メジャーリーグのGMの経歴をまとめてみよう
今回は単純な調査モノになります。
調査のキッカケは、『同じ釜の飯を食ってきたGMはチーム作りの特徴に共通点があるのだろうか?』というパッと浮かんだアイデアが元になっています。
例えば、ここ数年で強豪になりそのチーム作りが注目を浴びているヒューストン・アストロズのスタッフは、今多くのチームに引き抜かれて移籍しています。
3年前の2015年9月に当時アストロズのGM補佐を勤めていた若干30歳だったDavid Stearns氏はミルウォーキー・ブリュワーズのGMに転身、GM就任から3年後の今年2018年にはブリュワーズを地区優勝できるまでのチームにしました。
また、Stearns氏の後任でアストロズでGM補佐を勤めていた35歳のMike Elias氏はボルティモア・オリオールズの新しいGMに転身しました。今年115敗のオリオールズの再建を期待されています。
Stearns氏やElias氏は現アストロズGMのJeff Luhnow氏の下で共にアストロズがワールドチャンピオンになるまでの戦略や哲学等を考え共有してきたはずです。
そして、その戦略や哲学は別のチームになっても引き継がれているでしょうから、アストロズやブリュワーズ、そしてこれからのオリオールズのチーム作りになにかしらの共通点が見られるのではないかと思ったのです。
今回は一気にGMたちの戦略や哲学等まで考察して書くのは難しいので、まず第1弾としてそれぞれのチームのGM(一部球団社長等のポジションの人物も含む)たちの経歴をまとめてみたいと思います。
※第2弾ではGM補佐などより下のポジションのフロントのリストもまとめてみたいなかなと思っています。
今回、経歴を調べるにあたっては、MLB.comのプロフィール紹介および英語版・日本語版のWikipediaを参考に使わせていただいています。
GMたちの経歴
ボルティモア・オリオールズ
Mike Elias GM(35歳)
名門イエール大学卒の秀才Elias氏(大学時には投手としてカレッジベースボールでプレーしています)は大学卒業後にセントルイス・カーディナルスのスカウトになります。
2011年オフにJeff Luhnow氏がアストロズのGMに就任するのに伴い、Luhnow氏と共にカーディナルスからアストロズに移籍、アマチュアのスカウト部門の主任格(ディレクター)となります。
2015年9月には、GM補佐だったDavid Stearns氏がブリュワーズのGMに就任するのに伴い、後任のGM補佐に昇格します。
そして、2018年11月現職となるボルティモア・オリオールズのGM兼副社長の職につき、オリオールズの再建を担う立場となりました。
ボストン・レッドソックス
David Dombrowski 編成部門社長(62歳)
現在のメジャーリーグのGMの中でも最も古株の1人で数々のチームでGMを勤めてきた実力者です。
キャリアのスタートはシカゴ・ホワイトソックスで20代後半でGM補佐の役職までに出世します。
1987年にモントリオール・エクスポズ(現ワシントン・ナショナルズ)に移籍すると翌1988年には32歳の若さでGMに就任します。
1991年9月には1993年にエクスパンションでメジャーリーグの新チームになるフロリダ・マーリンズ(現マイアミ・マーリンズ)の初代GMとして迎え入れられます。マーリンズのGMは2001年オフまでの10年間勤め、その間に97年のワールドチャンピオンや98年のマーリンズ最初のファイアセールなどを経験しています。
2001年オフにデトロイト・タイガースの球団社長に就任、また2002年にタイガースが119敗を喫したのをキッカケに当時のGMを解雇しGMも兼務することになります。タイガース時代には2006年と2012年にリーグチャンピオンになっています。
2015年には、現トロント・ブルージェイズ編成部門副社長のBen Cherington氏に変わり、現職の編成部門社長に就任。2018年にはレッドソックスをワールドチャンピオンに導きます。
ニューヨーク・ヤンキース
Brian Cashman GM兼球団副社長(51歳)
20年以上ヤンキースのGMを務めるメジャーリーグでも最も有名なGMの1人。
大学在学中の10代後半にインターンを経験して以降、30年以上ヤンキース一筋という人物でもあります。
20年のGM期間中に4度のワールドチャンピオンを経験、最近では贅沢税に収まる金額でのチーム編成に着手したりと今までの金満で選手を購入するだけのGMではないことを証明しています。
タンパベイ・レイズ
Matt Silverman 社長(42歳)
