アマゾンの来たる戦略 買い物ではなく「プライムビデオ」の話
プライムビデオに広告表示
米アマゾン・ドット・コムは、動画配信サービス「プライムビデオ」で、日本でも2025年から広告を表示するという。10月15日に発表した。
「魅力的なコンテンツへの投資を継続し、その投資を長期にわたり拡大していくために、日本でもPrime Videoで配信される番組と映画に制限付きで広告が表示されるようになる」とのこと。要は、「よいコンテンツの確保・は配信はお金がかかるので、広告を見てね」というわけだ。米国ではすでに同様の取り組みを始めている。
一方で、広告を表示しない新しい有料オプションを提供するという。料金はこの段階で発表されていない。
日頃の買い物のためプライム会員になっている人は多い。ついでに様々な映画やテレビ番組が追加料金なく楽しめるのがプライム会員の魅力の1つ。「エンタテインメントはどうでも…」という人はもともと利用頻度が少ないからわざわざ有料オプションには加入しない。
一方で、両方が目的だった人にとっては悩ましい。広告に煩わされないで作品を楽しみたいという人は有料でも利用するだろうが、節約のため、他のサブスクサービスへの支出を見直す人も出てくる。
一方、ネットフリックスは広告が表示される廉価版のコースを設けている。
初のニュースライブ 米大統領選を配信
アマゾンはニュースのライブ配信も始める。
「プライムビデオ」で、11月5日の米大統領選当日にニュース特別番組を無料で配信するという。海外からも視聴できる。ただし、もちろん英語だ。
アメリカ大統領選は同国だけでなく世界にとってビッグイベントなので、国内の主要メディアがこぞって取り上げる。当日は、刻々と変わる開票状況を告げるニュース一色になる。
そこにアマゾンがあえて乗り込む理由は何か? プライムビデオのファン層拡大が大きな狙いだろうが、先行するメディアとの違い、特色をどう打ち出すのが楽しみだ。
反応がよければ米国内で拡大し、さらに他国への展開も検討するだろう。日本をはじめ各国ではオールドメディアは斜陽産業で苦しい。そこにアマゾンが乗り込んでくると、人材の異動が進み、業界の再編が一気に進む可能性もある。
国内オールドメディアへの影響は?
斜陽の新聞業界。だいたい紙の新聞を読むのは高齢者だ。しかし、他社に比べると、電子版がうまくいっている日本経済新聞は、若年層の開拓に力を入れている。こうしアマゾンのような大手の価格戦略の見直しは、電子版の普及戦略にも大なり小なり影響してくるだろう。
NHkはネット受信料を1100円にすることを決めている。ただでさえ若い人には不人気なNHK。アマゾンの動きは、気になるところだろう。
アマゾンの登場は、買い物の在り方を変えてきた。その筆頭は、本の世界で、国内でも書店がない地域が増えている。次の「餌食」は、第4の権力と言われてきた、メディアの分野なのかもしれない。