日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか
タイトルのインパクトに思わず購入した本。
最初はあまりにも専門用語が多すぎて、経営者でもないのに読む意味あるのかと、まえがきを読んで本を閉じてしまった。
時は経って半年後。ヴィクター・パパネックの「生きのびるためのデザイン」を、山崎亮さんの「コミュデ塾」での解説の力も借りて読了してから、「今なら読める気がする…!」という根拠のない自信を持って再度手に取った。
どんな本?
東京大学史上初の経営学博士号を授与された岩尾俊兵さんという方が出された本。
経営学のけの字も知らない自分が雑にまとめると、
・海外の大企業(GAFAMも含む)は、日本の経営技術を参考にしているケースも多い。それくらい、日本の経営技術は世界的にも評価されているものもある。
・にもかかわらず、日本人ならではの「根拠のない悲観論」などによって自身の強みを忘れ、実は日本由来の経営技術が咀嚼され、コンセプト化された海外の経営技術を逆輸入するというよくわからないことまで起きている
・「コンセプト化」することの経済的なメリットはとても大きい。けど日本人はコンセプト化することが苦手。コンセプト化(抽象化)することへの理解力も低い
・日本の経営技術を自国でコンセプト化して海外に売り込むチャンスはまだある。
等々…。
いまだに理解できていないワードもたくさんあり、理解度でいうと30%程度でしかない。なのになぜ全6章、飽きずに読み進められたのか。
それはデザイナーの仕事のプロセスに非常に近い内容だったらからです。
コンセプト化するメリット
日本の企業、組織、人はもともと「人脈依存度が高いコミュニケーションをしてきたから、コンセプト作りが苦手」とこの本は書いている。
同じ国、組織で密にコミュニケーションを取り、独自の技術・言語を持って、それらを社内外に発信する機会がなかった。
逆にアメリカは移民の国。不特定多数の人がいるなかで伝える方法は「抽象度を論理レベルにまで高めたコミュニケーション=コンセプト化」は必要不可欠だったという歴史がある。
なのでアメリカの企業は「コンセプト化」することが得意であり、企業価値をどんどん上げていったのだ。
コンセプト化する経済的なメリットは、「自社の経営技術が国内外、人に依存せずどこに行っても理解され、経営技術がちゃんと定着する」、「専門性がなくなるため文脈を超えた議論が可能になり、よりイノベーションが起こりやすくなる」、などさまざまあるが、すみませんここはいまだに理解が追いついていない…。だが、デザイナー視点で見ると「限定された人に依存しない、かつ独自性のある、国境を超えても共感してもらえるコンセプトがGood」、「いいコンセプトを掲げれば、ステークホルダーが能動的になれる」といった感じでしょうか。
デザイナーがコンセプト化するのが得意な理由
デザイナーという仕事をしていく上で必ず求められることがある。
それは「コンセプト化」するということある。
すべてのデザインには、課題や目的が必ず存在する。
その解決のために視覚的にどうアプローチするのか、
そのために創る以前に目的の設定や全体のまとめ上げるコンセプトが必要になる。課題、目的がないものにはデザインをしようがないのだ。なので我々は常にコンセプトや整理を意識している。
仕事をするうえで自分達はその大切さを日々仕事で感じているので、当たり前のように話をするが、抽象度の高い話であるため、コミュニケーションエラーが起きてしまうことも非常に多くある…。
究極的に言えばコンセプト化は絶対的に大切なのだが、それを最終的に気づくために、段階的に目の前の「カイゼン」を伴走していく。そんな仕事の進め方も、時として大切だと感じた本だった。