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8カ月目の妊婦

妊婦生活が8カ月目に突入した。
妊娠して知ることが多く、本当に妊娠状態は平時と違うんだなあと驚く。

歯科検診で「妊娠中特有の歯肉炎が出てますねぇ」と言われて、妊娠中特有の歯肉炎?!と驚いたし、ママパパ学級の座学でカルシウム不足が判明して軽く凹んだ。
どうも体が胎児を優先するようで、私の体なのに私のことは後回しになるそうだ。だからあらゆることに気を付けないといけない。普段通りに磨いてるのに虫歯になって、普段通りに転んでるのに骨が折れる、そんなこともあり得る。

気を付けることが多いとはいえ、それ以外の部分はつわりが終わってからは比較的快適に過ごしている。
食事も普通の量を食べれるし、疲れやすくはなったけど生活に支障がない程度。中の人もたまにポコポコお腹を蹴ってくれるから、ひとりのときの寂しさが減った。
これからお腹が大きくなると腰を痛めるかもしれないなあ、と思い、最近はよく歩くようになった。今のところ腰痛が出てきていないのは、その分の運動と、ナイキのスニーカーと、サポータータイプの妊婦ベルトのおかげだと思う。あと妊娠前に少しやっていたリングフィットアドベンチャーの運動貯金。

よく歩くなったようになった理由はもうひとつある。電車の優先席が優先席でないことに気付いたからだ。
優先席には寝ているか、寝なければスマホをずっと見ている人が座っている。先輩も「あぁそういうものよね」と同調しており、どうやら妊婦あるあるらしい。
となると、揺れる車内で吊革につかまらずふらふらしている人を横目にハラハラ立っているよりは、歩ける範囲で歩こうかなと思うようになった。電車賃も浮く。

快適でなくなったことももちろんある。
トイレがすこぶる近い。
膀胱が圧迫されて尿意をもよおすらしい。『トイレ行きたいなあ…』でしばらく我慢できるならまだいい方で、たまにまじで間に合いそうにない危機感がある。今のところギリセーフ。嘘、ちょっと尿漏れした。
臨月前に公開予定のミッション:インポッシブルの新作、絶対劇場で観たかったけど、上映時間がシリーズ最長らしくてどうだろう。イーサンに負けないくらい自分もインポッシブルな環境下に置かれる自信はある。
それと、むくみが酷い。朝起きた直後は、脚と足首がぞうさんのように真っ直ぐ。つま先が出る着圧ソックスを履いて寝れば、つま先との差が糸巻きのチャーシューみたいになってておもろいことになる。
おもろだけなら、まあよい。痺れたりパツパツ感があったりするとちょっときつい。ぱおん。

妊娠して、いろんな人の妊娠体験談を聞くことが増えた。友人、職場の皆さん、担当の美容師さん、歯医者さん、まつ毛パーマの担当さん。みんなそれぞれに苦労してそうな内容の話をケロッと話すから、それにも驚く。以前はそれらも、へぇそういうこともあるんだなあ、なんて他人事に聞いていたけど、今は自分という最も身近な比較対象があるから驚きも2倍3倍になっている。
なんだかんだ苦労しながら、死なない限りはなんとかなるということだろう。
まさしく、案ずるより産むが易し。
みんなすごいよね。

胎に抱えたマスクメロンほどの重みの生物の、内側から腹部を蹴る力が強くなるにつれ、生まれてから考える「なんのために生きるんだろう」の問いの、それ自体の意義を疑うようになった。
だってこれほど生命力に溢れているのよ。お前が始めた物語だろって。
私の生き死にの決定権は意識にはなく、たぶん細胞にある。


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