38.薄羽蜉蝣
やらなければいけないことが山積みになって
夏の暑さで腐っている。
それを考えることさえも億劫で
頭の片隅において
見なかったことにしている。
港で海風に吹かれる。
山にかかる雲影はゆっくりと向かってきて
やがて私にかかる。
一瞬のやすらぎ。
知らない町の夏祭りは
ひかえめな花火が打ち上がって
小さな町を照らす。
さっきまで鳴いていた
ひぐらしもびっくりしちゃったかな。
なんだか、子供の頃に戻った気がした。
戻れた気がした。
今年もやっぱり暑くて
色々考えては
ゆらゆら陽炎のように消える。
この夏のことはこれから先も
きっと思い出す。
夏の宵。
たゆたうレースのカーテンに包まれて
薄羽蜉蝣はしあわせに死ぬ。
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