晴れ猫団 さん「プロセニアム~夢の岸辺~」
レベルアップに目を見張る
思えば、1年前のメタシアター演劇祭で、初めて「イマーシブシアター」に触れたのでした。
1年経過しての本公演。
上から目線の言い方で申し訳ないのですが、ただただそのレベルアップの著しさに驚きました。
この1年で関係者の皆様が本気の努力と試行錯誤を重ねてこられたことを、ヒシヒシと感じると共に、ぼーっとしていると置いて行かれるぜ、という焦燥感を感じた。
そんな舞台でした。
日本で「イマーシブ」って難しくない?
そういえば、前回、レビューをひねり出すために、必死に「イマーシブシアター」を調べたんでした。
「イマーシブシアター」は、体験型演劇作品ということで、いろいろなタイプがあるようですが、観客が舞台から見下ろす(見上げる)のではなく、演者の真横に立ったり、あるいは出演者の一人として振る舞ったり、没入型体験ができる演劇だということです。
調べると、イマーシブ専用の施設もあるようですし、日本でも少しずつ広がっているみたいですね!
https://immersivefort.com/index.html イマーシブ・フォート東京
ただ、前回の「SELECT」を見ながら、こっそり思ってたんです。
「はいはいはいはい!おれがやります!」というノリの国民性ではないので、初対面同士があつまる舞台でのイマーシブシアターは、日本では難しいんじゃないだろうかと。
「SELECT」では、全員参加を諦め、選ばれた数名に選択を委ねる方式をとっていましたが、はてさて、今回はどのような工夫を見せてくださるのでしょうか!!
開場前説明だが、既に開演されていた
開場の待合で溜まっていると、イケボのせびる。さんの「注意事項説明」が始まります。
おっと、その前に大事なものがありました。待合フロアに流れる音楽。ゆったりとした、シンプルなその調べは、心をしっかりと落ち着けさせ、物語に入り込む準備をさせているよう。
その証拠に、私語がピタリとやみ、一堂が、せびる。さんの声に耳を傾けはじめます。
一見してただの注意事項ですが、よく考えたらこれは他のイベントでもあるように壁に貼っておけばよいんです。
そう、せびる。さんの説明から、既に劇は始まっているのでしょう!
演者の皆さんの「Show Avatar」を順にやっていきます。
前に人がいるとビームがうまく当たらないので、終わった人から後に下がる。一人ずつShow Avatarする。後に下がる。次の数名にShow Avatarする。下がる。
この繰り返しのうちに、いつしか、私達は暗示をかけられていくようです。
「何か指示があったら、協力しながら、その動作をする」
こうして、演者の皆さんのポーズに「かわいい!」と思いながらも、催眠術にかかっていくのでありました。
やっぱり説明から既に開演だった
さて、この説明が既に劇の一部であることを明確に示すのがこの夢日記。
説明の途中で変なものを差し込んでくることで、私達に「既に物語は始まっているんだよ」と教えてくれているんですね。
ということは。
この説明も、なにかの「振り」でしょうか。
やるなよ、絶対やるなよ 的な・・・・
視覚効果満載で楽しい
ストーリーは4つ(確か・・・)の場面をつないでいく構成で、晴れ猫団さんの過去の舞台を見ていると、一目で「でたー!」ってなるやつです。
(がんばる細胞・・・
見てないんですよ。失敗したなぁ・・・。)
そして目と耳に残る演出!
この声が、数日耳に残るんですわ。にゃんにゃん!
そうこうしているうちに! あああ!
助けにいかなくていいのか!?
みてください、この悪い笑顔(笑)
物語がはじまってすぐ、この劇が「イマーシブ」であることを知っている私達に、大きな試練が課せられます。
「白血球チームと赤血球チームに分かれて並べ!」というコール。
「さぁ、みんな、こっちこっち!」
そのうち、体の中への侵入者によって、ぎたんぎたんにされてしまう白血球と赤血球。
みんなの応援を求める少女。
観劇した皆さん。さぁ、正直におっしゃい。
席を立って前に出そうになりましたよね?
私は出そうになりました。
思いとどまったのは、観客席前に浮かんでいるフォースフィールドのおかげです。あれがなかったら、行ってた。
そして、ノリのいい人なら、多分行っちゃってたと思うんです。
微動だにしない観客席。
さすが、日本の観衆です(褒めてる?それはどうかな)
※コライダーがあるので、実際には前に飛び出しても舞台には出られません
要素ふんだん だけど軽快
それにしても、いろいろと詰め込みましたねー!
夢の世界ということもあって、次々と場面が切り替わる。
もともと個別の劇だったものを入れ込んでいるけど、過去の劇を見知っている人も、見てない人もいる。その両方に配慮しないといけない。
説明的になれば冗長だし、説明が足りないと「なんじゃこりゃ」になる。
このあたりの取り回しもシンプルにできていて、テンポ良く進んでいる印象でした。
演者のみなさまがすごい
タイトルの通りです。引き込まれてしまいました。
というか、上手に乗せられました。
がんばる細胞の皆様の、鬼・・じゃないわ、指導者ぶり。
そして侵入者の禍々しさ。
吐息からも伝わるお父さんの絶望感。
そして!
キャリコさんの熱演。
このきかん気な女の子を上手に上手に演じておられて。
ほんと、声を聴きながら「この〇〇!」って思ってしまいました(笑)。
挨拶までがワンセット
さらに素敵なところは、舞台で全部やってしまおうとしていないことかもしれません。
終演後にホールの階段を上がっていくわけですが、そこでその後の家族の姿がスチール写真となって掲出されています。
そして、最後にママの退院記念写真へとつながって、物語がハッピーエンドに至ることが示されます。
その写真の下には、挨拶会場へのテレポート装置が用意されている。
ここまで見たら、途中退出する選択はありませんねー。
挨拶が始まるまでの間。
そして、記念撮影後。
思い思いに、言葉を交わし、そして作品を咀嚼していく時間を得られます。
これ、大事ですね。
進化がすごい まさに没入
さて、本稿では「どのように観客に参加させたか」という手法については触れませんでした。
もちろん、書いてしまえばいいのでしょうが・・・
うーん。
なんとなく、あの方法は「観客参加」の全てではないし、最も重要な工夫であるとも言い切れないと感じるんです。
あれがなくても、十分に参加した!という気持ちがあったんです。
少女の呼びかけに、前に出ちゃおうかと思ったこともそう。
他には・・・・
言葉にできないけれど、確かにあの場に私は参加していた。
なんとなく、そう思うのです。
うん。
根拠のないアレです。
ひょっとしたら、過去に見知っている舞台を思い出し頭の中で振り返る、ということが影響しているのかもしれません。
あるいは、舞台の設計が秀逸で、ギリギリまで近いところから観られるという点も大きいのかもしれません。
いずれにしても、1年でこんなに進化するんだ・・・・という感慨。
いいえ。
1年とはいわず。
ゲネプロで拝見したときと、千秋楽と。
わずか1週間ほどのスパンで観ても、進化を実感できる。
本当に、これからの躍進とご活躍に 目を離せないにゃん!