ハーバード卒のSilverman氏は元々ゴールドマン・サックスで投資関連の仕事についていましたが、現レイズのオーナーStuart Sternberg氏がレイズを買収する際のサポートを行った関係から、投資家仲間のAndew Friedman氏(現ロサンゼルス・ドジャース編成部門取締役)と共にレイズのフロント入りを果たし、2005年には社長に就任します。レイズのフロント入り後は社長としてそして野球編成部門の中心の1人としてGMとなったFriedman氏と共にレイズをお金が無くなても勝てるチームに仕立て上げていきました。Friedman氏がドジャースに去った2014年のオフには野球編成部門のトップに就任。実質のGMとして2年間務めたあと、後任のNeander氏とBloom氏に球団編成部門を譲り、現在はまた社長に戻りレイズ全体の経営を担う立場になっています。
Erik Neander GM兼野球部門最高責任者(35歳)
ヴァージニア工科大学卒のNeander氏は2007年にインターンとしてレイズのフロントに参加して以来レイズ一筋で主に分析部門や戦略部門を担当してきた人物です。
2016年のオフにはChaim Bloom氏と共に野球部門最高責任者となり、GMのポジションに就任しています。
トロント・ブルージェイズ
Mark Shapiro 社長兼CEO(51歳)
プリンストン大学出身の秀才で、メジャーリーグに高学歴のフロントオフィスの人材が増える以前からメジャーリーグのチームでキャリアを積んできたある意味パイオニアと言っていい人物。
1991年からクリーブランド・インディアンスで働き始め、当時のGMであるJohn Hart氏の下でインディアンスの90年代の黄金時代を選手育成部門の担当やGM補佐として支えた後、2001年にHart氏の後任としてGMに就任。
チーム予算が潤沢では無くなってくる中、インディアンスを低予算ながら勝てるチームに作り上げ、2005年と2007年にはSporting News社が選出するExecutive of the Yearに選出されています。
2010年のオフには、現在インディアンスで社長を務めるChris Antonetti氏にGM職を譲り社長に就任。
2015年8月末には、長年勤めていたインディアンスを離れ、社長兼CEOとしてトロント・ブルージェイズに移籍しています。
Ross Atkins GM(45歳)
今では珍しいMLB傘下での野球選手経験のあるGM。
ウェイクフォレスト大学から1995年にインディアンスに指名され1999年までの5年間投手としてプレー。
引退後の2001年にインディアンスのフロントに転身すると選手育成部門の役職を歴任していきます。
2015年のオフには、先にブルージェイズに移籍したShapiro氏に請われてGMとして移籍。現在、メジャーリーグNo.1とも称されるファーム組織作りの一翼を担っています。
シカゴ・ホワイトソックス
Kenny Williams 上級副社長(54歳)
名著Moneyballで当時オークランド・アスレチックスのGMだったBilly Beane氏(現アスレチックス上級副社長)とトレード話で面白いやりとりしていた様子でも有名であろう名物エグゼクティブ。
メジャーリーグでも珍しいアフリカン・アメリカンのGM経験者で、またBeane氏同様外野手としてメジャーリーガーの経験もある選手上がりのエグゼクティブです。
選手引退後の1992年にホワイトソックスのフロントに転身以後、マイナーリーグの育成担当や選手育成部門の担当責任者の職を歴任した後、2000年のオフにホワイトソックスのGMに就任します。
2005年にはワールドチャンピオンチームを作りあげるなど、GMとして一定の成果を残したあと、2012年のオフにGM補佐だったRick Harn氏にGMの座を譲り、自身は上級副社長の職に付き現在に至ります。
Rick Harn GM兼執行役員(47歳)
シカゴの隣町ウィネットカ出身のRick Harn(子供の頃はご当地でもホワイトソックスではなくシカゴ・カブスのファンだったそうです)はハーバードのロースクールでMBAも取得した人物です。
ホワイトソックスでGM補佐の職などを歴任した後、2012年のオフにGM兼執行役員の職に昇格します。Chris Sale投手の放出以降チーム再建に動いており今後再建が成功するか注目されています。
クリーブランド・インディアンス
Chris Antonetti 編成部門最高責任者 (43歳)
1998年にエクスポズ(現ナショナルズ)にスカウトとしてフロント入りしたAntonettiは、翌1999年には当時スカウト部門の部長だったNeil Huntington氏(現ピッツバーグ・パイレーツGM)ら数名とインディアンスに移籍します。
