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【PHI】 Joe Girardi解雇についてのもろもろの雑感
お世話になっております、フィリーズ担当のペンでございます。
現地時間6/3の早朝にフィリーズのJoe Girardi監督が解雇され、暫定の臨時監督としてベンチコーチのRob Thomsonが昇格することが発表されました。
本編をお読みいただく前にお断りしておきたいのは、私のGirardiに対しての評価がかなりマイナス寄りであることをご理解しておいてもらいたいということです。
Girardiの前のフィリーズの監督であり現サンフランシスコ・ジャイアンツの監督であるGabe Kaplerの解雇に対してはかなり否定的な見解を持っていましたし、その後の監督選出過程での候補一覧の中では現ニューヨーク・メッツの監督であるBuck Showalter一択という主張でした。
そのせいもあり、Girardiが監督に採用されてから一貫してGirardiに対して否定的なスタンスを取ることが多かったと思います。また、素人目で見ても選手起用に対して謎な部分が多すぎたのもこの否定的なスタンスをさらに強くしたように考えています。
さて、ある程度私の視点にバイアスがかかっていることを前提としてお断りした上でこのnoteではなるべくフラットなスタンスで今回のGirardi解雇についてのnoteを書いていきたいと思います。
あと、私の悪癖ですが最後にちょっと毒を吐きます。
それでは、noteスタートです。
■ John Middletonオーナーの人事決定のタイミングに対する批判とその被害者の1人となったGirardi
まず、今回のGirardiの解雇に対して1番批判すべき人物はフィリーズのオーナーであるJohn Middletonであるということをご理解していただきたいと思います。
以下で、Middletonがオーナーの代表に就任後の野球部門のフロントのトップと監督の採用と解任を時系列でまとめていきます。
・John Middleton期の主要人物の採用・解任時系列
2015/6/29 Andy MacPhailを野球部門のトップに採用
2015/10/26 Matt KlentakをGMに採用
2017/9/29 Pete Mackaninの監督退任を発表
2017/10/30 Gabe Kaplerを監督に採用
2019/10/10 Gabe Kaplerを解雇
2019/10/24 Joe Girardiを監督に採用
2020/10/3 Matt Klentakを解雇
2020/12/11 Dave Dombrowskiを野球部門のトップに採用
2020/12/22 Sam FuldのGMへの昇格を発表
2022/6/3 Joe Girardiを解雇、Rob Thomsonが暫定監督に昇格
Middletonはまず当時オリオールズの再建に貢献したAndy MacPhailとMatt Klentakをフィリーズの野球部門のトップとして採用し、フィリーズの再建を託します。この時点では再建期ということもあり、2015年途中から監督に昇格したPete Mackaninは続投となります。
2017年オフ、勝負の時期に入ろうとした段階でMackaninはお役御免となり、Middletonたちは年齢も若くデータ面にも精通しておりドジャース内での仕事で評価を挙げていたGabe Kaplerを監督に採用します。
ここまでは再建の過程での人事としては何も問題なかったと思います。
問題はここからです。
2019年オフに成績不振などを理由にKaplerのみが監督職を解雇されます。
この時点でMacPhailとKlentakはその職を維持し、その体制化でGirardiが監督として採用されたわけです。ここが最大の問題だと思います。
フィリーズと先に契約し再建期を担い、Kaplerの採用にも関わったMacPhailとKlentakに責任を取らせずにKaplerにだけ責任を取らせた時点で人事としてはチグハグと言えるでしょう。
Kaplerを切るならその時点でMacPhailとKlentakも切るべきだったのは当然の話でしょう。
さらに翌2020年のオフ、ついにKlentakが解雇され、Dave Dombrowskiが野球部門のトップに採用されます。MacPhailはフィリーズに残りましたが野球部門トップの権限を奪われています。
ここで問題となるのは、今回解雇されたGirardiです。
Dombrowskiからすれば、前政権化で採用された監督なわけです。
