オストメイトになって今思うこと
2020年6月上旬。
手術から数日が経った。
今回
自分がこういうことになるまで
人工肛門って
おしりから管かなんかがでていて
袋を持ち歩くのかと思っていた。
でも
全然違ってた。
おへその横あたりに
腸をだして
くるんとひっくり返して
お腹にひっつけてある。
これを
人工肛門(ストーマ)
と呼ぶ。
肛門から
大腸の
どの位置まで
切り取ったかによって
でてくる便の状態も変わるようだ。
このnoteを読んでくださっている方で
これからストーマを造設する人の数は
とても少ないとは思うのだけど
参考までに、
わたしの今の状態をシェアしておこうと思う。
肛門を残せない、
人工肛門になりますと言われたとき
大泣きした。
人工肛門になるくらいなら死んだほうがマシだ、とまで言っていた。
それほど嫌で嫌でたまらなかった
ストーマだったが、
術後ソレを見ても
不思議と全く嫌じゃなかった。
なんというか
ずっとそこにあったような気になる程
違和感なく存在していた。
ストーマからは自分の意思とは
全く関係なくガスや便が
腸のタイミングででてくる。
なので
出てくるものを受けとめるための
専用の袋(パウチ)をストーマのまわりに
ペタッとひっつける。
わたしの中で何が起きたかは
全くわからないが、
手術の後そんなお腹に袋のついた自分の体を
全面的に受け容れていた。
ついでに
何が起きたか全くわからないが、
生命力に満ち溢れているような
全身に氣が十分に満ちているような
そんな氣すらした。
袋の中のものを処理するのに慣れるには
少し時間が必要だったし、
パウチを自分で交換できるようになるまでは
退院することができない、と言われた。
自分のストーマの形や大きさに合わせて
パウチの穴の大きさを決め、
自分でハサミで切って装着するその作業を
全て自分でできるようにならないといけない。
わたしは
「保育士をしていたから器用ですね!
とっても上手です」と言われ、ちょっと照れた。
お年を召してから
オストメイト(人工肛門や人工膀胱を持つ人たち)
になった方の中には
ハサミが上手に使えなかったり
装着がうまくいかず、
なかなか退院できない人もいると聞いた。
おどろくのは
ガスが出るときの
音の大きさだ。
自分の肛門であれば
筋肉を駆使して音を微調整したり
おならが出ないように
工夫することもできるが
ストーマの場合は腸の動きや身体の動きで
押し出されてでてくるので
音の調整が全くできない。
したがって、
大きい音になることがおおい。
はじめてストーマからガスが出たとき
あまりの大きさに
ひえっとなったくらいだ。
手術から10日たった頃からは
もう慣れてしまって
「あ~ なってるわ」
くらいにしか思わなくなった。
わたしが入院中に
おなじようにストーマを造設した人も
おなじくらい大きな音が出ていたので、
そうなるのが普通かと思っていたけれど、
漫画家の方の記事を読んでいたら
「プスプスと音が鳴る」
という表現だったので
通常のおならに個人差があるように
ストーマから出るガスの音にも
個人差があるのかもしれない。
入院中に病院で指定された
ストーマ袋(パウチ)を購入した。
その袋は透明で
排泄物がよく見える。
オストメイトであることを
ガッツリ受け容れたけれど、
交換したばかりの何も入っていないパウチが
お腹についている時と、
排泄物が入っている時とでは
全く氣分が違っていた。
おトイレに行くときや着替えるとき、
シャワーするときなどに
それが見えるのが
だんだん憂鬱になってきていることにも
氣がついた。
氣分が落ち込む。
うんざりする。
病衣の中に隠れてはいても
なんか嫌だった。
話は逸れるが、、
同時期に入院していたまだ若い女性は
なぜか病衣の上からパウチを出していて
丸見えで病院内を歩いていた。
初めてそれを見たとき、目を疑った。
(え?)
