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私の流産を悲しんでくれた、優しい誰か

産婦人科のドクターの到着を待たず、ERのドクターから
「残念だけど、流産です。このまま帰宅して自然排出するか、産科のドクターが来るまで待つことになります。」
と告げられました。
えええ!こんなに大量出血してるのに家に帰します!?
と思ったのですが、一旦夫に連絡。絶対に産科のドクターが来るまで待つべきと言われました。

薄々分かってはいたのに、診断として改めて流産だと告げられると、やっぱりショックでした。涙が止まらない。同じ部屋にはカーテンで仕切られたベッドがもう一つあって、そこにいた患者さんの付き添いの方が、声をかけてくれました。
「ごめんね、聞こえてしまったの、流産だって。I'm so sorry.」
マスクで顔はよく分からなかったけど、中年の女性の方でした。その人が涙目でそう言ってくれて、感動したのと気が動転しているのもあって、声を振り絞っての "Thank you…" しか言えませんでした。

ERで一人っきりで、流産をしながら、誰も私の赤ちゃんが死んでも今ここで気にする人はいないよな〜って考えてたんです。せめて夫がここにいてくれたら。私が一人で悲しんで、一人で見送らなければいけないんだろう。そういう寂しい気持ちでいっぱいだったんです。でも、そうじゃなかった。

どこの誰かも知らない人が、見ず知らずの人の不幸を悲しんでくれた。この出来事は、今でも思い出すと涙が出てきます。コロナ禍でのネガティブなニュースや自己中心的な人たちが当たり前になりすぎて、人間そのものに失望することが多かった私でしたが、世の中にはこういう優しい人だっていっぱいいるんだと、また希望を持たせてくれるきっかけにもなりました。


つづく


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