その後はインディアンスで順調にキャリアを積み重ね、2001年オフにはGM補佐に、2010年オフには当時のGM Shapiro氏(現ブルージェイズ社長兼CEO)からGM職を引き継ぎます。GMとして5年間務めた後2015年オフにGM職を当時GM補佐だったMike Chernoff氏に譲り、自身は編成部門最高責任者に就任、現在に至ります。
Mike Chernoff GM(37歳)
プリンストン大学出身のChernoff氏は、学生時代にインターンとしてインディアンスのフロントに入るとそれから編成部門の主任等の職を歴任し、2010年のオフにGM補佐の就任します。2014年にはサンディエゴ・パドレスのGM職の面接を受けますが落選。2015年にGMだったAntonetti氏が編成部門最高責任者に就任するのに伴い、GM補佐からGMへ昇進しています。
デトロイト・タイガース
Al Avila GM兼球団編成部門副社長(60歳)
現在、アリゾナ・ダイヤモンドバックスに在籍しているAlex Avila捕手の父親としても有名なAvila氏はドジャースでラテンアメリカンのスカウトを担当していた父Ralph氏に続いて親子二代でメジャーリーグのフロント部門に努めている人物でもあります。
30代前半まで母校のセント・トーマス大学の野球コーチを務めていたAvila氏は、92年に新設チームのマーリンズでラテンアメリカンの育成部門としてメジャーリーグのフロントに入ります。彼はキューバ移民という出自を活かし、キューバから亡命したLivan Hernandez投手の獲得に成功するなど多くの実績を残し、2001年にはGM補佐に就任、Dombrowskiがタイガースに移籍した後の臨時GMも経験。
2002年に1年間パイレーツでGMのスペシャルアシスタントを務めたあと、元の上司Dombrowski氏がGMを務めるタイガースにGM補佐として移籍します。
2015年にはオーナーと対立しGMの職を辞したDombrowski氏に代わりタイガースのGMに就任、キューバ出身者として初めてのメジャーリーグのGMになりました。
カンザスシティ・ロイヤルズ
Dayton Moore GM(51歳)
カンザス州ウィチタ出身でロイヤルズファンとして幼少期を過ごしたMoore氏は1994年にアトランタ・ブレーブスにスカウトとしてフロント入りしメジャーリーグでの仕事を始めます。殿堂入りも果たしたJohn Schuerholz氏率いる90-00年代の黄金期のブレーブスのフロントでMoore氏は順調にキャリアを積み、スカウトや選手育成のアシスタント・ディレクター、国際スカウトのディレクター職などを歴任したあと、2005年8月からGM補佐の役職に就きます。
1年後の2006年8月には地元ロイヤルズからのオファーを受け、ロイヤルズのGMに就任します。
ロイヤルズ就任後はお金のないチーム事情の中でスカウト畑出身のMooreらしく若手プロスペクトの発掘・育成にチーム再建の道筋を見出し、2015年にはついにロイヤルズ30年ぶりのワールドチャンピオンとなるまでのチームを作り上げました。
ミネソタ・ツインズ
Derek Falvey 野球部門最高責任者 兼 上級副社長(35歳)
2007年にインターンとしてインディアンスにフロント入りしたFalvey氏はアマチュアのスカウト部門を担当したあと、戦術部門に移籍しデータ分析や戦術策定を担当することになります。2011年のオフには現ブリュワーズのGMであるDavid Stearns氏と共に戦術部門の主任ディレクターに昇格し、戦略の策定における中心を担うようになります。2015年オフにはGM補佐に昇格。
2016年のオフにツインズにヘッドハンティングされ、野球部門最高責任者 兼 上級副社長というチーム作りのトップのポジションに就任します。
Thad Levine GM兼上級役員(47歳)
1999年にUCLAでMBAを取得したLevine氏は同じ年にコロラド・ロッキーズのフロント入りし分析部門で6シーズンを過ごします。
2005年のオフにはテキサス・レンジャーズにGM補佐として移籍、レンジャーズに2016年までの11年在籍し、GMのJon Daniels氏と共にリーグ優勝2回のチームを作りあげます。
2016年のオフには、野球部門最高責任者となるFalvey氏と共にツインズにヘッドハンティングされGMに就任しました。
ヒューストン・アストロズ
Jeff Luhnow GM兼野球部門最高責任者(51歳)
