戯曲「CLOCK」③

シーン3

『ヒトと妖怪』

  屁太郎たち。

屁太郎  走れ、はよ走れ。

  式神飛び込む。

ウクイ  屁太郎、逃げろ!

屁太郎  逃げてえけど逃げらんねえんだよ!

  辺りが炎に包まれる。

セイメイ これは!?

  九尾、ミズチ、ウシオニ飛び込み式神を蹴散らす。

屁太郎  おわー!九尾の妖狐!

ウクイ  こいつが九尾!?

屁太郎  こいつらは、人間を食っちまう恐ろしい妖怪だ!

九尾   助けてやるよ。その代わりその赤子よこしな。

ウクイ  は?

九尾   生き胆を、食らうんだよ。生まれたての赤子の生き胆はうめえからな。

屁太郎  待て待て!この子はウクイの子だ。ウクイはおれたちの友達なんだ!

ミズチ  バケモノのくせして人間なんかと仲良くするんじゃねえよ。だからなめられるんだ。

屁太郎  くそ、こんな時に!逃げるぞ!

  セイメイ、ヤシャたち。

セイメイ オンキリキリマイ。

  全員体が重くなる。

屁太郎  なんだ?

九尾   こいつは・・・? 

セイメイ 久しぶりだな。その小さい姿も似合っているぞ。狐。

ウシオニ 懐かしい奴にあったぜ。

アサツキ こっちのセリフだ。

九尾   陰陽師・・・。

ユウグモ 今こそ。・

セイメイ 滅。 

  雷が鳴り式神増える。対九尾、ミズチ、ウシオニ。

ウクイ  なんなんだ!?

屁太郎  昔都で暴れまわってた九尾を、陰陽師が戦って尻尾8本封印しちまったのさ。

九尾   余計な説明してんじゃねえよ!てめえらも食っちまうぞ!

屁太郎  ひいいいっ!

ウシオニ どけ!邪魔だ!

屁太郎  わわわありがとう!走るぞ!ウクイ。

セイメイ オンキリキリマイ。

  走り出そうとする二人。全員体が動かない。

後ろからヨルキリ。ウクイを一突き。

屁太郎  なにしてんだ、はやく・・・・

ウクイ  屁太郎・・・・このこ、持ってってくれよ。

屁太郎  ウクイ!!

  ウクイ斬られる。子供だけは守る。

ウクイ  ・・・・屁太郎。ごめんな。

  斬られる。

屁太郎  ウクイ! 

セイメイ 滅。

  もう一度切りかかろうとする。無明登場。

  ヨルキリを蹴散らしウクイを連れて走る。

セイメイ お前は・・・。

無明   走れ!

屁太郎  うわあああ!

  走り出す三人。後ろでは妖怪対式神。

  三人、振り切る。いつの間にか妖怪たちが加わる。。

シーン4『託す』

シカメ おい、大丈夫かよ!?

無明  もう、大丈夫。あいつら、こない。

おんじ ありがとさんよお。

屁太郎 あんたは?

無明  おれの事、いい。そいつ。

しずく ウクイ、大丈夫?

ウクイ ・・・・子は?

屁太郎 ・・・・寝てるよ。こんなときだってのに。

たゆら のんきだねえ。

はやて あんたに言われたくないわ。黙ってな。

ウクイ ごめんな。お前らが疑われた。

ごん太 どうせまた、子供に何か化け物が憑いてる、とかだべ?

ぶん太 こっちは御見通しだ!

ウクイ ごめんな。

シカメ 人間が!

ハヤテ シカメ。

しずく  ・・・何言ってんのよ。そんなの、慣れっこだよ。ね、みんな?

屁太郎  おおよ!俺たちが人間に疑われるのなんて、いつもの事だ!気にすんな!

ウクイ  ・・・ごめんな。

  赤ちゃん泣く。

屁太郎  うお、ああどうしよどうしよ。

ぶん太  おお、べろべろべ。・・・ごん太!

ごん太  おおーい泣くな泣くなほほほいほい。

シカメ  うるせえ泣くんじゃねえよ!