わたしは彼女と術前も術後も同室で、
昼夜を問わず
カーテン越しにいろんなことを話していた。
で、ある日
お腹から排泄物の入ったパウチを堂々と出して
歩いている彼女を見て(え? いいの?)と思った。
なんかその姿が清々しくて
ちっとも嫌な気分ではなかったのだけど、
一応言ってみた。
「それ出しているんだね」と。
「え?」と彼女は言った。
「え?みなさんどうされてるんですか?」
と聞かれ
「わたしは見えないように
服(スボン)の中に入れているよ」
と答えた。
「そうなんですね!やだ。恥ずかしい!」
と言ってそれ以来、服の上から
パウチが出ていることはなくなったけれど。
排泄物が丸見えじゃなくて
かわいいデザインのパウチなら
見えてても全然いいのにな、と思った。
(かわいいパウチないのかな)
そんなふうに思って調べてみたら、
パウチカバーなるものがあった。
消臭機能が付いていたりするものなどあったが
わたしは肌触りの良い綿でできたもので
見た目がわたし好みのものを選んで購入した。
そのカバーをつけるようになって
憂鬱さからは少し解放された。
が、それは全く使いづらかった。
パウチの中身を処理するたびに
そのカバーをつけたり外したりするのが
思っていた以上に面倒だった。
また苛立ちを覚える。
オストメイトになったことで
普通に生活しているだけで
匂いや音や、漏れなどを常に気にしていて
それだけでもかなりのストレスだった。
だからこそ、どんな小さなことでも
妥協するわけにはいかない。
少しでもわたしが快適だ、と思えるような
工夫をしたかった。
調べていたら、あるメーカーのパウチに出会った。
そのパウチは全体の色がグレーで
綺麗な水色がポイントで使われていた。
パッケージも白と水色でおしゃれ。
(これなら毎日お腹についていても凹まない!
むしろテンションあがる!)
そう思い、
ストーマ外来で看護師さんに思い切って伝えてみた。
余談だが、わたしの通院している病院では
ストーマの管理のために
ストーマについて専門的に学んだ看護師に定期的に
外来で診てもらうことができる。
体型の変化や、生活環境の変化で
漏れやすくなったり、
ストーマの周りの
肌のトラブルがあったりするときに
対処の仕方を教えてもらえる。
ここで診てもらえることが
わたしの安心になっている。
看護師に希望を伝えることで
それを叶えてくれようと
サンプルを持ってきてくれて
装着してみることができた。
いくら見た目が氣にいっていても
肌やストーマの形や体型に合わなければ
つけ続けることはできない。
以前、付けているパウチとどうも相性が合わず
漏れやすかったときに勧められたまた別のパウチは
装着したときに肌がチリチリして
痛痒いような感じになって
その感覚に耐えられなくてすぐ剥がした。
剥がしたら、肌が真っ赤になっていた。
そんなふうに肌に合わないこともある。
サンプルをもう一つ受け取って
家でも自分で付けてみた。
肌も大丈夫、
体型にも合っていそう、
ということでそのパウチを使うことが許された。
とてもうれしくて
「これ見て〜かわいいでしょう」と
娘に見せびらかしたほどだ。
わたしはオストメイトになって
かなり早い段階で
自分がつけていて心地いいと感じることのできる
パウチに出会った。
そのおかげで
パウチカバーの付け外しの煩わしさや、
丸見えの排泄物を見るたびに
憂鬱な氣分になることから
割と早めに解放された。
ただ、特定の動きをしたときに
パウチの一部が浮いてしまったり、
剥がれたりして
不意に匂いが漏れてくるときには
もう本当に落ち込んだ。
保育園の仕事に復帰したときは
本当によく匂いが漏れた。
わたしは太っているので
かがんだり座ったりするたびに
肉に押されてパウチがずれ
ほんの少しだけだが
パウチの内側が剥がれることが多い。
そのほんの少しの隙間から匂いが漏れるだけで
かなり匂う。その度に凹んだ。
そんな時にもすぐにパウチを
交換できるように持ち歩いているので
さっさと交換すればいいのだけど
保育園のトイレはあまりにも
プライバシーが守られている安心感がなく
交換する氣になれなかった。
もうただただ
(はやくおうちにかえりたい)
と幼い子どものように半泣きで思っていた。
時に匂いが漏れることは
仕方のないことだとわかっているし
その時には対処する術も知っている。
園の人たちは
本当によく理解をしてくださって
協力的でもあった。
わたしの体に負担がかからないよう
工夫をしてくださってもいた。
けれど
わたしの心が限界を迎えていた。
(保育園の仕事は
もうしたくない)
と強く思っていた。
オストメイトであることを
周囲に知らせないままに
仕事をしている人もたくさんいるようだ。
外で仕事をしているときには
パウチにトラブルが起きても
即座に席を外すことが難しい人もいるだろう。
そんな人たちはどうしているんだろう。
わたしはオストメイトであることを恥じていないが、
やはりまだ銭湯などには行っていない。
そこは正直まだ抵抗がある。
そのうち
友人たちと銭湯に行きたいと思っている。
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