メジャーリーグの世界に入る前は、マッキンゼーに務めていたLuhnow氏は"Moneyball"に影響を受けたセントルイス・カーディナルスのオーナーWilliam DeWitt Jr.氏に分析が出来る人物と請われて36歳でカーディナルスのフロントに入ります。カーディナルスではマイナーリーグや南米の野球アカデミーなどの下部組織の改革に邁進し、選手育成システムの確立に貢献します。
2011年のオフにはアストロズにGMとして移籍。アストロズでもカーディナルス時代から培った選手育成・マイナー組織の充実によるチーム再建を実施。3年連続で100敗以上を記録したチームを2017年にはワールドチャンピオンになるまでのチームに再生。今ではメジャーリーグのGMの中でも最も注目を浴びる存在となっています。
ロサンゼルス・エンゼルス
Billy Eppler GM(43歳)
2000年にロッキーズのスカウトとしてメジャーリーグのフロントに入ったEppler氏は、2004年のオフにはヤンキースに移籍。スカウト部門で実績を残し、2012年からはGM補佐としてキャッシュマンGMを支える立場となりました。
2015年のオフにはエンゼルスのGMに就任。日本では、大谷翔平選手の獲得に成功したGMとしても知られるようになってきています。
オークランド・アスレチックス
Billy Beane 野球部門上級副社長(56歳)
名著"Moneyball"の主人公として知られる現在メジャーリーグのフロントの人物の中でも別格なレベルの有名人。
元はドラフト1位レベルの将来を嘱望された選手でしたが、27歳の若さで引退しスカウトに転向。Sandy Alderson氏(今年ガン治療のためメッツのGMを辞任)の元、スカウトとして研鑽を積みます。1997年のオフにはAlderson氏の後任としてGMに就任。セイバーメトリクスを元に出塁率などに基づいたチーム作りを実践。お金のないアスレチックスでも十分に戦えるチームを作れることを証明します。
2015年のオフに18年務めたGMの職をGM補佐のDavid Forstに譲り、野球部門の上級副社長の職に就きました。
David Forst GM(42歳)
ハーバード卒のForst氏はハーバード時代はショートとしてオールアメリカンのサードチームにも選出されるほどの活躍をしましたが、ドラフト指名はされず、独立リーグでも2年間プレーしています。
2000年24歳の時に選手を引退し、アスレチックスにスカウトとして雇用されます。スカウト部門で実績を残したForst氏は2004年のオフにドジャースにGMとして移籍したPaul DePodesta氏の後任としてGM補佐に就任します。
GM補佐として長年Beane GMを支えてきましたが、2015年オフにBeane GMから職を譲られる形でついにGMに就任します。
シアトル・マリナーズ
Jerry Dipoto GM 兼 上級副社長(50歳)
今1番メジャーリーグを盛り上げるGMと言っても過言ではない名物GM。
元は8シーズン390試合も登板経験のあるリリーフ投手でした。
2000年に32歳で現役を引退すると、当時のロッキーズのGM Dan O'Dowd氏のスペシャルアシスタントとしてフロント入りします。
2003年にはレッドソックスにスカウトとして移籍、2005年にスカウト部長としてロッキーズに移籍、2006年にはダイヤモンドバックスのスカウト部門兼選手育成部門の部長に就任します。
2011年オフにはエンゼルスのGMに就任します。しかし、当時の監督Mike Sciosciaと対立し結果2015年のシーズン途中にGM職を辞任します。
2015年のオフにはマリナーズのGMに就任し、独自のトレードを乱発するチームビルディング手法でメジャーリーグを騒がせる存在になっています。
テキサス・レンジャーズ
Jon Daniels GM 兼 野球部門取締役(41歳)
Daniels氏は2001年にロッキーズのインターンとしてメジャーリーグでのキャリアを歩みだします。
2002年にはレンジャーズ入り、当時のGM John Hart氏をアシスタントを務めるようになります。2004年7月からはGM補佐に就任、2005年10月にはHart氏からの進言もあり28歳という若さでGMに就任します。
Josh Hamilton外野手やAdrian Beltre三塁手らの獲得などでチームの立て直しに成功し、2010年レンジャーズとして初のリーグ優勝・ワールドシリーズ進出を果たすと、翌年2011年にもワールドシリーズ進出と大きな成功を収めます。
アトランタ・ブレーブス
Alex Anthopoulos GM 兼 上級副社長(41歳)
