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【最終報告書】『遠隔コミュニケーションロボットを介し,ライブ映像(スポーツ,音楽等)をスマートグラスを通して視聴すれば,新しい体験を生み出せるか?』



目的

お久しぶりです!大学生で工学部4年のろぺです.
今回私は研究室の先生経由で企画を紹介いただき,スマートグラスに興味を持ち参加させていただきました.

以前の記事で書いたように,私は,遠隔コミュニケーションロボットを用いることで,室内にいながら球場にいる人とコミュニケーションをとりながら一緒に野球観戦ができたら良いなと思い,提案させていただきます.スマートグラスはVRゴーグルより装着が簡単で,手元を見ることができるので,ロボットのGUI操作も可能で,このシステムにピッタリだと思いました.
遠隔コミュニケーションロボット「Orihime」を用いて,触覚伝送システムを構築し,システムを簡易的な環境下で体験してもらい,スマートグラスや触覚提示が臨場感の向上に効果があるか検証しました.

実験

システム概要

前回の経過報告では,音声分離処理に苦戦していたのですが,マイク入力を2又に分け,1つはデフォルトのマイクで周囲の音を拾い,もう1つはピンマイクで使用者の声を拾うことで,周囲の音がうるさくても問題なく会話ができました.

システムの図が以下の通りです.
触覚掲示はマイクでとった音声を、イコライザーで500Hzより高周波の音をカットし,アンプを通して、腰付近の振動子に入れて提示しました.

実験方法

本来は実践的な環境下で実験したかったのですが,放映権等の問題から実施が難しく,研究室の皆に協力いただき簡易的な環境で実験しました.

  • 被験者は会場にいる人々と1,2回話したことのある程度の20代10名

  • 卓球大会をしている様子をOrihime越しに視聴してもらう

  • 実験は3条件とし,1.pc+ヘッドホン,2.T1+ヘッドホン,3.T1+ヘッドホン+触覚提示 をランダムに1条件2分×3回体験してもらい,各条件の間は10分以上間隔をあける

  • 各体験ごとに評価指標に回答してもらう


評価方法

  • IOS[1]・・・被験者が相手に対しどの程度の親密さを感じているか


  • SAM[2](Pleasure,Arousal)・・・被験者の状態を覚醒度および感情価の2 種類の尺度で測定する

  • IPQ[3]・・・VR空間の臨場感評価のための指標
    実験で使用した質問項目を以下に示します.

    Spatial(空間的臨場感)
    1.私はただ単に映像を見ている気がした
    2.私は会場にいる気がしなかった
    3.私は何かを外部から操作しているのではなく,会場の中で振る舞っている気がした
    4.私は会場の中に居合わせているように感じた
    Involvement(没入感)
    1.私は現実の部屋をもはや意識しなかった
    2.私は未だ現実の部屋に注意を払っていた

今回はVR空間ではないため,質問項目を文献から一部編集しました.

結果

各評価項目をグラフ化したものが以下の通りです.

各評価項目をフリードマン検定を行うと,全ての評価項目で有意差が確認できました.よって,どの条件間で差があるのかを確かめるために,ウィルコクソンの符号順位検定を用いて多重比較を行いました.IOSでは条件1と条件3の間で有意差(p=0.029)があり,SAMのPleasureでは有意差がとれず,Arousalでは条件1と条件3の間で有意差(p=0.012)がありました.IPQでは全ての項目を平均したものでは条件1と2,条件1と3の間で有意差(p=0.047,p=0.029)がありましたが,質問項目ごとに分けると,Spatial(空間)では条件1と3の間で有意差(p=0.018)があり,Involvement(没入感)では条件1と2の間で有意差(p=0.047)がありました.

考察

上述の結果より,スマートグラスによって没入感が向上し,さらに触覚を加えることで親密度,覚醒度,空間的臨場感が向上したと考えられます.
被験者へのヒアリングの結果,パソコンの画面で見るよりも臨場感があった,VRゴーグルより軽くて良いと思ったなどの好意的な意見も多く,スマートグラスを本システムで今後も使用していきたいです.また,触覚提示についても,会場にいるような感覚があった,大きな音が体に響くときの感覚があった,などの意見をいただき,結果の通り臨場感の向上に有効であったのではないかと思います.
また,今回のシステムを用いて,もっと規模の大きな球場やスタジアムの観戦での使用を目指し,実験を重ねたいと思います.

感想

今回のテーマは「自分の人生の運転席に座る」ということで,この企画に参加させていただき,様々な経験をすることができました.1人でキックオフミーティングに参加し,初対面の年上の方々とお話ししたり,オンラインの定例ミーティングでは進捗報告の発表をしたりと,誰かに頼らず「自分で運転して」やり抜けた自信がつきました.
普段研究室ではこのテーマのほかにも研究を行っており,並行して行うのは時間的にも大変でしたが,今回の実験は卒論にも執筆できることになり,参加してよかったなと思います.
アイデアのきっかけとなった父にもいつか体験してもらいたいです笑
Lenovoの苅谷さんをはじめ,Lenovo企画の皆さんや,研究室の先生方や先輩方,ご協力いただいた皆さん本当にありがとうございました.

参考文献

[1]Aron, A., Aron, E. N., Smollan, D.: "Inclusion of other in the self scale and the structure of interpersonal closeness",Journal of Personality and Social Psychol- ogy, 63(4), 596–612,1992.
[2]Lang, P. J.: "Behavioral treatment and bio-behavioral assessment: Computer applications",Technology in Mental Health Care Delivery Systems, 119–137,1980.
[3]Sdhubert,T. ,Friedmann,F. ,and Regenbrecht,H.:"The experience of presence:Factor analytic insights",Presence:Teleoperators and Virtual Environments, Vol.10, pp.266-281(2001)


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