ぜつぼうのくんれん
二年前に書いた自作戯曲からの引用。
大学に入って最初の一年、僕は絶望することに専念した。その試みは最初からうまくいかないとはっきりしていたので、僕は絶望を持つことにも絶望していたし、まあ、いわば絶望的に絶望していた。だって完璧な絶望なんてありっこないんだもの。完璧な絶望? ああ、どこかの作家がそんなこと言っていたかもしれない。
完璧な絶望があるならぜひ一度お目にかかりたいものだ。完全黒体、完全な真空、完全で息もできない。僕の日々にはカタルシスが存在しない。不完全な僕は不完全に呼吸する。不完全な世界は不完全な時を刻む。不完全な今日は不完全に間延びして、昨日みたいな明日が毎朝僕のベッドにもぐりこんでくる。
太陽が昇って沈む。また昇って沈む。繰り返し、繰り返すことの繰り返し。そうして、僕は二十歳になった。なっちゃった! 中止になった成人式、別に会いたい人なんていなかったけど、あると思っていたものが直前で消えちゃうのは砂漠の蜃気楼みたいでちょっと変な気持ちだ。世界はひどく不均質な媒質でできているから音も光もまっすぐには進まない。もちろん僕の人生も。
二十歳になっても大したことは学べなかった。覚える速度より、忘れる速度のほうが速いくらいだ。いつかその日が来た時、僕は忘却に追い越されるだろう。
そして、それからの二年は瞬きの速さで過ぎ去った。僕は何か一つでも成し遂げただろうか。僕はいったい何をして生きてきたんだ。あまりに多くの時間を空費してしまった気がする。僕に残された時間はどれくらいあるんだろう。
ああ、でもね、最近分かったこともあるんですよ。なに、特別なことじゃない、世界は案外不完全だってこと。僕が薄暗い部屋の片隅で無意味な絶望の訓練をしている間、世界はもっと無意味な無意味そのものの訓練をしている。
まあそんなことを深夜、居候先の部屋のベッドで賞味期限切れのフルーツグラノーラを、これまた賞味期限切れの牛乳に浸して食べながら僕は考えていた。なるほど、僕の世界も、こいつと同じでもう賞味期限切れなのかもしれない!