カナダ・ケベック州出身のAnthopoulos氏は2000年に地元のエクスポズのインターンとして働き始め、2002年までスカウト関連の仕事を担当します。
2003年にブルージェイズに移籍し、2005年オフにはGM補佐に、2009年のオフには解雇されたGMのJ.P. Ricciardi氏に代わりGMに就任します。
GM就任後は積極的なトレードで大物選手(Mark Buehrle投手、Jose Reyes遊撃手、R.J. Dickey投手など)を続々と獲得し、チームを強化していきます。2015年には、シーズン前にJosh Donaldson三塁手、シーズン中にはDavid Price投手などを獲得し遂にチーム22年ぶりの地区優勝を達成します。
しかし、その15年のシーズン中にインディアンスより移籍したShapiro社長兼CEOと方針が合わずオフにGMを退任、ドジャースの野球運営部門主任担当に就任します。
17年のオフには南米のアマチュア選手との不正契約が発覚しメジャーリーグから永久追放されたJohn Coppolella氏に代わり、ブレーブスと4年契約でGMに就任しブレーブスの再建を担っています。
マイアミ・マーリンズ
Michael Hill 野球部門社長(47歳)
シンシナティ出身のキューバ系アメリカ人のHill氏はハーバード大出身ながらドラフトで指名されマイナーリーガーの経験もある少々特殊な経歴の人物です。
マイナーリーグで3年プレーした後の1995年にまだメジャーリーグに加入する準備をしていたデビルレイズ(現レイズ)のフロント入り。5年間スカウト・選手育成部門のアシスタントとして従事します。
99年オフにはロッキーズに移籍。選手育成部門の主任(ディレクター)を務めます。
02年オフにはマーリンズに移籍。GM補佐などを歴任したあと、2007年のオフにGMに就任。2013年のオフに野球部門社長となり一旦GM職を退きますが、2016年から野球部門社長の役職ながらGM職も再度兼任しています。
ニューヨーク・メッツ
Brodie Van Wagenen GM 兼 上級副社長(44歳)
このオフにメッツのGMに就任したVan Wagenen氏は今までアメリカの大手エージェンシーのCAAの野球部門で選手の代理人(エージェント)をやっていたという変わり種です。
担当している選手にYoenis Cespedes外野手やJacob deGrom投手、Tim Tebow外野手などメッツに在籍している選手も多く、そこからオーナーであるFred Wilpon氏との親交が深まり今回のGM就任になったようです。
GM就任後は早速チーム強化に邁進し、元々代理人を担当していたRobinson Cano二塁手と今年57セーブのEdwin Diaz投手をマリナーズから獲得しています。
フィラデルフィア・フィリーズ
Andy MacPhail 球団社長(65歳)
祖父、父とメジャーリーグのエグゼクティブとして殿堂入りを果たしているメジャーリーグの名門エグゼクティブ一家の三代目。
MacPhail氏本人もカブスのマイナーリーグの経営から始まり、アストロズでのGM補佐を経験したあとでツインズでGMに就任。ツインズの1987年と1991年のワールドチャンピオンにGMとして貢献。
ツインズのあともカブスの球団社長 兼 CEOとして2003年の快進撃やオリオールズの野球部門社長として近年のポストシーズン進出の基盤づくりなどに貢献してきました。
2015年の7月に殿堂入りの名GMとして知られるPat Gillick氏に口説かれてフィリーズの再建を図るべく球団社長に就任しています。
Matt Klentak GM 兼 野球部門副社長(38歳)
Klentak氏は大学卒業後の2003年にロッキーズの野球部門で1年働いたあと、MLB事務局の労基部門で4年間勤務します。
その時に知り合った当時オリオールズの野球部門の社長だったMacPhail氏に誘われ、2008年にオリオールズの野球部門のディレクターに就任します。
2011年のオフにはエンゼルスのGM補佐に就任、2015年のシーズン途中に現マリナーズGMのDipoto氏が辞任した後は臨時GMを務めました。
そして、2015年オフにフィリーズGMに就任、またMacPhail球団社長と同じチームでチームの再建を担うことになりました。
ワシントン・ナショナルズ
Mike Rizzo GM 兼 野球部門社長(58歳)
マイナーリーガー経験もあるRizzo氏は、イリノイ大学のアシスタントコーチを務めた後、ホワイトソックスのスカウトとしてメジャーリーグのフロントの道を歩み始めます。
レッドソックスのスカウトを経て、メジャーリーグのダイヤモンドバックスのフロントに参加、スカウト部門のディレクターとして2006年の途中まで務めます。
