「大ピンチずかん」が100万部! ヒットの芽は日常に潜む
バッグに昔のおにぎりが!
小さな子が普段遭遇するさまざまなピンチを微笑ましく描いた絵本「大ピンチずかん」(小学館、2022年発売)の発行部数が100万部を突破した。
どんなピンチが描かれているのか?
例えば牛乳。
牛乳をコップに注いでいたら、コップからあふれてテーブルにこぼしてしまった。どうしよう。もったいないので、テーブルに口を近づけてチューチューする。すするのに気を取られているうちに頭がコップにぶつかってしまい、こんどは全部こぼれてしまった。
といった具合。
ほかにも、例を挙げると…
・紙パックのジュースを飲む際、ストローが穴に全部入ってしまい、とれない。
・洗濯機の裏側に靴下を落としてしまった。
・バッグの中から昔のおにぎりが出てきた。
・バッグの中の水筒から水が漏れ、中のものやバッグがびしょびしょになった。
・いざゲームをやろうとしたら、充電ができていなかった。
表現もおもしろい。「消費期限をだいぶ過ぎたおにぎり」ではなく「昔のおにぎり」。「昔の」としたほうが「いかに古いか」が率直にわかるし、それを見つけたときの子のパニック具合が想像できる。
日常、こうしたことがどの程度生じる可能性があるか、☆5つで評価している。
親子で「共感」できるピンチ
著者の鈴木のりたけさんは、実際に子育ての真っ最中。次男の子が牛乳を派手にこぼした光景が作品づくりのきっかけとなったそうだ。
絵がほほえましい。「大ピンチ」とあるが、大人の視点だとそう深刻なものはない。「あるある」と共感できる。
大人が読んでも自分の子供の頃を懐かしく思い出すことができるので、親子で読むと会話が弾みそうだ。
現在は出版不況で本がなかなか売れない。そうした時代に100万部はすごいことだ。2023年に出た続編と合わせると167万部に達するという。
日常に潜むヒットの芽
売れない時代においても、ヒットの芽というのが身近に潜んでいるというのを、この本のヒットは示してくれている。毎日何気なくなく見ているものも、別の視点から見れば大ヒットのヒントになるかもしれない。
小さな子がいるご家庭では、日々「早くしなさい!」「ちゃんとしなさい!」「何度言ったらわかるの!」といった言葉が飛び交う。タイパ優先の風潮は、みんなが何かにせかされ、疲れているようだ。せかされ、疲れていると、何かをじっくり観察し、考えてみようという気にはなりにくい。
さて、「大ピンチずかん」の大人版は可能だろうか? 内容があまりにも生々しくて無理かもなぁ。
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