言葉で表せない、命の不思議。
疲れ切っていましたが、2〜3時間おきに血圧や体温の確認をされるため、寝れたのか寝れていないのか分からないまま翌日の退院を迎えました。
「車まで送りましょうか?車椅子もありますよ。」とナースの方が最後まで気を遣ってくれました。倦怠感は残っていましたが、体が弱っているという感覚はあまりなく、すでにかなり回復していたと思います。
「いつもはシニアの患者さんが多いので、自分で歩いて退院できる人を見送るのは久しぶりだよ!」と嬉しそうに話しかけてくれました。その話を聞き、たった今流産を経験して赤ちゃんを失った私でも、健康な状態で、自らの足で歩いて病院を去ることの出来る現実には感謝しなければ…!とハッとさせられました。いつでも、どこでも、自分だけが辛い思いをしてるんじゃない。
帰り道、病院の近くで美味しそうなケーキ屋さんを見つけました。お値段は少し高めでしたが、頑張った自分と、そして夫へのご褒美です。
家に帰り、泣きながら二人でケーキを食べました。赤ちゃんを失った日だけれども、それと同時に彼が生まれた日でもある。悲しいだけじゃない、少しだけでいいから、良い思い出も作りたい。5ヶ月という短い時間、そして突然終わってしまった命だったけど、こんなにも私たちを特別な気持ちにしてくれた赤ちゃん。こんなに悲しくても、ちゃんとケーキが美味しいと感じられる自分の食い意地には少し救われました。
赤ちゃんの小さな手形と足形を眺めながら、なぜか唐突にあの有名なアニメーション映画の主題歌の一節を思い出しました。
”生きている不思議、死んでいく不思議”
なんとなく、そういうことかと、うまく言葉にはできないその”不思議”を体験したんだと感じました。
つづく