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【PHI】 三振をしなくなった驚異の新人Bryson Stottを調査する回

いつもお世話になっております、フィリーズ担当のペンでございます。
フィリーズのルーキーBryson Stottが最近まったく三振をしていないのをご存じでしょうか。
6/22のレンジャーズ戦を最後に7/9時点で14試合51打席空振り三振をしていません。
また、この14試合の間に1度だけ見逃し三振をしていますが、その三振もStott本人がボールだと見逃した高めギリギリの球を審判がストライクと判定した不運な三振でした。

7/7Bryson Stottの見逃し三振の打席のピッチ・チャート
Baseball Savantより引用)

4/16の試合で5打数5三振をした選手とは思えないほどに短期間で急速な進化を見せていることには驚きしかありません。
今回のnoteではなぜStottが三振をしなくなったのか。statcastのデータを元に数字を追っていきます。
それでは、noteスタートです。

■ 打撃コーチ主導の2ストライク後のアプローチの変更

Stottが三振をしない打者に変貌した背景にはKevin Long打撃コーチが主導したカウントが2ストライクになった後の打席でのアプローチの変更にあります。
詳しくはMLB.comのフィリーズの番記者であるTodd Zolecki氏による以下の記事をお読みいただきたいのですが、Long打撃コーチは5月末時点でリーグ平均を下回っていた2ストライク後の打率を改善させるべくフィリーズの野手陣に以下のような指導を行います。

2ストライクになったらスタンスを広げ、スイングまでの動作を少なくしてボールをしっかり見極めて打ちなさい」

つまり、2ストライク後は三振をしないようよりコンタクトを重視したアプローチをするよう野手たちに求めたのです。
そして、その指導に1番上手く対応したのがStottだったのです。

Stottの2ストライクより前のカウントと2ストライク後のカウントの打席でのアプローチの違いを実際の映像で確認してみましょう。
まずはキャリア初ホームランとなった6/3の映像です。

この打席では初球をホームランにしていますが、オープンスタンスから大きくステップを踏んでスイングしています。

続いては6/5の劇的なサヨナラホームランの場面です。
ここでは3-2のフルカウントからホームランを放っています。

こちらの打席ではその場で軽くステップを踏んでスイングまでの動作を最小限にしているのが分かります。

■ Stottがなぜアプローチの変更に柔軟に対応できたのか

なぜStottは他のフィリーズの野手よりも2ストライク後のアプローチの変更に対応出来たのでしょうか。
これは同じラスベガス出身でありオフも一緒にトレーニングをしている兄貴分のBryce Harperの影響が大きいと考えられます。
Harperは以前から2ストライク後の打席でのアプローチを変更していました。
みなさんもHarperが2ストライクを取られた後に下の映像のようにノーステップで打っている場面を見たことがあるのではないでしょうか。

Harperと共に過ごす時間も多く野球においても多大な影響を受けている弟分のStottにとって以前からHarperが取り入れていた2ストライク後のアプローチを自身が採用することは、他のフィリーズの野手陣よりも容易であったであろうことは想像に難くありません。

■ データ面でStottの変貌ぶりを確認しよう

それでは、実際にstatcastのデータを元にStottがどれほどの変貌を遂げているのか確認しましょう。
今回は現地7/8までのStottの全打席計799球のデータを使用して分析しています。

・空振りがどれだけ少なくなったか確認する

まず、三振が減っているということは空振りも減っているであろうということでStottの全スイングの結果を見てみたいと思います。
最初にシーズン全体での結果を見てみます。