2006年の途中ナショナルズにGM補佐 兼 野球部門副社長として移籍します。2009年のシーズン前に前GMのJim Bowden氏がトラブルにより解雇されると臨時GMに就任。8月には正式にGMとなりました。
シカゴ・カブス
Theo Epstein 野球部門社長(45歳)
レッドソックスのバンビーノの呪いとカブスのヤギの呪いを破った男として知られる現在のメジャーリーグのフロントでも屈指の有名人。
名門イェール大在籍時からインターンとして3年間PR部門で勤務、イェール大卒業後もそのままPR部門のアシスタントとしてオリオールズで勤務を始めます。
オリオールズの球団社長だったLarry Lucchino氏に引き抜かれ、彼とともにパドレスに移籍すると選手育成部門のディレクターに転身、当時のパドレスGM 故Kevin Towers氏からGMとしての極意を伝授されていきます。また、この時期にLucchino氏のススメでサンディエゴのロースクールで法律を勉強。カリフォルニア州の弁護士資格を取得しています。
2001年のオフにLucchino氏がレッドソックスのCEOに就任するのにともない、またLucchino氏と共にレッドソックスに移籍。翌2002年のオフに若干28歳の若さでGMに就任します。2004年にはシーズン中に当時のレッドソックスの看板選手だったNomar Garciaparra遊撃手を放出して守備の改善を図るという大胆なトレードを実施、結果見事チーム86年ぶりのワールドチャンピオン獲得に貢献しました。
2007年にも再度ワールドチャンピオンを経験すると、2011年のオフにシカゴ・カブスに野球部門の社長として移籍。以前、自身の下でアシスタントGMを務め、当時パドレスのGMをしていたJed Hoyer氏を引き抜きカブスのGMに就任させます。
カブスでは打者を中心としたプロスペクトの育成を実施、2016年にシーズンMVPのKris Bryantらをドラフト・海外FAで獲得・育成に成功し、16年にカブスでも108年ぶりのワールドチャンピオンになりました。
Jed Hoyer GM 兼 野球部門副社長(45歳)
Hoyer氏は28歳でレッドソックスのフロント入りするまでは、大学の事務局で働きながら、大学の野球のコーチなどをするなどしていました。
2002年にレッドソックスのフロント入りするとEpstein GMのアシスタントという立場で働き始めます。2005年オフにはアシスタントGMに任命されます。
2009年オフにはパドレスのGMに就任。Adrian Gonzalez一塁手のレッドソックスへのトレードなどをまとめ、パドレスの再建に着手していましたが、2011年オフにレッドソックス時代の上司であるEpstein氏がカブスの野球部門の社長に就任したのに伴い、引き抜かれる形でカブスのGMに就任します。カブスのGMに就任後はEpstein氏や共にパドレスから移籍したアマチュアの発掘や選手の育成部門担当のJason McLeod氏らとともに打者中心のプロスペクトに発掘・育成によるチーム再建を行い、2016年にカブス108年ぶりのワールドチャンピオンとなるチームを作りあげました。
シンシナティ・レッズ
Dick Williams 野球部門社長(47歳)
レッズの株主でもあり経営部門にも関わっているWilliams家の一員であるWilliams氏はヴァージニア大学を卒業後、ジョージ W.ブッシュ氏の大統領選の選対事務所で勤務などを経て、2006年にレッズのフロント入りし野球ビジネス部門のデイレクターとして働き始めます。2014年オフにはアシスタントGMに就任。2015年オフにはカーディナルスの90年代後半以降の常勝チームとなる礎を築いてきた名GM Walt Jocketty氏が勇退することに伴い、GMに就任しました。主力選手との安価での長期契約を上手くまとめるなど元々ビジネス関連の専門だった特徴を活かしレッズの再建を着々と行っていましたが、2018年のシーズン中にGMの座をアシスタントGMのNick Krall氏に譲り野球部門社長としてより全体的な立場からレッズのチーム作りを担う立場になりました。
Nick Krall GM 兼 野球部門主任責任者(41歳)
Krall氏は2001年にアスレチックスのフロント入りし2年間野球部門で従事します。
2003年にはレッズに移籍しスカウトを勤めます。2008年オフには野球部門のアシスタントディレクター、2014年オフに野球部門のシニアディレクターなどを歴任した後、2015年のオフにアシスタントGMに就任します。2018年には、GMのDick Williams氏が野球部門に就任するのに伴いGMに昇格しレッズのチーム再建の先頭に立つ立場になりました。
