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色とシルエット。かんげき "Hamlet" 

あります ありません あれはなんですか

一年の終わりがまもなく始まることを知らせるイベントになった「メタシアター演劇祭」。今年もやってきました。

ささやかではありますが、今年も協賛させていただきました。
実質何もやってないけど(!)

実は、夏の段階で演目をこっそり聞いておりました。「Hamletです」って。それを聞いて思わず言ったのが「それはまた、難しいヤツを」

勿論、マクベスも「難しいヤツ」ではありました。
しかし、これは「女から生まれた者には殺されぬ」の日本語では通じないトンチみたいなオチをなんとかすれば(笑)。
しかし、Hamletですよ。。。。。

To be, or not to be, that is a questtion.

この有名なセリフが絶対いろいろ邪魔をする気しかしなくないですか?
入れないとハムレットにならないし、入れたら彼の苦悩を長く語らないといけなくなる。VR演劇に堪えられるのでしょうか。

しかし、始まってみて、そんな心配は素人がするもんじゃない、ということをはっきりと思い知らされたわけであります。

シンプルな舞台装置が生み出すもの

劇の始まりから、不思議なことに気づかされます。舞台が非常にシンプルなのです。柱と階段と壁。 反対側にはアーチ。
何ものでもなく、何ものにでもなれる。
現実の舞台でもよく見るシンプルな構造です。

階段とアーチから成る舞台

この大道具が(奈落やせり上がりはあるものの)一貫してこの劇では使用されます。森での狩りのシーンも王宮のパーティも、全てこの場で行われます。
現実の舞台なら当然です。このような大道具は作るのにお金がかかるだけではなく、場面ごとに移動させるのも大変ですから共通利用できるものにすべきなのはわかります。

でも。やっているのはVR演劇です。
場面転換も容易ですし、なんならテクスチャ貼ったら背景を作れるのですから、予算などの事情ではなく、明確に演出意図があると考えるべきでしょう。

王宮での乾杯シーン

こちらの場面もそうです。パーティなのでテーブルくらい出せばいいし、乾杯シーンなのでグラスくらい持ってもいい。
狩りの場面では弓すらなく、ポーズだけ。

これらは、おそらく、「演技の本質以外のところに目を奪われて欲しくない」という演出者の気持ちなのでしょう。

そして、この演出によって、演者のみなさんの体の動き、振る舞いの優美さに集中できた!と絶賛させてください。
「VRでやる意味」を日々考えておられる皆さんにとって、この選択は決して容易ではなかったはずで、しかし、この劇が「ホンモノだ」と感じさせる重要な要素となっていると感じたことを、銘記したいと思います。

一方で、旅一座の見せ場では大がかりな家具やパーティクルを見せ、メリハリをつけていることもさすがー!!
一座にはちゃんとお給金をはらってください。

魅せる! 旅一座

シルエットこそVRならではだ!

この舞台で特徴的なことを挙げよ、と言われれば、「色とシルエット」だと思うんです。
リアルの世界では、シルエットで髪型が分かるなんて事はないわけで、暗闇に体のエッジを表現しても絶対に伝わらない。
ところが、VRならできる。
これができるのがVRなんだと気づかされました。


シルエットまつり

シルエットまつり

この劇では、シルエットというか、色とコントラストが実に効果的に巧妙に使われています。
キタナイ言葉で罵られ、突き放されたオフィーリアのシーンでは、その後、シルエットに切り替えられています。

もうひとつ、こちらのシーンもお気に入り。


聞き耳を立てている人に注目


刺された!

挙げていけば限りがありませんが、上の図が一番わかりやすいでしょう。ハムレットの苦悩の理由を確認すべく聞き耳を立てているポローニアスの様子は、うっすらとしかし、はっきり見える。
ハムレットに気づかれ、刺された瞬間に背景の一部だけが赤く!!

なんて素敵な演出でしょうか。
この一点で、私達観衆は「あ。。。。殺しちゃった・・・」と分かるのです。

パーティクルのインパクトで勝負をしていない反面、パーティクルの力も忘れていない。使い分けの妙も忘れてはいけませんね。

血の雨

アングル悪くてぜんぜん伝わってないですが、血の雨。
客席にもふりそそぎ、地面に落ちると波紋も生じます。
呪いが陰惨な結末を生むことを暗示する効果的なシーンです。

言わずもがな 演者のみなさま

生きるべきか

ハムレット役のミリアさん。VRでは実際の性別を意識しないようにしているのですが、ハムレットの強い気持ちが伝わってきて、女性だなと意識する瞬間はありませんでした。

野太い声で演じられると、暗く暗く奈落に引きずり込まれるようなストーリーなので、みずみずしく若い声というのは大事なのかも知れませんね!


圧倒的存在感

クローディアス役のともよろうさん。
シルエットだけで、この存在感です。
もちろん王である兄を殺しちゃうわけですから悪いヤツなのですが、劇の主題は彼の悪行ではないので、その存在感の出し方の難しいこと!
(水戸黄門の悪代官とは違うのです。)
ハムレットには確かな悪でなければならないけれど、悪の権化になってはいけない難しさ!
それがしっかり演じられているのが魅力的です。

声量が!!

個人的に、呑まれちゃったのが この方!!
良い写真がなくて舞台挨拶になっちゃた・・・ごめんなさい。
ヒナミィさんの声のすばらしさ!
圧倒的でした。
すてきですぅぅぅぅ。

クルッと回って
変身

そして、皆様の振る舞いの優雅なこと。
単に回るだけではなく、伝わるポージング!!
どれだけ練習されたんだろう!!

全ての演者の皆様を紹介したいのですが、言葉が止まらない!!!ので。
これくらいで。

To be To be Ten Made To be

メタシアター演劇祭のHamlet。
VR演劇なのですが、リアルの演劇関係者から見ても、本格的な舞台であったのではないかと素人ながらに思います。
「VRならでは」「VRにしかできない」をふんだんに含みつつ、キワモノという評価を撥ねのけるだけの力を持っている。そう感じました。
そして、
このことこそが、VRの明るい未来を示しているのだと思います。

めざせ! 天まで!
新たなる可能性と 新たなる未来へ!

呪いが破滅を招く未来ではなく。
努力と情熱が周囲を照らす未来へ!

素敵な体験をありがとうございました。


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