絶滅危機動物ファイル07「シマハイイロギツネ」
こんにちは〜。
絶滅危機動物ファイル07「シマハイイロギツネ」です。
twitterでは2022/10/29に公開しました。
シマハイイロギツネは、アメリカ合衆国カリフォルニア州沖のチャネル諸島にのみ生息する、小さなキツネです。
イラスト内にあるように、イヌ科は大きく4系統に分けることができ、シマハイイロギツネとアメリカ大陸本土に暮らすハイイロギツネの2種のみで、ハイイロギツネ系統を構成しています。ハイイロギツネ系統は最も古くに分岐しているので、原始的な種のようです。
イラスト内の「分布」にエンゼルスタジアムを表記しているのは、単に自分が大谷翔平選手のファンで、エンゼルスタジアムでの試合中継を見ているときに、「この近くにチャネル諸島があって、シマハイイロギツネがいるんだなあ」という思いを馳せているからです…。
チャネル諸島は「島」としてずっと隔離された環境であったため、植物も動物も固有種の宝庫で、ヒト(アメリカ先住民)と共に独自の生態系を維持してきました。
しかし入植者たちが持ち込んだ家畜、そして一見関係のないようなアメリカ本土からの農薬による海の汚染によって、またたく間に生態系が破壊されることになります。この農薬「DDT」は、この時代のアメリカで大変な問題になったようです。
海が汚染されたことにより魚が汚染され、チャネル諸島に暮らす魚食のハクトウワシにその汚染物質が溜まってしまいます。薄い殻の卵しか産めなくなったハクトウワシはヒナが孵らず、ついに姿を消してしまいました。
魚食だったなら、島の生態系にそれほど影響ないのかな?とも思われますが、ハクトウワシがいなくなったところに、なわばりなどで競合していたイヌワシが本土よりやってきてしまいます。
ハクトウワシと違ってイヌワシは陸上にいる動物を捕食します。入植者たちが連れてきた家畜のブタなどが大きな野生群となっていたため、イヌワシにとっては獲物に事欠かない島となっていました。そして小さなキツネたちも、格好の獲物となってしまったのです。
隔離されていたキツネたちにとって、空からの捕食者は今まで見たことのない初めての存在でした。対抗する術はなく、北方3島ではあっという間に絶滅寸前まで減ってしまいました。
また、サンタカタリナ島では、(ヒトの活動によって)本土から紛れ込んだアライグマにより、致死的な病気であるイヌジステンパーが拡がってしまいます。こちらも、隔離されていたため病気への耐性がなかったキツネたちはあっという間に絶滅寸前まで減ってしまいました。
シマハイイロギツネたちを絶滅させないために、保護保全計画が始動します。キツネたちの生態調査・管理や飼育下での繁殖などのほかに、島の生態系を回復させることが何よりも重要です。
外来種であるヒツジやブタ、そして侵入種のイヌワシたちは捕獲され、次々と本土へと移されます。これらは外来種根絶プロジェクトに長い歴史をもつ、ニュージーランドの専門チームにより、迅速に実行されていきました。
そして島では絶滅してしまったハクトウワシが再導入されました。シマハイイロギツネたちにとっては、島の守り神のような存在ではないでしょうか。
こうして2004年にレッドリストカテゴリーCR(絶滅寸前)になってしまったシマハイイロギツネは、わずか9年後の2013年には3カテゴリーアップのNT(準絶滅危惧)へと、島とともに回復しました。
野生動物の回復プロジェクトとしては、もっとも成功したものと言えるのかもしれません。
島という環境は、ちょっとした変化が大きな危機へとつながってしまいます。今もシマハイイロギツネの保全活動は熱心に続けられています。
こちらのサイトで、過去、そして今のシマハイイロギツネについて知ることができます!
また、チャネル諸島ナショナルパーク公式チャンネルにあるこちらの動画で、チャネル諸島(サンタクルーズ島)の歴史や生態系の変遷を詳しく分かりやすく紹介しています。
いつまでも、この小さく魅力的なキツネたちがチャネル諸島で暮らしていけることを願っています。
それでは〜。
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