マガジンのカバー画像

書評マガジン

8
本の魅力を伝えることを最優先に、ネタバレ無きあらすじ重視の書評を集めました。
運営しているクリエイター

2024年2月の記事一覧

書評/『東京都同情塔』(九段理江著):生成AIは我々の価値観と言語をどう変えるだ…

 九段理江著の『東京都同情塔』は、第一七〇回(二〇二四上半期)芥川賞を受賞した。本書は、…

青山涼子
9か月前
6

拝啓 村上春樹先生 (1960年代生まれの読者からの書簡・2023年4月初旬)

はじめに  これは村上春樹氏への手紙に模した書評エッセイです。私にとって村上春樹氏は、心…

青山涼子
9か月前
16

書評/『異常【アノマリー】』(仏ゴンクール賞受賞/エルヴェ・ル・テリエ著・加藤かお…

 パリ発ニューヨーク行きのボーイング787が超弩級の乱気流を抜けた時、それまで信じられて…

青山涼子
9か月前
17

書評エッセイ/『エタンプの預言者』(アベル・カンタン著 中村桂子訳)一冊の本の大炎…

 二〇一九年にデビュー作がフランス最高の文学賞であるゴンクール賞候補となったアベル・カン…

青山涼子
9か月前
8

書評/『星の時』(クラリッセ・リスペクトル著・福嶋伸洋訳)ブラジルの文豪リスペク…

 二十世紀の文豪、クラリッセ・リスペクトルの『星の時』が半世紀の時を経て、2021年に日本語…

青山涼子
9か月前
6

書評/『我が手の太陽』(石田夏穂著):能力減退に直面した時、過信とプライドがキャ…

 石田夏穂の二回目の芥川賞候補作となった本作は、技能の低下に直面した熟練溶接工が現実を受…

青山涼子
9か月前
4

「寝煙草の危険」マリア―ナ・エンリケス著 / 宮﨑真紀訳

メチは、ブエノスアイレスで、死亡したり行方不明になった子供たちの記録を管理する仕事をしている。彼女の記録庫には〈年上の男についていってしまう子、妊娠して怯える子、レイプの恐怖から逃げる子、誘拐されて売春組織にとりこまれ二度と見つからない子、自ら命を絶つ子…〉そんな子供たちの記録が溢れている。メチは淡々と、几帳面にファイリングをするだけだ。でもバナディスという、ひと際美しい少女だけはなぜか気にかかっていた。バナディスが拉致されて殺害されたことを示唆するビデオを見たメチは激しく動