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赤ちゃんとのお別れ

「好きなだけ抱っこして、写真も撮ってかまいませんよ。」
ナースの方達の中には、私も初めての赤ちゃんは16週で流産したの、と涙目になりながら一緒に悲しんでくれた方もいました。
「どれだけ辛いかよくわかる。でも今では息子もいて、19歳になったの。大丈夫。またこの病院で出産することになったら、私を呼んでね。」
と、なんとも温かい言葉をかけていただきました。

写真を撮るのは何だか複雑な気持ちでしたが、今となっては撮っていてよかったなと思いました。今でも見返して涙が出てくるけど、こうやって形のあるものとして残してあげられたことは、私の救いになっています。

処置も終わり、赤ちゃんともお別れをしたところで、一般病棟に移動となりました。産婦人科のベッドでも良かったらしいのですが、どうしても新生児の泣き声が聞こえてくるので、ナースの方達の配慮で遠く離れた一般病棟にしてくれたようでした。そして最後に、赤ちゃんの手形と足形、体重や身長などが記入されたカードと、ナースの方達からのメッセージカード、赤ちゃんが被っていた小さな帽子とおくるみなどをいただきました。正直なところ、アメリカの医療機関でここまで色々と気遣ってくれることを全く期待していなかったので、こんなに最悪な状況でも、つくづく自分は恵まれているなと感謝の気持ちでいっぱいでした。

病室が変わり、やわらかいベッドに横たわり、約20時間ぶりに食事を摂ることができました。心身ともにこんな状態でも、ちゃんとお腹が減るのか…と不思議な気分でした。感染症を防ぐために抗生物質などを一晩かけて投与するらしく、夫はこの時点で帰宅することになりました。彼も疲れ切っていましたが、よく一緒に頑張ってくれました。お互いに、今まで生きてきて一番辛い出来事だったねと、泣きながら話し、それでも私達なりにちゃんと向き合っている。その夜はそれだけで充分でした。


つづく


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