ココナラ第一号社員が38歳でサンフランシスコでの起業を目指すまで
はじめまして。
サンフランシスコ(シリコンバレー)で起業を目指している石原龍(いしはらりゅう)と申します。
今年8月にサンフランシスコにある日本人起業家シェアハウス「テックハウス」に入居し、三ヶ月が過ぎました(いまはビザの関係で一時帰国中)。
まだまだこれからな自分ですが、10年以上日本のスタートアップにどっぷり浸かってきた自分が、どのような経緯でアメリカでの起業を志すことに至ったのか、自分のキャリアを振り返りながら綴りたいと思います。
この記事が、世界でチャレンジする起業家を増やす一助になると嬉しいです。
ココナラ時代
自分がスキルマッチングサービス「ココナラ」を運営するココナラ社にジョインしたのは11年前、26歳のとき。第一号社員として、サービスリリース半年後に飛び込みました。
(それまでは日米でバスフィッシングのプロトーナメントに全力を注いでました。これについては長くなるのでまたの機会にw)
いまでこそ社員は200名を超えましたが、当時は創業メンバー3人と私、プラス業務委託のエンジニアさんというとても小さな組織。土日も祝日も関係なく、朝から晩までサービスのグロースに全てをかけていました。
私ができたてほやほやのスタートアップを選んだ理由は「自分も起業したかった」から。ただ当時はIT分野の知見や組織マネジメントの経験もなかったので、「一年くらい」の軽い気持ちでココナラで経験を積もうと考えていました。
しかしいざ飛び込んでみたら毎日の仕事が楽しいこと。ココナラというサービス、そして南を始めとする創業メンバーの魅力に惹かれ、気づけば11年が経過していました。
入社当時はカスタマーサポートなどの業務の中心でしたが、最終的にはマーケティング部門全体を統括するようになりました。
サービスの立ち上げから11年、今では500万人を超える方々にココナラを使っていただけていること、そして人々がスキルを活かして活躍できる場を作る一助になれたことは、自分にとって大きな誇りです。
MBAチャレンジ時代
ココナラ入社時からのマイルストーンの一つであったIPOを経て、個人として次のチャレンジを考えるようになりました。それが「起業」。
そんな思いをなんとなく妻に伝えると、「だったらアメリカでやれば?」の一言。「なんで?」と聞くと「市場も大きいし面白そうじゃん」と。(嫁ブロックならぬ、嫁プッシュです(笑)。妻は日本の某IT企業で新規事業の開発を担当しています。)
正直それまでアメリカでの起業なんて考えたこともなかったのですが、妻からアメリカで挑戦するテックハウスコミュニティの方々のブログを紹介され、こういう選択肢もあるんだなと気付いたのでした。
ただ、そのとき起業のステップとして選んだのは「アメリカMBA」でした。20代のころからなんとなく憧れがあったのと、年齢的にもラストチャンスではあったので(当時35歳)、一念発起、MBA受験を決めました。
ただ、受験勉強は本当に辛かった。飲み会のお誘いを全て断わり、業務時間以外はテストのスコアメイクのためだけに時間を使う日々。最終的に2年半かけて準備し、第一志望だったスタンフォード大学と他何校かを受けました。
結果スタンフォード大学は不合格だったものの、狭き門である一次試験を通ることができました。これは3年前にTOEFLが40点台だった自分からすれば奇跡的なこと。「あのスタンフォードが自分のキャリアに興味を持ってくれた」というのは大きな自信になりましたし、アメリカでの起業をもう一歩現実的に考えるきっかけになりました。
なぜテックハウスに入居したのか
第一志望には落ちたものの、サンフランシスコにある他校からは合格をもらい、実際に入学手続きを進めていました。
ただ入学後の資金計画を作っている中で、「超高額の授業料&生活費を払ってまで第一志望ではない学校に行く必要があるのか」と、ふと疑問に思う瞬間がありました。
そんな中、大きな転機となったのがキヨさんの提案でした。
当時私は面識がなかったのですが、妻が2023年に会社としてテックハウスの見学に訪れ、キヨさんと知り合っていました。
妻がキヨさんにサンフランシスコでの家探しについて尋ねてくれていたところ、私がアメリカでの起業も考えているという話になったようで、キヨさんから「それなら一度テックハウスに滞在してみなよ、こっちでの起業がどんなものかわかるよ」と一言。
先述のように、MBAに行く意義について少し疑問を持ち始めていた自分は、「これも何かの縁だ」と即座にテックハウス入居を決めました。