Dombrowskiは2021年のオフシーズンに入るまでフロントも含めフィリーズ内の人材の評価をするため、ほぼ人事を凍結していました。
その方針はGirardiにも適用されていたと見るべきでしょう。
Dombrowskiからすれば、自身の政権下でのフィリーズのフィロソフィーに合わない旧政権下で採用された現場のトップであるGirardiを切るタイミングを見極めていたのは今回の動きからも明らかだったと思います。
そういう意味でMiddletonの人事のチグハグさの割を食った最大の人物がGirardiと言えると思いますし、その点については同情すべきだと言えます。
■ Girardiのブルペン運用という問題
この点に関しては私がtwitter等で嫌になるほど書いてきたのでもういいよと思われている方もいらっしゃると思いますが、Girardi解雇の前には現地でもこの問題に対する話題が活発化していましたし、Girardi解雇の最大の要因となったのはこのブルペン運用の下手さに起因しているだろうと考えていますので改めてこのnoteで取り上げたいと思います。
いろいろとデータをまとめているところでGirardiの解雇が起こってしまったので今回は詳しくデータをまとめずにこの批判を展開するのをお許しいただきたいと思います。
まず、2020年の短縮シーズンでフィリーズブルペンが記録的な酷い成績を叩き出したことは大きく話題となりましたので皆さん覚えていらっしゃるかと思います。
そして、昨年2021年もブルペンはリーグ下位の成績に終わりました。
2021年のブルペンを月間別に見ていくと4月はリーグ下位ながらも次第点の成績、5月と6月はリーグ最下位クラスに低迷、7月・8月はRanger Suarezの驚異的な活躍や故障でここまであまり登板をしておらず身体がフレッシュな状態だったArchie Bradleyの好成績などがありリーグ中位の成績に回復、そして肝心な最終盤の9月でまたブルペン成績はリーグ下位に低迷しています。
上記で長めに書きましたが、簡単に書くとブルペンの起用数が増えてきて疲れが溜まってくるタイミングで見事にブルペンの成績が落ちているのです。つまり、Girardiにはブルペンのマネジメントをする能力に問題があったと言っていいと思います。
それは今年2022年も同じであり、4月はリーグ中盤だったブルペン成績が5月に入りリーグ下位へと低迷しています。結局この3年間同じ轍を踏み続けたGirardiのブルペンのマネジメント能力に「NO」が叩きつけられた結果が今回の解雇に繋がったのだと思います。
■ 守備を軽視した補強をしたフロントの責任をGirardiになすりつけたという批判に対する反論
すみません、ここから毒を吐きます。
今回のGirardi解雇の件で「守備を軽視した補強をしたフロントの責任をGirardiになすりつけた」という批判をある程度見かけます。
まったくのナンセンスだと思います。
まずは野球で勝敗に1番相関が高い数字は得失点差です。ご存知の方も多いと思いますがピタゴラス勝率という得失点差を元にした本来そのチームが挙げられるであろう勝敗を計算するセイバーメトリクスの有名な指標も存在します。
フィリーズは本日6/3時点で実際の勝敗は23勝29敗ですが、得失点差は+11でありピタゴラス勝率上は27勝25敗です。(本日6/3に10-0で大勝したというのはありますが)
実際にピタゴラス勝率の勝敗と実際の勝敗が大きく乖離することは度々起こりますが、その要因に守備の酷さが大きく関係するなんて話は聞いたことありません。
守備を軽視したチームを批判したいという己の主張のためにGirardiの解雇の問題を絡めて主張しないで欲しいですね。
実際に今のところフィリーズほど大きく騒がれていませんがフィリーズ並みに守備の酷いチームが1チーム存在します。
それはサンフランシスコ・ジャイアンツです。
ジャイアンツはDRSという守備の指標で現在6/3時点でフィリーズよりも悪い数字を記録していますが、得失点差は+27で勝敗は28勝23敗と貯金5の成績を残しています。
つまり、今回の件で守備を軽視したフィリーズのフロントを攻めようとするならジャイアンツもフィリーズのように低迷していないと説明がつかないわけです。
分かりやすい批判をしたくなる気持ちもわかりますが、そういう批判に対してはこのようにしっかり反論させてもらいたいと思います。
■ 最後に
今回は突然のGirardi解雇に対しての急ぎでnoteを書かせていただきました。
また、時間がある時にGirardi監督時の振り返りをしっかりデータも交えてしたいと思います。
最後に毒を吐いたのはお許しいただきたいと思います。
それでは、次回こそ5月のまとめnoteを書きます。