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2022年11月16日、国民的歌番組の紅白歌合戦は死んだ

 11月16日、東京都渋谷区のNHKで「第73回NHK紅白歌合戦」に出場する紅白合わせて42組と特別枠(氷川きよし)が発表された。初出場が10組というフレッシュな顔ぶれだったが、同時に古き良き紅白の死を明確に感じた。

ますます加速するK-POP旋風

 今回の発表の中で話題となったのがK-POPが多いという点だろう。メディア等ではK-POP(5グループ)とされているが、JO1は全員、NiziUは9人中8人が日本人なのでK-POPに分類するのが適切かどうかは難しいところだが、ジャンルとして大きくまとめているのだろう。

中でもIVE(アイヴ)は2021年12月デビュー、LE SSERAFIM(ル セラフィム)は今年5月デビューという新星だ。いずれも日本国内での目立った実績は無いことから反発の声もあったが、NHKは思い切って選出した。

実は両グループともに日本人が在籍しており、レーベルも活動地域に設立するなど上手いマネージメントをしている。つまり、見ようによっては国内グループと言い切ることもできるシステムだ。

 今回、制作統括の加藤英明氏は「(韓国のグループは)世界のマーケットを意識されている」と評価し、グループの発信する情報が瞬く間に世界的な広がり見せていると絶賛した。

実際、K-POPの多くは韓国語ではなく英語の歌詞で唄い、さらに活動地域のVerを披露するなど徹底的に外を見ている。一方、日本のアイドルがリリースしている最新曲のMVを見てみると、トップと言われる乃木坂は字幕対応しておらず、落選したAKBと櫻坂が英語字幕を提供していたのは何とも皮肉なことだ。

口の悪い人は「金をもらっている」だの「枕」と言っているが、世界を見据えた広い視野と認められる実力を持っている"K-POPに出演を依頼する"ことは当然のことと言えるのかもしれない。

消えゆく演歌枠に高齢者は溜息を漏らす

 筆者が小さい頃は「また演歌か~」と暇を持て余す時間が多かったが、今は反対に高齢者が「また横文字の人たちか」と嘆いている。それもそのはずで、演歌歌手は42組中6組(紅組4:白組2)とお寒い状況だ。

もっとも、純烈や郷ひろみ、工藤静香や鈴木雅之など中年層からの支持が高い人たちを加えると全体の 1/4 になるが、多い時には半数以上を占めていた演歌勢の退潮は目を覆うばかりである。

 この点についてNHK側から直接的な説明は無いものの、視聴率が低い若年層を狙った番組編成の結果であることに加え、演歌界に新しいスターが誕生していないということも大きいだろう。

しかしながら、過度の偏重の裏には「高齢者はどうせ紅白見るでしょ?」という驕りがある気がしてならない。その点からすると、つまらなければ慣習を絶ち、違う番組を見るという選択をすることも大事になってくる。

NHKは視聴率ではなく世代間の調和を目指せ

 2021年に行われた紅白の視聴率は前半31.5%、後半34.3%(関東地区)と低迷し、特に後半は前年比マイナス6%で1989年以降の最低記録を更新するという事態になった。

筆者はかなりの紅白好きなので好意的に見ているが、去年の紅白はかなり酷いデキだったことは間違いない。出場歌手どうこうよりも演出が桁違いに寒く、中でも「エヴァンゲリオン」ネタや大泉洋が細川たかしとデュエットした企画は今思い出しても背筋が凍る思いだ。

過去には「シン・ゴジラ」も企画として番組に取り込んでいたが、その時も寒すぎて悲しくなった。もっとも、筆者は紹介した人物やコンテンツが好きなので、安易な考えで便乗しようと雑に扱われたことに怒りを禁じ得ないという面も多分にある。

 今年の夏頃には「紅白が選考のバランスを見直す」という記事が流れ、そこには中高年軽視を改める方向とあった。筆者はその傾向があることに大きな喜びを感じつつ、出場歌手の発表を静かに見守った。

その結果がこれである。私は発表会見のライブ配信を見ながら「ああ、私が愛した紅白は完全に死んだ」と痛感した。NHKはなびくはずもない若年層におもねり、コアな支持層である中高年の排除を加速させる道を採った。

 筆者は中高年を優遇しろと言っているのではない。公共放送であるNHKは視聴率ばかりを見ず、老・壮・青のバランスを上手くとり、若い人には演歌の良さを、中高年には流行りの曲の良さを伝えるという世代間の調和に取り組むべきだ。

若者も中高年も制作側が思っているほど馬鹿ではないので、本物の歌手を選出し、その良さを伝える演出をすれば評価されるはずだ。紅白が紅白の輝きを取り戻し、再び国民的歌番組に復活することを強く願うばかりである。

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