Bryson Stott 2022年のすべてのスイングの結果

シーズン全体では全スイングの内 15.9% の割合で空振りをしていることが分かります。

これがLong打撃コーチの指導があった6月以降ではどのように数字が変化するでしょうか。

Bryson Stott6月以降の全スイングの結果

6月以降の数字では空振り率が4%以上減ってその分インプレーの比率が増えています。

さらに最後に空振り三振を記録した6/22以降の全スイング結果を見てみましょう。

Bryson Stott6/22以降の全スイングの結果

空振り率が 5.4% にまで減少しています。
現在MLBを代表するコンタクトヒッターであるツインズのLuis Arraezの今年の空振り率が 7.7% 、Stottと同じルーキーで開幕時に空振りをしない打者として話題になったSteven Kwanの空振り率が 9.6% となっていますので、短期間ではありますがStottがいかにコンタクトに優れた打者に変貌しているかが分かります。
このアプローチを継続できればStottもまたMLBを代表するコンタクトヒッターになれるかもしれません。

次に下のグラフはStottの月別のスイング結果のデータです。
こちらのデータを見ても月を追うごとに空振り率が減少していることが分かります。

Bryson Stott 月別スイング結果 割合

・打球速度と打球傾向を確認する

続いてStottの打球速度と打球傾向についても確認していきます。
先ほど比較として挙げたArraezやKwanは素晴らしいコンタクトヒッターではありますが長打力という面では見劣りする点があるのは否めません。
フィリーズファンがStottに期待しているのはレンジャーズのCorey SeagerやジャイアンツのBrandon Crawfordといった長打面でも優れたよりオールラウンドに活躍してくれる選手になってくれることであるのは間違いありません。
つまり、コンタクトだけが優れていても長打力に乏しくてはフィリーズファンがStottに求めている期待値には届かないということになります。
先ほどのデータで空振りをしない打者に変貌していることは分かりましたので次に長打力に必要な打球速度やハードヒット%の数値がどのくらい伸びてきているのか確認していきます。

まずはStottの毎月の平均打球速度がどのように推移しているか確認しましょう。7月はまだ6試合分のデータしかないので参考程度だとお考えください。

Bryson Stott 月別平均打球速度 推移

平均打球速度が毎月右肩上がりで上昇していることが分かります。

次にハードヒット%(打球速度が95mph以上の打球が全打球に占める割合を表した指標)で実際にStottが強い打球を多く打てるようになったのか確認したいと思います。

Bryson Stott 月別ハードヒット推移

ハードヒット%の推移まで含めてみると4月はハードヒットの打球を打とうとしていた分スイングも荒く空振りも多かったと読み取ることができるでしょう。
一旦AAAに落ちてからはコンタクトを重視した打撃にシフト。そして、MLBでの経験が増すにつれコンタクトを重視した打撃でもハードヒットを多く打てる打者に進化してきたと言えるのではないでしょうか。

次にStottの打球の傾向の推移についても確認しましょう。

Bryson Stott 月別 打球傾向

打球傾向で見ても4月はハードヒットのライナーを打つことを強く意識していたのだと推察できます。
5月に再昇格してからはコンタクト率は改善しましたが打球に角度がつきすぎてしまいフライだけでなく意味のないポップフライの比率も大きくなっています。これは5月のハードヒット%が1番低い数値だったこととも付合しています。
打球傾向についてもMLBでの経験が増すにつれ打球の角度も段々と下がってきており良い傾向になっています。
7月はゴロの比率が高いのでこのゴロの打球がライナーになると成績も一気に伸びてくるはずです。

■ 成績が良くなるまで見守りましょう(まとめ)

アプローチを改善したことで三振をまったくしなくなりハードヒットも連発しているStottですが、7月は7/9現在で打率.115(26打数3安打)と結果が伴わない状況になっています。
しかし、Stottの打撃が指標上ではかなり良好な数字になっていることは確かです。
去年のレッズのJonathan IndiaのようにStottがシーズン途中から猛烈な勢いで打撃成績を良化させてくれることを期待しつつこのnoteを締めさせていただきたいと思います。

タイトル画像引用元:
https://www.nbcsports.com/philadelphia/phillies/bryson-stott-mlb-debut-phillies-athletics


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