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笠羽流雨/かさばるう
2021年12月23日 16:31
この小説の最大の特徴は、その語りの構造に見ることができる。幻想小説として、また奇怪小説として、『高野聖』が他の作品と一線を画する点は、この小説が単に奇怪で幻想的な対象を描くだけでなく、それ自体一個の奇怪な造形物として完成しているという点だ。三重の入れ子構造、回想を用いた時間の多重性を活用し、作者は読者を幻想世界に導く巨大なからくりを作り上げている。その構造の壮麗で複雑であるがゆえに、読者はリアリテ