(ちょうどこのタイミングでテックハウスが新規入居者を募集していこと、また多数の入居希望者の中から採用していただけたのは本当にラッキーだったと思います。)
いざ、テックハウスに入居
2024年8月末に11年間のココナラ生活にピリオドをうち、最終出社日の翌日にサンフランシスコに向けて発ちました。
アメリカは何度か訪れていたものの、初めてのサンフランシスコ。そして最近は治安が悪いと聞いていたので、サンフランシスコ国際空港からおそるおそる地下鉄に乗り、日本人街にあるテックハウスに辿り着きました(今思うとそんなビビる必要はなかったと思います)。
テックハウスの最初の印象は「めちゃくちゃおしゃれな家」。外見はまるでドラマの「フルハウス」に出てくるようなビクトリア様式の邸宅。また、日本人街だからか電柱に日本語のポスターが貼ってあったり、何かほっとしたのを覚えています。
私が入居したタイミングで、私含め新たに4人が入居することに。プラス、すでにアメリカで起業している方々数名が出入りしている状況でした。
新規入居組のバックグランドはこんな感じ
しゅうくん:半年前にアメリカMBAを卒業し、SaaSプロダクトを開発中
しゅんくん:外科医として活躍したのち、AI×医療領域で起業を模索中
ぺいくん:ジェトロで起業家支援に携わったのち、デジタルツイン領域での起業を模索中
みな私より5歳以上年下ですが、それぞれのバックグランドに基づいた強い起業意欲を持ってアメリカに渡ってきていました。
テックハウスに入居する大きな意義の一つは、住人同士のコミュニケーションだと思います。私も入居早々、今後のビザ戦略や資金調達の話に巻き込まれ、以降、起業に関する会話が日常のほぼ100%になりました。彼らとの会話は、自分の知識・起業意欲を一気に引き上げてくれました。
テックハウスでの生活について
私のテックハウスでの3ヶ月間は以下の3つに集約されるかと思います。
ネットワーキング
起業のトレンド・ノウハウを知る
事業案を考える
それぞれについて、詳述していきます。
1. ネットワーキング
アメリカで長年チャレンジしている起業家の方々と話す中で、事業を成長させる上で人脈がいかに大事かということを痛感させられました(資金調達はもちろん、アクセラレーションプログラムに入る際も人の紹介がとても大事)。またメリデメを考える以前に、縁もゆかりもない土地なので、まずは友人を作ることが大事だよねと、意識的に以下の方法でつながりを広げようとしていました。
スタートアップ向けのイベントに参加
サンフランシスコでは毎晩どこかしらでスタートアップ向けのイベントが開催されています。入居して最初の2週間は、現地のVCやコワーキングスペースが主催するイベントに毎晩ように参加していました。
正直なところ、この2週間で友人といえるような人は作れませんでしたが(Linkedinのつながりは増えたけど)、サンフランシスコの起業の雰囲気を知るにはとても有意義だったと思います。
驚かされたのは、ファウンダーたちの年齢・性別がバラバラなこと。日本だとスタートアップは若い男性が中心という雰囲気があるかと思いますが、サンフランシスコは自分より年齢高い人も多くいるし、女性も多い。またイベントにプロトタイプのロボットを抱えてる人などもちらほらいたりして、起業の裾野の広さを感じました。
また、イベントのテーマの90%以上がAIであることにも驚かされました。渡米前は、AI熱は一段落したものかと勝手に思い込んでいたのですが、全くそんなことはない。「むしろこれからが本番だ」といった熱気が広がっており、自分もAIの可能性を強く感じるようになりました。
キヨさんが紹介してくれるVCやファウンダーの方々と会う
テックハウスで作業をしていると、キヨさんが現地の投資家や起業家の方々を次々と紹介してくれます。この方々はキヨさんのお客さんなのですが、今の自分では繋がれないような方々ばかりなので、とても貴重な機会でした。(私はこれを求めて日中はなるべくカフェなどに行かず、テックハウスで作業をするようにしていました。)
先輩起業家とのコミュニケーション
滞在期間中、サンフランシスコで長年チャレンジしている日本人起業家の方々とイベントを共にする機会が何度かありました。特に印象的だったのは、10月頭に開催された二泊三日のタホ湖トリップ。
