目隠し積分
この前、久々に大学に友達ができた。あまりに久々だったので私はそのことを色々な人に自慢したものだ。それでこの間、彼と一緒にご飯を食べていたらなんの流れだか忘れたけれど積分の話になった。
「例えばそうだな、cos³xsin²xの不定積分は?」
と彼が言った。これが最初の問題だ。私は直ぐに計算に取り掛かった。勿論暗算である。紙に書いて計算するのは容易い(この問題は数Ⅲのベーシックな問題なので理工系の人なら一度は解いたことがあるはずだ)が暗算となると案外難しい。この問題のポイントは、ニ種の三角関数の指数の片方が奇数になっていることだ。奇数・奇数のペアのときは何も考える必要がないが、奇数・偶数のペアならば偶数の方の三角関数を置換するべきである。そうすれば、置換積分によって多項式的に解くことができる。ちなみに偶数・偶数のペアだと最悪だ。グラフとしては偶関数になっていい性質をもつが、積分しようとすると恐ろしい計算が待ち構えている。それを見越して奇数・偶数のペアの問題にしてくれたらしい。
《解法》
sinx=uと置換すれば、
cosxdx=du
従って、cos²x=1−sin²xに注意すれば、
cos³xsin²xdx=(1-u²)u²du=(u²−u⁴)du
積分したものをIとすれば、
I=u³/3−u⁵/5+C=sin³x/3−sin⁵x/5+C
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45秒くらいで解けた。久々にこういう遊びをすると案外楽しい。言うまでもなく、こんなもので数学の能力が測れるわけではない。これは数学を使ったただのパズルである。このパズルの本質は暗算ということにある。暗算ともなると、例えば最後I=u³/3−u⁵/5+Cということころまで出てきたときにsinx=uと置いたのを忘れてしまったのではいつまでも答えが出ない。小さなタスクを脳に一時的にストックするこの能力はルービックキューブを解いたり、チェスの手を読んだりするのに似ている。そういえば高校の頃、よくこうやって友達と問題を出し合ってその場で解いた。自分は本当に理系大学に進学してしまったんだと、当たり前のことを思い出す。