「ジョーカー」という魔性の悪役を語る

この記事は俗に言う時事ネタです。かなり偏った意見です。

先日（2021/10/31）、東京にある京王線の電車内で、殺人未遂及び放火事件が起こり、ケガを負った被害者は10人以上に登り、うち１人は重体となるほどの事件でした。二次災害も多く、とても影響があった事件です。
犯人はハロウィンであったことも関係してか、アメリカの漫画である「バッドマン」の悪役ジョーカーのコスプレで犯行に及びました。容疑者として捕まった人も憧れを抱いていたと発言しているようですね。

私はこの事件についてすごく思うところがありましたので、それを書きたいと思います。

そもそも論の話、実はジョーカーに憧れて犯罪を起こすのはアメリカではそれなりの頻度で起こっています。具体的にはジョーカーが登場するバッドマン映画が世に出される際には警察が警戒をするほどです。実際に、ジョーカーの影響を受けたとされる無差別銃乱射事件も起こっているほどです。

それほどにジョーカーというキャラクターは危険であり、映画界でもジョーカーの役をやる場合にはそのキャラクターに飲まれないようにしなくていけないと語り継がれているようで、ダークナイトシリーズにおけるジョーカー役を演じたヒースレジャーさんはその凄すぎる怪演ともいえる名演技を残しましたが、その後亡くなりました。ご本人の遺族により、ジョーカー役と死についての因果関係を否定していましたが、そう言われるほどにジョーカーという役は危険だと思われていたのでしょう。

恐らくですが、ジョーカーという存在は完全なるミームとなっているのだと思います。ミームとは俗に言うジーンではない遺伝情報、思想や宗教のようなものですが、ジョーカーはそれになってしまっている。

皆さんの外見を遺伝子であるジーンが影響するように、あなたの意思決定はミームの影響を受ける。ジョーカーというミームがこの世に存在し、漂っているとしてそれを受け取った人がそれによって行動をする。恐ろしいのはこのミームは元は誰かが発信していた思想や人格が時間を経てそういう形になったのではなく、バッドマンの作者が意図して作り出した人造のミームである点は他のミームと一線を画するのではないでしょうか？

さて、ここで今回の事件やアメリカなどで度々起きるジョーカーの影響を受けたとされる事件。ここにはミームが関係しているのか？
私の答えはNOです。いや正しくは、YESと言いたくないというのが正解でしょうか？

他のミームで考えるとわかりやすいです。宗教というミームを考えた際に、すごく敬虔な信者もいれば、ライトに信じている人もいます。すべてのキリスト教徒がモーニングサービスに参加するわけでもないし、すべてのイスラム教徒がテロ思想があるわけではない。そういう意味では、こういった事件の犯人たちはジョーカーのミームの影響を受けているのでしょうが、それは非常にライトな影響なことがほとんどです。

本事件にしても、最初の動機は「死にたかったけど自殺出来ない。死刑になりたいと思った。だから、人を沢山殺せる計画が考えた」的な感じでしたけど、別にジョーカーは自分を殺したくて、人を殺しているのでしょうか？

作品によって細かな描写異なりますが、私が見たことのある映画のジョーカー、ジャック・ニコルソンさん・ヒース・レジャーさん・ホアキン・フェニックスさんの演じたジョーカーは場合によっては死にたいような発言をしていましたが、それは絶対正義であるバッドマンに殺されることでそれを揺るがしたいという自分の命を使った目的がありました。つまり、誰でもいいから殺されたいわけじゃない、自分の死を意味のあるものにしたかったわけです。

そもそも論ですが、実はジョーカーという役はかなり設定が曖昧です。日本の漫画にはあんまりない文化ですが、ジョーカーは色んな人に描かれいます。漫画や脚本を書く人によって設定は異なり、例えば、口が裂けているのも本当に裂かれている場合もあれば、メイクとする場合もあります。また裂いている場合にもそのエピソードは「妻が笑ってくれないから裂いた」「お父さんに虐待として裂かれた」のように明確な設定が決められていないというものあるのでしょうが、その真実を語ろうとしないのもジョーカーというキャラクターなのでしょう。他にも、なりあがったマフィアの１員とする設定もあれば、突然湧いた極悪人という描き方もありますし、元コメディアンっていう過去が付随する場合もありますね。

つまり何が言いたいかと言えば、ジョーカーのミームに完全に浸かっていてジョーカーが理由で犯罪を犯したら、こういう犯罪になるのか？　という話なんです。ジョーカーの殺人に対してのスタンスのみをミームとして受け入れてそれを実行に移すのは、別にジョーカーというキャラクターである必要はない。理由にするのは別の漫画の大量に殺人を犯すキャラクターでもいい。

ファンからすれば風評被害も極まりないと思うのです。キャラクターの魅力を十分に知らない人が表面だけで見て、犯罪を犯しその原作が批判を浴びるのは耐えられないと私は思います。

この事件を通して、この犯人の悪質性に言いたいことがあると同時に、ジョーカーというキャラクターを汚したのは非常に思うとことがある。
私は基本的には映画でのジョーカーしか追いかけないジョーカー（正しくはバッドマン）のライトなファンですが、それがここまで嫌悪感を感じるのなら、きっと本当のバッドマンシリーズのファンは怒り心頭なのではないでしょうか？

この記事を読んでいただけた人に伝えたいことは、犯罪が起きた際にその犯罪の実行理由になった作品があったとしても、その動悸は「その作品」ではないといけなかったのか？　本当にその作品が悪いのかを考えて欲しいということですかね。

写真：Mt.Fuji