年に数回、起業家同士で小旅行をしているとのことで、私も同席をお願いしました。片道6時間のドライブ、もちろん事業の話もしましたが、それ以上にここで書けないような他愛もない会話をさんざんし続け(笑)、ぐっと距離が近づけた気がしましたし、自分も彼らみたいにアメリカで戦う土壌を早く作りたいと思うようになりました。
「ODF」に参加
サンフランシスコに来て驚いたことの一つに、各フェーズの起業家を支援するプログラムやコミュニティがたくさんあることです。今回、アイデアフェーズの起業家を支援する起業家コミュニティ「ODF」に運良く参加することができました。現地のネットワークづくりという観点ではこれが一番意味があったと思います。
ODFについては長くなるので、近日中に別途レポートをあげるつもりです。
2. 起業のトレンド・ノウハウを知る
テックハウスには住人専用のFacebookグループがあり、毎日のようにキヨさんが読むべき記事やおすすめのイベントを共有してくれています。また、事業の悩みについても住人が日常的にキヨさんに相談しており、このグループはまさに起業に役立つ虎の巻のような情報で溢れています。
これまで日本語の情報しか追っていなかった自分にとって、サンフランシスコのVCや起業家が発信する情報をキャッチアップするようになったことは、大きな変化だと感じています。(Xに投稿されているテック系の情報は元記事は英語のものが多いんだなぁ〜と学びました。元記事が出て数日後に日本語情報が流れてくる感じ。)
3. 事業案を考える
私はなかなか切羽詰まらないとアクションできないたちなので、意識的にアクセラレーションプログラムに応募して、常に事業案を前進させるようにしていました。具体的にはYCやa16zのプログラムにアプライしましたが、残念ながら不採用。
まあ、何度も応募するのが当たり前の世界ですし、先述のようにコネクションが何より大事だったりするので、へこたれずに続けていこうと思っています。とはいえ、プログラムに受かることはあくまで手段の一つ。自分でマイルストーンを切り、2025年の春までには資金調達に向けて動けるよう、まさに事業案を絞り込んでいるところです。
テックハウスに入居する意義
私が感じたテックハウスに入居する意義は大きく3つです。
1. 相談できる人が身近にいること
キヨさんをはじめ、相談できる方がとても身近にいること、そして有益な情報を共有し合える環境は本当に貴重です。一人だったら悶々としてしまうような状況でも、アドバイスをくれる人がいることは、事業を前進させる上でとても大切なことだと思います。(日本にもテックハウスみたいな環境があればもっと起業家増えるんじゃないかな〜と思ったり)
2. 自分の半歩先を進んでいる先輩たちがいること
アイデアフェーズの方から、半年前にプレシードの調達を終えた方、すでに20名近い社員を抱える方まで、さまざまなステージの起業家がテックハウスコミュニティに集まっています。彼らと生活を共にする中で、次に自分が取るべきアクションが具体的に見えてくるだけでなく、「自分にもできるかも」という前向きな気持ちにさせてくれます。
3. 先人の方々が築いてくれたネットワークに入れること
先述のODFも、きっとキヨさんの紹介がなければ入れなかったと思います。先人たちが10年以上かけて築いたネットワーク・信頼を利用させていただけることは、大きなベネフィットだと感じています。
これから
テックハウスに滞在する前は、本当にアメリカで挑戦したいのか、100%自信を持って「Yes」と言えない状態でした。しかし、この3ヶ月を通して、いまは「挑戦したい」と言い切れるようになりました。
それは、現地で挑戦を続けているテックハウスコミュニティの方々に刺激を受けたのはもちろん、ODFや現地イベントへの参加を通じて、「知とお金が世界中から集まるこの地で、大きなマーケット相手に挑戦したい(どうせ人生かけるなら!)」と素直に思えるようになったからです。
上述のジャパニーズコンテンツ含め、事業領域はいくつかの観点から検討中ですが、AIという武器を片手に人々が自分らしく活躍できる場を、さらに広げていきたいと考えています。(興味ある方いらっしゃればぜひお話しましょう!)
最後に
この場をお借りして、今回の滞在の機会をくださったキヨさん、テックハウス管理人のぴんくさん、仲良くしてくださったテックハウスコミュニティの方々、そして快くアメリカに送り出してくれた妻に心から感謝いたします。ありがとうございました。
PS:テックハウスや起業に興味のある方はお気軽にご連絡いただければと思います。X: https://x.com/rish086