今さら「世界に一つだけの花」の歌詞を読み直してみる
みなさ~ん!
「世界に一つだけの花」の歌詞
ちゃんと聴いてますか~?
😊👂🤚
はい。地獄に落としません。
みなさんは「世界に一つだけの花」,好きですか?
ジャニーズ事務所の男性アイドルグループSMAPの代表曲の一つで,作詞作曲を槇原敬之が手掛けた超有名曲です。知らない人なんていませんね。
「No.1にならなくてもいい もともと特別なオンリーワン」といった歌詞でもこの曲は強い印象を残していますね。
私のない読解力と文章力でこの曲の1番の歌詞を要約すれば,以下のようになるでしょうか。
花屋の店先に並べられた花は,それぞれがそれぞれに一生懸命で,みんな同様に綺麗である。しかし人間は競い合い優劣をつけたがる。人間も本来,こうした花々と同様の存在なのであり,優劣をつけずとも特別な存在であるはずだ。
この歌詞は競争社会の中で厳しい生存競争を強いられがちな日本人の琴線に触れたのか,「世界に一つだけの花」は200万枚を超える大ヒットとなりました。この曲は世代を超えて受け継がれ,今や音楽の教科書にまで載っているそうです。すごいですね。
しかしながら近年、インターネットを眺めていると「世界に一つだけの花」の歌詞がこれまでとは違った受け止められ方をされているのを見ることがあると思います。
その内容は,だいたいこのようなものと思います。
花屋に並べられた花は,そもそも花屋に届けられるまでに,すでにその過程で優劣をつけられ,その淘汰選別をくぐり抜けたものであり、綺麗であるのは当然である。
もっといえば,店先に並べられるような花は,そこからさらに選別されたまさにエリートというべき花である。こうしたものをオンリーワンとして称揚するのはグロテスクである。
それをあまつさえ厳しい競争を勝ち抜いたジャニーズ事務所の容姿端麗なアイドルが歌うとは,ますますグロテスクであり,偽善極まれり。
ジャニー喜多川氏が生前行った性加害の告発によってジャニーズ事務所全体への批判が高まっていることもあって、こうした読み方は一つの流れを形成しているように思われます。
私もこのような論調に一部同意するところがあったのですが、さっき思い立ってあらためてその歌詞を読み直すと、全くこうした指摘があたらないように思えてきました。のでそれについて書いていきたいと思います。
歌詞を全部読んでみよう
さて,以上で述べたような論を展開する人は,完全に2番を無視しているか、よほど注意力に欠けているに違いない。もしくは,1番ばかりが印象に残って,2番のことなど覚えていないのだと思う。あるある。
2番の歌詞は引き続き「僕」が花屋を観察しているシーンが続きます。花屋に来た客が綺麗な花を前に選びかね、そして出来上がった花束に満足げであることがうかがえますね。
ところが、Bメロからは一転して、視点が花屋の店先から移動します。
歌詞を引用します。
名前も知らなかったけれど
あの日僕に笑顔をくれた
誰も気づかないような場所で
咲いてた花のように
そうさ僕らも
どうですか?ちゃんとここまで詞をみてなかったでしょ。
「花屋の店先に並んだ花」をここまでの全てのパートで褒めそやしたところに、2番のBメロというタイミングでこの詞が差し込まれることによって大きな効果が生まれています。すなわち「僕」は,花屋の店先に並んだ花と同様の価値に気づいていることが明らかにされているのです。それだけでなく、「誰も気づかないような場所で咲いてた花のように」と述べることで、これらに対しても花屋の店先に並んだ花に認められた価値を自動的に付与し、歌詞全体の意味を大きく覆してしまうことに成功しているといえます。
Bメロは、名も知らぬ普通の花もまた、花屋の店先に並んだ花がそうするのと同様に我々に笑顔を与えてきたし、同様に輝いて見えることに我々聴き手は気付かされるという構成になってるのでした。
極めつけは「そうさ僕らも」です。
つまり、エリートでもなんでもない人であっても,一生懸命に生きる人は,それだけで美しいのだと,SMAPはここで高らかに歌い上げているのです。
ここにこそ,「世界に一つだけの花」が名曲たる所以があるように思います。
おわりに
「世界に一つだけの花」は花屋の店先に並んだ花だけを綺麗だと称賛しているのではなく、その辺で普通に一生懸命咲いている花にも独自の美しさがあると歌い上げているのであり、冒頭で言ったような批判的な読み方は的外れだといえると思います。
「世界に一つだけの花」は超有名であるがゆえに、他にも「オンリーワンであることは既に競争を勝ち抜いた証であり、ナンバーワンであることなのだ」などとケチが付き、安直な人間讃歌のように思われてしまいがちだと思います。私も逆張り的な気持ちからこうした論調に流される部分もあったのですが、何も確認しないで悪口だけ言うのもと思い、あらためて歌詞を眺めると、なんといい歌詞なんだ、やはり名曲、と思わされました。
ナンバーワンにならなくてもいい
もともと特別なオンリーワン
✨