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ヒッチハイク旅 家の前から北海道編(2)


前回のお話


大筋は、とある大学生が北海道へ向けて家の前からヒッチハイクを始めて、SAへ徒歩で侵入するためにとある駅へ着いたところまでの話である。

それでは続きを書いていこう。

その駅からSAに入ってしまえば、あとはどの車でも乗せてもらえれば目的地に着くというイージーで極楽な旅が待っている。

駅に着くとSAを目指し傾斜の激しい坂を上り、時々汗を拭き、水分を補給しながら約束の地を目指しただ歩き続けた。そこにたどり着けばこの旅は終わる。そう信じて苦も苦だと思わずただ歩を進めた。それどころか緑が目にまぶしく、どこまでも青い空と輝く太陽がこの旅路を祝福してくれいるかのように感じた。

たどり着いたSAは真夏の日の光で輝いていた。まずはトイレを済ませ、意気揚々と目的地の方向を書いたスケッチブックを掲げる。

開始して10分が経つ。特に手ごたえはない。ヒッチハイクではこれくらいのことはよくある。なにも心配することはない。額に流れる汗を拭きながら懸命に拾ってくれる車が現れるのを待つ。

そうしていると唐突に後ろから声を掛けられた。


「おい、にいちゃん。こっちは上りだからその方向にいく車は走ってねえよ。」


一瞬何のことかわからなかった。


しかし声を掛けてくれたおじさんの顔を見ながら、徐々にその意味が分かってきた。
答え合わせをするように、そしてその答えが嘘であることを願いながら、おじさんに問い返す。

「ということは、ここで待っていても北には行けないということですか?」

驚きと初対面の人との会話だからなのか、教科書の例文のような質問になってしまった。
おじさんは当然といった表情で、道路の奥に見える丘の向こうを指さしながら言った。

「もし北に行きてぇんだったら上りの方に行くんだな。どちらにしてもここじゃ、どれだけ待っても車は来ねえ。」

絶望的で信じたくない気持ちではあるが、どうやら事実のようだ。
まだ始まってそこまで時間が経っていない中で声を掛けてくれたことは不幸中の幸いと考えるほかないだろう。

すぐに気を取り直せるはずもない中、ひとまずおじさんに礼を言いスマートフォンで地図を確認する。どうやら今まで来た道をそのまま戻って、反対側にどうにかして回らなければ行けないようだ。

足取りは重く、先ほどまで美しく照っていた太陽は牙をむき容赦なく体力を奪っていく。
どうにかもと来た場所まで戻り、のぼりのSAを目指して歩き始める。トンネルをくぐり、畑のあぜ道を抜け、いつまでも続く坂道を歩く。

辛い道のりだが着実に目的地には近づいている。そう信じて時々足を止めながら地図を確認し、歩き続けるとSAらしきものが見えてきた。
今までただののどかな景色に囲まれSAの存在に懐疑的になっていた自分には、その存在が確認できただけで小さな喜びが湧き上がってきた。

地図を拡大して侵入できるポイントを探す。しかしながらSAと自分が立っている場所が接続されているような道が地図上にはない。現実に目を戻し、あたりを見渡す。SAは自分の背丈より高いくらいのフェンスに囲まれており、人の行き来を許していないようだ。ここまで来て引き返すという選択肢はなに。ひとまず近くに寄ってよく確認してみる。

一分の隙もなくフェンスは駐車場を囲っている。遠くには旅行中の人々が昼食や休憩のために車を降りて伸びをしたり、コーヒーを片手に車に乗り込みシートベルトを締め目的地に向かおうと準備を進める姿が見えた。
囲まれているのはSAなのに、なぜかそれを遠くから眺める自分がなんだか疎外されているような気分がしてくるから不思議だ。

とにかくこの壁を越えねばこの旅は失敗終わる。なんとかして突破しなければいけない。10㎏超あるバックパックを背負って上るのは無理だろう。中の荷の配置を確認し、柔らかいものを外側に配置し、精密機器などを包むようにする。そして一番衝撃を緩和できそうな面を着地面に想定し、遠心力を利用しつつ体全体で弧を描くようにバックパックを宙に投げ出す。

一瞬宙で止まるような動きを見せた後、柔らかさと重さが同時に音を立ててフェンスの向こう側へ着地した。その姿を確認し、細い針金でできた大きな隙間に手と足先を掛けよじ登り頂点にたどり着くと、またいだ後にそのまま手を掛けて体を伸ばして体を落とした。

さっきまで向こう側だった場所はこっち側になった。どうでもいいことのようで、大事なことのような気もする。この世界ではきっとそんなことばかりで、大体のことはどうでもいい。やる気なく転がるバックパックを拾い、足はSAへと踏み出される。


次回は「6時間立ち尽くす」、「刑事訴訟されそうになる」、「覚醒!スケッチブック封印」の三本でお送りしたいと思います。











しかし、ワープゾーンを使って移動しようとなにも考えずに浮かれている僕にはとても重要な概念が欠けていた。

それは上りと下りだ。

駅からはどちらの駅にもアクセスが可能であり、僕は北上すべきなので下りのSAに向かう必要があった。

しかしとにかくSAに着けばすべては解決すると考えたハッピーボーイはなんの疑いもなく上りのサービスエリアに向かっていた。

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