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流産でも!どんな思い出にするかは私次第。
誘発分娩にすると決めたところで、ようやくERからLabor & Delivery Room (産科の分娩室)へ移動することができました。そういえば、私の母は初産で誘発分娩を経験していて、激痛だったと話していたことをふと思い出しました。私には未知の世界。怖がってても仕方ないし、痛みを感じた時にだけ錯乱すればいいか…。不安はあっても、やっぱり楽観主義な私。パニクって物事が良い方向に動いた試しがないので、何もできない時は何もしないに徹するのみ。
移動用のベッドに移され産科のドアの前まで来たときに、ちょうど出産を終えたであろうママさんが、ベッドを押されながら出てくるのとすれ違いました。腕にはおくるみに包まれた赤ちゃん。旦那さんらしき方も荷物を抱えて一緒に出てくるところでした。
何だこのドラマみたいなタイミングは!
いいな、って思うと同時に涙が込み上げてきて、でも誰かの幸せな瞬間を台無しにしたくはない。マスクがあってよかった。何とか俯いて、堪えることができました。
個室へ入るとすぐに分娩台に移され、点滴と経口薬をすぐに投与されました。分娩には3時間から6時間ほどかかるとのことで、それまではひたすら待つのみでした。
夫は一旦帰宅し、私の着替えなどを持ってきてくれたのですが、心細かったのか何故か犬まで一緒に連れて戻ってきました。この頃には夫の両親と妹が病院まで心配して駆けつけてくれていましたが、コロナの影響でもちろん院内には入ることができません。分娩までまだまだ時間がかかるため、みんなには昼食をとりに行ってもらいました。
誘発が始まってから30分ほどで、重めの生理痛のようなズーンとした感覚が、下腹部と腰を中心に広がりました。これからさらに痛くなるのかな?と身構えていたのですが、1時間経過しても感覚は変わらず。むしろ固い分娩台に寝転んでいるせいで、背中とお尻の痛みの方が耐えがたかったほどです。
気休めにテレビをつけると、The Officeというコメディドラマの再放送を発見。夫はこのシリーズの大ファンで、Netflixで配信されていた頃は、これを狂ったように全シーズン何度も繰り返して見続けることが彼の日課でした。何度も見ているのに、アホみたいに大笑いする夫を思い出して少し笑ってしまって、その時にふと思ったことがありました。
人生で初めて経験している悲しみのどん底でも、自分にはこうやって少しでも笑える強さがある。私の赤ちゃんとの思い出を、ただ悲しい出来事だった、だけで終わらせなくてもいい。こんな些細なエピソードでも私と赤ちゃんの、少しでも笑えた思い出にしたっていいはず!そう思えることで、少しだけ気分も軽くなりました。
分娩室に移動してか3時間ほど経ち、夫にもそろそろ戻ってくるように連絡しました。下着は出血で汚れてしまっていたので、安いもので良いから買ってきてほしいと夫にお願いしました。
”目の前にVictoria's Secretがあるからそこで買うね!”
と、たまに出る天然っぷりを発揮する夫。こんなに出血してるのにそんなセクシーランジェリー今履けると思う!?お願いだからその辺の量販店に行って安い、布面積のもっとデカイ下着を買ってきてくれと頼み込みました。
またここで笑える瞬間を提供してくれた夫に感謝でした。
つづく