「黒い雨」に度々書かれる「白骨の御文章」について

昨日の記事の続きです。

 原爆文学でも高く評価されている、あるいは、創作なので、盗作だからなどと、批判もされている文豪・井伏鱒二の原爆文学「黒い雨」ですが、私の郷里(広島県神石高原町)の人々と小畠を中心にした今現在では人口僅かな山村が舞台ともなっているので取り上げているのですが、昨日に引き続き「黒い雨」の文中に度々あらわれる「白骨の御文章」について井伏鱒二が何故に多用するのか考えてみたいと思います。
 この「白骨の御文章」の中には「無常の風」という文言がでてきます。
意訳すればこのような文体にもなるでしょう。

 原爆には「熱線」「爆風」「黒い雨」が付き物で「ピカ」っと光って「ドン」ときた事から「ピカドン」と言われてきました。そのうちの「爆風」も「放射能」を含んでいました。広島で被ばくされた人たちは一様に、これらの惨禍を受けて生存された人たちは生涯にわたって、いつ、何時に原爆病に襲われるかわからないという不安を抱いて生きなければなりません。
 だから、横川駅の電車の中で最初に爆風を受けた「黒い雨」の主人公の一人でもある「静馬重松」(重松静馬)は火葬の後に「白骨の御文章」を参列者を前に唱えた後に「冷や汗」を流したのです。
 すなわち「無常の風」とは放射能を含んだ風だと重松氏は早くから気付いていたのでしょう。また、同様に井伏鱒二も重松静馬氏とは「黒い雨」を執筆するにあたり、何回も書簡のやりとりや、福山の小林旅館などで打ち合わせも行って書き上げています。
 そして、井伏鱒二は晩年になってからは原発にも反対していて、次の言葉を残しています。

放射能と書いて無常の風とルビを振りたい」と….
そして、この文体は私も寄稿している中日新聞(東京新聞)が2014年に発刊した「君臨する原発」にも使用されています。https://www.amazon.co.jp/%E5%90%9B%E8%87%A8%E3%81%99%E3%82%8B%E5%8E%9F%E7%99%BA-%E3%81%A9%E3%81%93%E3%81%BE%E3%81%A7%E7%8A%A0%E7%89%B2%E3%82%92%E6%89%95%E3%81%86%E3%81%AE%E3%81%8B-%E4%B8%AD%E6%97%A5%E6%96%B0%E8%81%9E%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E9%83%A8/dp/4808309858

つづく

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