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ロードス島戦記

 当時はファンタジー物興隆期。DQ、FFといったカジュアルなものからD&D系のまで。その中からご紹介するのがタイトルにしたこちら。確か二回アニメ化されていますが、アニメの紹介はこれで終わりです。
 原作の題材や舞台は今のラノベとかで共通認識になっているようなものばかり。今読むと文の拙さが目立ちますが、そもそもゲーム開発者が書いてるのでケチつけるとこじゃありません。
 本屋に塩野七生先生の同タイトルの文庫版が詰んであって、笑っちゃって買ったのが出会いです。
 この主人公。見た目がきったない。茶色に汚れたんだか錆びたみたいな鎧。田舎者だし才能も教養もない(それを自覚してる代わりに知性は高く、いつも考えて悩んで、決心してから行動する。正しいか間違ってるかは後で分かる事だと悟っている。負ける事はあれど、死なないテクニックは一流。自分に出来ない事を、出来る人に任せるのも高得点)フリーレンみたいな娘とパートナー関係になります。年上が好みなご様子。つか敵味方関係なく先輩連中に好かれるのが上手い。勇者の血統よりすごい才能だ。ヒンメルならしなかった事をやる主人公です。
ボトムズ外伝の青騎士ケインと共通点多いんですが(オタクはダサい汚い不潔で暗いって扱われる時代、登場人物も服ヨレヨレで髪ボサボサ、恋愛能力ないのにモテるみたいなのばかりでしたから。※例外もございます)上記部分が違うんです。ソロ活動かバンド組むかみたいな違いか。
 元は親の鎧で、真っ白に輝く聖騎士の鎧だったのです。オーダーメイドのプレートメイルを引き継げる訳ないとか、大事な所を守れてないとかいう人はファンタジー物に向いてないです。
 ハイ、ゲームやラノベならキラキラしたまま残っている宝扱いの装備が、手入れもされずにボロボロなのです。クルマルスビブロスみたい。
服はよく見たら現代風の迷彩服です。佐藤賢一の、デュゲクランを想起させます。(実際にイラスト担当した出渕さんは絶対そんな深く考えてない。でも私はあの人のそういうとこにセンスを感じるのです。エルフの耳がアンテナみたいに尖ってる原罪もこいつ。でもこの人以外がビジュアル担当すると、あぁなるほどねみたいな印象しかない。予定調和の中に収まってるから、変だな何これ不思議って思わない。つまりファンタジーじゃなくなってしまっている。)
悪の魔王みたいな分かりやすい子供向けの役は居なくて、誰に感情移入するか読者皆違うと思う。暗黒神崇拝の最高司祭が劇中で一番カッコいいからね!TRPGのリプレイが下敷きにあるから、一つのシナリオや出来事にパーティの人数分意見があり、それもあって登場人物の幅が広がったのだと思います。なんか話に一貫性ないなと思った方は正解。一人の思索で出来た物語ではないから。一貫したメッセージある作品怖いんだよ。孤独を好んでいるのか全体主義志向なのかノンポリなのか、境が曖昧なので。
 話は戻りまして、好きなキャラは、魔法が使えない魔法使い、グローダーです。イケメンも色っぽい女の人も出てきますけど主役には据えない辺りにバランス感覚のよさを感じます。流石作者はゲームマスターです。
 あんまりキツすぎる過去や現状を描かないのも、今の日本人に体感出来ないものは描かないという点で良い。やたら悲惨な人物を設定する日本人作家のうち、どれだけの人が本当の悲劇を体験しているのか。分かったふりして可哀想なキャラ出しとこみたいな安易な発想は日本のマスコミにも表現の世界にも蔓延している病です。
ロードスの騎士、という人物が誕生して以後は残念ながらつまらないですが、日本流ファンタジー金字塔の一つです。
お読みいただきありがとうございます。
あっ作者のお名前ご紹介してませんでした。水野良さんという関西のロリコンだそうです。

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