花火

 窓を振動が叩く。
 何事かとベランダに出る。爆発音の出所はどこだろう。
 光と音の衝撃に、顔を上げると。
 色鮮やかな花々が視界に飛び込んだ。
「あの頃は楽しかったなあ」
 思い出すのは学生時代。
 サークル仲間と味わった、夏の風物詩。
 弱い自分を隠そうとして、隠せなくて。 
 だからこそ、その他大勢とは違う、特別な感情を抱いていた。
 そんな大切な人たちとの想い出。 
 社会に出て、強いフリだけが上手くなった今では。 
 本当の自分なんて下手に隠し通してしまえる。 
「ひとりで見るってのも、通だな」
 昇っていく火球を眺める。
 いつかの情景は、現実と重なって。
 冬の夜空にちらちらと散っていった。

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