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はじまり の はじまり

2020年5月1日

仕事に行く前に
病院に行くことを決意していたわたしは
ネットで検索した
女性スタッフのみのクリニックを受診した。

受診の理由は
排便時に
いつも血がついていること。

そして
激しい吐き気と腹痛
全身が常にだるく
つかれやすいこと。

そして
足の付け根が
高熱が出たときのようにだるくて重いこと。

ずっと痔だと思っていて
はずかしくて
受診できないで放置していたけれど、
3月末くらいから
カラダのだるさがひどくなり、
体調を崩して
仕事に行くのがつらい日が増えてきたのと、
おしりが痛くなってきたことから、
もう
はずかしがっている場合じゃなくなっていた。

他にも
熱っぽかったり、
寒気がしたり、
ひどい吐き気で動けなくなったり、
強い腹痛があったり…

常に体調が悪く、
はぁはぁ言いながら
仕事に出かけていた。

それでも
今日はムリだ、仕事行けん…
という日が続き、
4月なのに
すでに有給休暇を使いまくっていた。


もう限界だった。



とはいえ、
診てもらう医師は
女性がよくて
インターネットで検索した。

5月1日
『肛門外科』で予約。

その日のうちに受診した。

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ずいぶん長い時間
待った気がした。

待合室にいる間、
業者の男性が
クリニックの中に入ってきて、
違和感と嫌悪感をおぼえた。

「女性スタッフだけ」だ
というから
安心して受診しているのに、
ひどく裏切られたような気さえした。

なんだよ!
出入りする業者の人も
女性だけにしてくれよ!
と内心叫んでいた。

(乳腺外来と肛門外科の専門であるそのクリニック。
そういうクリニックでは、
患者の安心のために
そこまで徹底してもいいのかもしれない。
こういうことは
当事者にならないと気がつかないことだから、
ここにこうして記しておこうと思う)


いまから思えば
大げさな反応だな、
と思うけれど、
それだけその時のわたしが
繊細になっていた
ということなんだろう。


自分に余裕がない時、
人は攻撃的になる。

ある種の防衛反応なんだろうな。

・・・

名前を呼ばれて
診察室に入る。


今わたしの身に
起きていることを話すと
医師が一瞬
「え」と絶句し、
「そうかぁ…じゃあちょっと触診するね」
と言い、内診をすることに。


内診して
すぐに
「腫瘍ができているね。
手術でとることになると思うから
大きな病院に紹介するね」と言った。

気もちいいほど判断が早い。


医「腫瘍が良性でも悪性でも
  とることは間違いないと思う」

し「あ、そうなんですか?
  痔じゃないんですね。
  良性でも手術は確実なんですか?」

医「うん。そうだね。
  確実に痔ではないよ。
  うん。
  どちらにしても
  手術でとることになると思う。

  もしがんだった場合にも
  対応できる病院の方がいいと思うんだけど、
  どこがいいかな?」

し「じゃあ〇〇大学病院で」

医「わかった。
  じゃあすぐ書くね!
  ちょっと待ってて。」


女性医師はその後
「カメラ撮ってないのに
 紹介状書いたら怒られるかなぁ~?
 ん~でも大丈夫だと思う!
 おこられないよね」

大きな声で独り言をぶつぶつ言っていた。

なんだか
かわいらしくて
判断力があって
ステキな人だなぁ。

この人と
この短時間ですぐにお別れか、
と思うと
少しさみしい気もちになった。

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はじめての内診で
おしりがズキズキ痛む。


診察自体は
とても短い時間だったが、
医師の表情や声、
看護師の対応なんかを見ていて
「わたし もしかして がんなのかな」
と思いはじめていた。

しかも
ちょっと急いだ方がいいような、
そんなタイプのがんなのかもしれない。

偶然持っていた
大学病院の診察券を
看護師さんに手渡し、
紹介状を書いてもらう。

手続きをしてくれた看護師さんや
紹介状を渡してくれた事務の女性の視線が、
同情しているような気がして、
それがわたしを
より不安にさせる。


ちょっとホッとしたくて
診察後
近くにあったスタバに足を運んだ。

けれど、
緊急事態宣言をうけて
休業していた。


なんだ、
残念…


と思ったとたん、
涙がぽろぽろでてきた。


涙が止まらなくて
泣きながら歩いた。


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外出自粛で
人が少ないことと、
感染予防で
マスクをしているおかげで、
ぐしゃぐしゃにゆがんだ顔が
あまりわからなくて
ほんとうによかった。


行きかう車から、
わたしのことを
見ている人なんて
1人もいないだろう、

泣きたいだけ
泣かせてあげることにした。



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