ミルウォーキー・ブリュワーズ
David Stearns GM(34歳)
ハーバード卒のStearns氏は大学卒業後の2007年に1年メッツの野球部門とアリゾナ秋季リーグの運営部門に従事したあと、2008年にMLB事務局入りし3年間労使協定の策定や年俸調停制度部門のマネージャーとして勤めます。
2011年に1年インディアンスでデータ分析などを行う野球部門のディレクター職を経て、2012年にアストロズにアシスタントGMとして移籍。Luhnow GMと共にアストロズの再建の基礎作りを行います。
2015年の9月にはブリュワーズのGMに就任。ブリュワーズでも順調にチーム再建を行い2018年には地区優勝を成し遂げます。
ピッツバーグ・パイレーツ
Neil Huntington GM 兼 球団副社長(49歳)
1992年にエクスポズ(現ナショナルズ)のスカウトとしてフロント入りすると1995年には選手育成部門のアシスタントディレクターに昇格し当時育成に定評があったエクスポズでその手腕を発揮していきます。
1998年には選手育成部門のディレクターとしてインディアンスに移籍します。2002年にはアシスタントGMに就任。以後はGMの次のポジションとしてインディアンスのチーム作りの屋台骨を支える存在になっていきます。
2007年オフに長年負け越しを続け低迷していたパイレーツのGMに就任。パイレーツではドラフトやトレードによるプロスペクトの育成や後に『Big Data Baseball』という本でも有名になる科学的分析による戦略をClint Hurdle監督と共に実施していき、2013年ついにパイレーツ20年ぶりの勝ち越しを達成、2013年から2015年まで3年間ポストシーズンに進出するまでの成功を収めます。
セントルイス・カーディナルス
John Mozeliak 野球部門社長(49歳)
Mozeliakは90年代後半からの常勝カーディナルスをずっとフロントで支えている重要人物です。
彼は1993年に新設チームのロッキーズの野球部門の一員としてキャリアをスタートします。
1995年にはカーディナルスに移籍。スカウト部門のアシスタントとして働き始めます。スカウト部門で順調に昇格、スカウト部門のディレクターになっていた1999年, 2000年には後にチームを代表するスターとなるAlbert Pujols一塁手とYadier Molina捕手をドラフトで指名し、さらに評価を上げていきます。
2001年からは野球部門全体のディレクター職、2003年からはアシスタントGMと徐々に役職もステップアップしていき、2007年のオフにはGM兼球団副社長に就任。以降10年以上野球部門のトップとしてカーディナルスのチーム作りを進めていきます。
2017年には新設ポジションの野球部門社長に就任し、GMのポジションをアシスタントGMだったMichael Girsch氏に譲っています。
Michael Girsch GM兼野球部門主任責任者
大学卒業後、主要コンサルティングファームの1つであるボストン・コンサルティング・グループで格付け部門で働いていたGirsch氏は、2005年にMLBでの職を求めて、MLBのドラフト指名を格付けした学術論文を作り、各チームに送ります。
その論文が当時カーディナルスのアシスタントGMであったMozeliak氏の目に止まり、2006年にアマチュアスカウトのコーディネーターとして採用されます。2008年には新設のBaseball Development部門のディレクターに就任。最新のデータを使った解析を行っていきます。2011年にはアシスタントGMに就任。2017年のシーズン前にはGMに就任しています。
アリゾナ・ダイヤモンドバックス
Mike Hazen GM 兼 球団副社長(42歳)
Hazen氏はアイビーリーグの名門プリンストン大学出身で大学ではプリンストン・タイガースの外野手としても活躍。パドレスにドラフト指名され2年間マイナーリーグでプレーします。
選手引退後は、2000年にインディアンスにインターンとして加入、インディアンスではスカウト部門や選手育成部門を担当。この時期に後にブルージェイズやレッドソックスの監督を務めるJohn Farrell氏の下で働いています。
2006年にはレッドソックスに移籍、選手育成部門のディレクターに就任します。2011年にはスカウト・選手育成部門の主任に、2012年にはアシスタントGMにと順調にステップアップしていきます。2015年9月にはレッドソックスのGMに就任しますが、1年後の2016年オフにダイヤモンドバックスへと移籍。GM兼球団副社長に就任します。