  たゆらも泣き始める。  

シカメ  おめえも泣いてんじゃねえって!

ハヤテ  あんたが怒るから泣いてるんでしょうが!

しずく  よーしよし。泣かないでね。よーしよし。

シカメ  ばか、雪女のお前が抱いたら凍っちまうよ。

屁太郎  ようし、泣くな泣くな。

  赤ちゃん、笑う。

屁太郎  ん!笑ったぞ!

しずく  うそ?

ごん太  笑った!

はやて  なんで屁太郎で?

たゆら  はげてるからだよ。

シカメ  ぎゃっはっは。

屁太郎  これははげてるんじゃねえ!皿だ!河童の大事なアイデンティティだっつの!

  赤ちゃんまた笑う。

ウクイ  なんだ、屁太郎に任せておけば安心か。

ぶん太  おい、死ぬみてえなのやめろよ。

ウクイ  ごめんな。人間がまたお前等誤解してさ、悪者にしようとしてさ。

ハヤテ  いいよ!だからそんなの気にするなって!

ウクイ  なんとかおれが人間と妖怪が分かり合える世にしたかったんだけどなあ。

無明   無理だ。妖怪と、人間、分かり合えない。その歴史の繰り返し。

ぶん太  誰だおめえは?

無明   人はいつも自分たちが最も優れていると思い込み、自分たち以外の存在を否 定する。恐れる。人間よりも先にいた妖怪、恐れている。

おんじ  こいつは無明坊主。人間じゃよ。

シカメ  人間!?

しずく  なんでここに?

無明   そしてお前らも同じように、人間恐れている。恨んでいる。分かり合えることは、無い。

  無明去る。

シカメ  おれたちが人間を恐れてるだあ!?んなことあるわけねえだろ!あるわけ、ねえだろ!

はやて  あんたその言い方図星みたいに聞こえるよ。

屁太郎  助けてくれたってことは、俺たちの味方か。

おんじ  たしかにその通りじゃ。わしらは、人間たちを恐れてる。

ウクイ  知らないだけなんだって。知ったらきっと・・・・

しずく  ウクイ!!

ウクイ  ごめんな。屁太郎。その子頼むわ。

屁太郎  ちょっと待って!おらは人間なんて育てらんねぞ!おらは妖怪だぞ!

ウクイ  そんなこと言わねえで頼むよ。人は一人じゃ生きられないんだからさ・・・・

屁太郎  相撲の対決どうすんだって!

  ウクイ、息を引き取る。

屁太郎  待てよ、ウクイ!ウクイ!

しずく  ・・・人間は、すぐ死んじゃうね。

  左右からミズチ達と、ヤシャ丸たち。

ヤシャ  ちっ!

ユウグモ あのやろう・・・。

セイメイ 最後の一本がなくなる前に退散した方がいいんじゃないのか?

ミズチ  にしても人間が人間殺そうとするなんてな。

九尾   人間は汚い生き物だ。気にするな。

ヤシャ  汚い生き物はてめえだ!親の仇だ。

ウシオニ どうやらこいつらオヤジのこと憎んでるみたいだぜ。

九尾   そうか。そりゃあいい。もっと憎んでみろ。

ユウグモ なめやがって! 

九尾   帰るぞ。

ミズチ  いいのか?

ウシオニ あいつ殺せば尻尾戻ってくるかもだぞ?

九尾   大地が、泣いているからな。

  三匹、去る。

ヤシャ  逃がすか!

セイメイ 待て。

  セイメイ、札を見る。

ヤシャ  止めんなよ!

セイメイ ウクイは死んだようだ。もう仕事は終わりだ。

アサツキ ガキはいいのかよ?

セイメイ じきに後を追うさ。人は一人じゃ生きていけないんだからな。私に拾われたお前らみたいにな。

ヤシャ  でも妖怪が・・・

セイメイ 妖怪が人間を育てるのは無理だ。

  それぞれ去る。太鼓の音。

              To be continue・・・

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