっかりと無くさないように管理しておく必要がございます。

 例えば、渡さないまま書き溜めた恋文とか。
 例えば、深夜帯に書き殴った詩的な文章とか。
 例えば、応募に至らなかった小説作品とか。

 そういったものも、積極的に捨てない限りは保管されてしまいます。
 いつか片づけをする際に、偶然見つけて読み返した未来の自分に「くすり」と笑われてしまわぬように、注意しましょう。

 この発明が、沢山の人にとって、有意義に利用されますように。

 by Mr.文字シャン

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