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第4話:病院の日常は規則正しくて健康的【入院2日目】
「入院中に英語力アップ」をもくろむ
約1ヶ月の入院生活、単に「寝ていました」だけで終わるのでは余りに空しい。目を使ってはいけないとのことなので、どうやって時間を使うか考えた結果、午前中はカセットテープを使って英語の勉強、午後を落語の時間とすることにした。英語に関しては、既に一昨日の晩、入院用の荷物をまとめた際に、自宅にあった「イングリッシュジャーナル」のカセットテープを大量に持ち込んでいた。これを毎日聞くことにする。
また落語は、昨日案内してもらったカセットライブラリにたくさんあるのを見たので、これをしらみ潰しに聞いていくことにした。落語や朗読本のカセットは数百本あったので、1ヶ月くらいは退屈することはなさそうだ。
6時起床、7時に朝食
病院の生活は実に規則正しい。
朝6時に「おはようございます。よく眠れましたか」と言いながら、看護婦さんが一人一人の枕元まで起こしに来てくれる。続いてお茶。この目覚めの一杯のお茶が、体に心地よい。何でも人間は寝ている間に水分をかなり失っているらしく、起き抜けに何かを飲むことは、理にかなっているのだと聞いた覚えがある。それが体の潤滑油となるわけだ。
7時に朝食。朝はパンに決まっていて、大体食パン2枚、牛乳、サラダというメニュー。毎朝ご飯を食べると言うのも体に良いということを実感する。
食後、飲み薬、点眼と続き、あとは医師による診察を待つ。診察は日によって時刻に違いはあるが必ず午前中に、そして診察室で行われる。以上で午前中のプログラムは終了。早い日だと、9時頃には終わってしまう。その後、昼食までは自由時間。
点眼に関する誤解
目薬をさす「点眼」は、看護婦さんがやってくれる。まるで子供になった照れくさい気分だ。入院前、目薬をさすときは、いつも、目薬を落とした後、それが十分、目に行き渡るように、しばらく目を開いた状態のままにしていた。ところが看護婦さんは、目薬を落とすとすぐにふき取ってしまう。
疑問に思って 今日、巡回に来てくれた沼田さんという看護婦さんに、「どうしてですか?」と尋ねてみた。
「睫毛の部分には、ゴミがいっぱいついているんですよ。目薬をさされた後、友野さんみたいに目をパチパチさせる方が多いんですけど、それをすると、睫毛についたゴミが目の中に入ってしまうんですね。目を清潔に保つためには、こうして、目薬を差してあふれた分は、清潔なガーゼかティッシュで、すぐにふき取るのがいいんですよ」
と親切に教えてくれた。なるほど。
夕食は6時で9時に就寝
昼食は12時。食前にもお茶のカートが回ってくる。汗をかかないせいもあるだろうが、毎食前、1日3回、茶碗一杯のお茶をもらうだけで、これ以上水分が欲しくなることはほとんどなかった。普段は、1日に何杯もコーヒーや清涼飲料を飲んでいたが、飲み過ぎだったかと反省する。
食べるほうもそうだ。トレイに載った食事は、一見すると全然足りないように思うが、実は十分な量があり満腹になる。入院中は運動量が少ないからというのも、大きな理由の1つだと思うが、今まで体が必要とする以上に、食べていたのだと思う。ちなみに病室での1回あたりの食事の量は、目算では普段の半分から3分の1程度だったにも関わらず、入院後も体重は全然減らなかった。
食後にはまた薬。2時頃には部屋番の看護婦さんが、一人一人のベッドまで問診に来てくれる。体温を調べ、脈を取り、便通回数を聞く。そして目の見え方に変わりはないか、などの質問。その後はまた夕食まで自由時間だ。6時に夕食が来て、9時に消灯・就寝。
最初の頃こそ単調に感じたが、すぐに慣れ、逆にこのペースが快適に感じられるようになっていた。
入院患者にとって最大の楽しみは面会時間
そんな生活をしている入院患者にとって、一日のハイライトは面会時間。月曜日から金曜日が15時から20時まで。土日祝日が13時から19時となっている。
この日は土曜日ということもあって、面会時刻になると同時に、母だけでなく、三島から眼科医の叔父が駆けつけてくれた他、大学時代の友人が2人、それからコロンブス出版の元・同僚である石山さんが、旦那さんの村山さんと一緒に来てくれた。2人部屋を1人で独占して使っているという気楽さもあり、面会時間を過ぎるまでみんなとおしゃべり。後で聞くと周りの患者さんや看護婦さんから「ずいぶんと賑やかな病室だなあ」と思われていたらしい。