コロラド・ロッキーズ
Jeff Bridich GM 兼 球団副社長(41歳)
ハーバード出身のBridich氏は大学卒業後、MLB事務局で4年間従事します。
2004年のオフにロッキーズに移籍。野球の戦術や選手の契約関連など様々な職種を担当していきます。
2011年からは選手育成部門のシニアディレクターに、2014年オフにはGMに就任し、近年のロッキーズの躍進に貢献しています。
ロサンゼルス・ドジャース
Andrew Friedman 野球部門社長(42歳)
Friedman氏は大手投資銀行のベアー・スターンズなどに勤めていましたが、新興のベンチャーキャピタルに勤めていた2003年投資家仲間のMatt Silverman氏らと現レイズのオーナーStuart Sternberg氏がレイズを買収のサポートを行った関係からレイズのフロント入りを果たしました。
2004年から野球部門のディレクターを勤めたあと、2005年のオフに若干28歳の若さでGM兼球団副社長のポジションに昇格します。
Friedmanの下で再建されたレイズは2008年初のポストシーズン進出を果たすと共にワールドシリーズに進出、以降もお金のないチーム事情の中で3度ポストシーズンに進出し、メジャーリーグを代表するGMになっていきます。
2014年のオフには5年3,500万ドルという大型契約でドジャースに移籍し野球部門社長に就任します。ドジャースに移籍すると当時アスレチックスのアシスタントGMだったFarhan Zaidi氏をGMとして獲得。また、元パドレスのGMだったJosh Byrnes氏もフロントの一員として迎えます。
彼らは2015年の時点で3億ドルにまで膨れ上がっていたドジャースの選手総年俸の圧縮を行うと共に予算を圧縮しながら勝てるチームへとチームを再構築していきます。その結果、2017年, 2018年と2年連続でワールドシリーズに進出できるチーム作りに成功。Friedman氏もレイズ時代に続いてドジャースでもワールドシリーズに進出することになりました。
サンディエゴ・パドレス
A.J. Preller GM 兼 球団副社長(40歳)
Preller氏はコーネル大学卒業後にフィリーズのインターンとしてMLBのフロント入り、その後MLB事務局で労使関係の部門に従事を経て、ドジャースのスカウト部門で3年間勤務します。
2004年レンジャーズにスカウト部門のディレクターとして移籍(ちなみレンジャーズのGM Daniels氏とは同じコーネル大学で学生の頃から友人の関係)すると、10年間スカウト部門の中心としてレンジャーズのプロスペクト育成に貢献します。2013年のオフにはアシスタントGMに昇格。
2014年8月にシーズン中に解雇された前GM Josh Byrnes氏に代わり、パドレスの新しいGMに就任します。就任した2014年のオフには、コンテンダーになるために積極的なトレードを実施。獲得したMatt Kemp外野手からそのルックスと大胆なトレードで話題を独占したことから『ロックスター』という愛称をつけられました。しかし、2015年パドレスは低迷。Preller氏は獲得した主力選手たちを改めて放出。レンジャーズ時代から定評のあるスカウティング能力を武器に改めてパドレスのマイナーを整備。今ではメジャーリーグでもトップクラスのプロスペクト集団を築き上げています。
サンフランシスコ・ジャイアンツ
Farhan Zaidi 野球編成部門社長(42歳)
「Moneyball」に感化されたZaidi氏はアスレチックスの分析部門に応募、セーバーマトリックス部門のアシスタントディレクターとして採用されます。
その後、順調にアスレチックス内で昇格し、2009年には野球編成部門のディレクター、2014年にはアシスタントGMに昇格します。
2014年オフにはドジャースの野球編成部門社長に就任したAndrew Friedman氏に誘われ、GMとしてドジャースに移籍。ドジャースの選手総年俸の圧縮とチーム再建をFriedman氏らとともに行い、2017年・2018年と連続でワールドシリーズに進出を果たします。
2018年今年のオフに、低迷が始まったジャイアンツの再建を担うべく野球編成部門社長という立場でライバルのドジャースから移籍。Zaidi氏による新たな再建がどうなるか注目を集めています。
Photo by Keith Allison
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